国綱と龍神光世国綱はこれから鬼退治に向かう。
頼まれたのだ。
鬼が出るから退治してほしい。
「わかった」
それだけの話だ。
鬼。
鬼とは、目に見えないもの、この世ならざるもの。死者の魂とも用いる場合があるが、これより国綱が向かう湖に出る鬼は、実体があり、生きているという。
人ならざる力を振るう、無慈悲な怪物、という意味での鬼である。
国綱は、旅をしている。
古今東西、北は極寒の雪国、南は常夏の海村まで。お呼びがかかれば何処へだって退治に向かう、そんな鬼切りの旅をしていた。
その道中、一人の男に出会ったのだ。
宿で一人、酒を飲んでいたら、誰ががやってきた。
扉の前で、もし、と声をかけた。
「あんたが、あちこちで鬼を切って回っている、国綱だな」
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