雨音の境界 2 -Vrtra- 灰色に染まった空から無数の水滴が絶え間なく降り落ちる中、エスティニアンと共に見つけた岩陰。
決して広々としたものではなかったが、二人で肩を寄せ合えば、なんとか身を収めることのできる小さな空間がそこにあった。
ヒトである彼にとって、雨風を避けられるだけでも意味があるのだろう。だが、私の身躯にはこの程度の風や雨粒など問題ない。
それでもヒトの少年の姿を取る今、あえて彼の配慮を受け入れることも悪くはない、と思っていた。
だからこそ、エスティニアンが私の手を引いた時、私は素直にそれに従ったのだ。
「…すまない」
促されるまま、そっと彼の膝に身を預けたが、その瞬間に胸をよぎるのは不安だった。自分の重みが彼にとって負担になってはいないだろうか。
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