平行線上を、歩く。 4月上旬の某日。桜の花弁が地面に落ち、辺りを薄ピンク色に染め上げていく。世間一般で言えば、出逢いの季節と呼ばれる、そんな時期。早川アキが勤務する学校も例に漏れず、今日は高校生が新学年となる始業式が執り行われていた。
「今日から2年3組の担任を務める。早川アキだ。宜しく。」
体育館での始業式が終わった後。とあるクラスの教壇上で、早川アキは今年度受け持つ生徒の顔を確認した。と、その時。空席が1つ、このクラスにあるのを見つけた。初日からいないなど珍しい。遅刻かもしれない。そう考えたアキは、取り敢えず生徒の顔と名前を一刻も早く一致させるが為に、名簿を見て名前を呼び、出欠確認をすることにした。アキが生徒を1人ずつ呼ぶと順調に返事が聞こえる中、やはり、空席の持ち主の名前を読んだ際には、教室の中に静寂が張り詰めた。欠席連絡等は聞いていない。初日から休むなんてどんな奴なんだ、とアキは考える。しかし、対面していない限りは結論など出る訳がないため、大人しく、名簿の、返事のない生徒の欄に欠、と記入するしか無かった。
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