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    暗石進火

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    暗石進火

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    教師ア×生徒デの転生アキデン。両者共に前世の記憶なし。作者が飽きるまで連載します。
    ※デの自殺念慮匂わせ

    平行線上を、歩く。 4月上旬の某日。桜の花弁が地面に落ち、辺りを薄ピンク色に染め上げていく。世間一般で言えば、出逢いの季節と呼ばれる、そんな時期。早川アキが勤務する学校も例に漏れず、今日は高校生が新学年となる始業式が執り行われていた。
     

    「今日から2年3組の担任を務める。早川アキだ。宜しく。」

     体育館での始業式が終わった後。とあるクラスの教壇上で、早川アキは今年度受け持つ生徒の顔を確認した。と、その時。空席が1つ、このクラスにあるのを見つけた。初日からいないなど珍しい。遅刻かもしれない。そう考えたアキは、取り敢えず生徒の顔と名前を一刻も早く一致させるが為に、名簿を見て名前を呼び、出欠確認をすることにした。アキが生徒を1人ずつ呼ぶと順調に返事が聞こえる中、やはり、空席の持ち主の名前を読んだ際には、教室の中に静寂が張り詰めた。欠席連絡等は聞いていない。初日から休むなんてどんな奴なんだ、とアキは考える。しかし、対面していない限りは結論など出る訳がないため、大人しく、名簿の、返事のない生徒の欄に欠、と記入するしか無かった。


     その後、生徒一人ひとりが名前と趣味、クラスメイトへ一言を告げる、軽い自己紹介をし、担任であるアキが配布物を配り、滞りなく初日のホームルームは終了した。だが、唯一つの空席の持ち主は最後の最後まで現れることは無かった。残念ながら、アキは、今回彼の受け持つクラスの学年の授業を担当したことが無いため、全員初めましての状態なのである。故に、今日欠席している生徒の事は、名前くらいの最低限の事しか知らなかった。空席の生徒の前年度の担任に、彼の去年の行いについて聞いてみるのも手だと、アキは考えた。

    「では、これでホームルームは終わりだ。明日は課題テストだから、提出物を忘れないように。」

     そう言い終わるや否や、口々に聞こえる課題テストに対するブーイングを背に、アキは教室を後にした。


     ホームルームの後、生物科の教員に今週末の会議に関することについて質問をしたかったため、アキは4階にある生物室を訪れた。しかし、そこは蛻の殻で、話をしたい教員どころか、誰一人としてそこには居なかった。緊急の用事でもないし、少し時間を置いてまた来ようと決断したアキは生物室を去り、2階の職員室へ向かおうと中央階段へと向かった。その時であった。4階の上、即ち屋上へと向かおうと、階段を登る生徒をアキが目にしたのは。この高校に配属されて2年ほどしか経たないが、安全のために生徒が屋上に立ち入ることが禁じられていることは知っている。恐らく、青春を求めて、屋上が立ち入り禁止区域であることも知らず、興味本位で入ろうとする、本日入学した新1年だろうか。と、アキがそんなことを考えている間にも、その生徒は階段を登り、戸を開けて屋上へと行ってしまった。何故、鍵が空いているのか、立ち入り禁止区域ならば、鍵くらい閉めておけよ、とアキは心の中で独りごちる。だが、今は兎に角、教員として屋上に立ち入ろうとすることを注意しなければならないと、彼は階段を一段飛ばしで登り、屋内と屋外を隔てる戸を開けたのであった。


     戸を開けて、広がるのはフローリングの床。そして、広大な屋外の教室のようなこの場所の中央に立っているのは―金髪の青年であった。
     彼はグレーのセーターを着ており、下は学校指定のスラックス、首元に学校指定のネクタイを身に着けていることから、この学校の生徒であることはわかる。しかし、彼はこの時期、特に始業式である今日は必須で着なければならない、ブレザーを着ていなかった。

    「おい、屋上は立ち入り禁止だぞ。早く出なさい。」
    アキは後ろ手で屋上の扉を閉めながら、金髪の生徒に向かってそう告げる。しかし、当の本人は、先程から変わらず上を向いて空を見上げているだけで、声も発さず、微動だにしない。おい、聞こえているのか、とアキが言い出しそうになったその時。青年の頭が、ゆっくりと動き出す。彼は頭を下ろし、一度屋上の柵の外を眺めた後、緩慢な動作で、アキの方へと顔を向ける。茜色の青年の目と、群青色のアキの目が、かち合う。その瞬間、アキは、青年に魅了されたかのように、彼から目が話せなくなってしまった。それを良いことに、青年はまた目線を前へと向け、やるせなく彼の目線の先の屋上の柵の方へと歩み始めた。漸く、いや、長かったかもしれないし、短かったかもしれない。しかし、目線を支配されているアキにとって、それは酷く長い時間に感じられたが、青年が屋上の柵の前へと辿り着き、柵の縁に手を置く。
     不味い、気がする。ここは屋上。柵へと近づく生徒がとろうとする行動の中で、最も最悪なものがアキの脳裏に浮かぶ。最短距離で青年に近づこうと算段をつけ終わった頃。茜色の目がまたもやアキの方へと向き、青年の口からか細い、でもアキの耳へしっかりと届く言葉が紡がれた。

    「ねぇ、センセ。ここから飛び降りたら、死ねる?」
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    暗石進火

    DONE教師ア×生徒デの転生アキデン。両者共に前世の記憶なし。作者が飽きるまで連載します。
    ※デの自殺念慮匂わせ
    平行線上を、歩く。 4月上旬の某日。桜の花弁が地面に落ち、辺りを薄ピンク色に染め上げていく。世間一般で言えば、出逢いの季節と呼ばれる、そんな時期。早川アキが勤務する学校も例に漏れず、今日は高校生が新学年となる始業式が執り行われていた。
     

    「今日から2年3組の担任を務める。早川アキだ。宜しく。」

     体育館での始業式が終わった後。とあるクラスの教壇上で、早川アキは今年度受け持つ生徒の顔を確認した。と、その時。空席が1つ、このクラスにあるのを見つけた。初日からいないなど珍しい。遅刻かもしれない。そう考えたアキは、取り敢えず生徒の顔と名前を一刻も早く一致させるが為に、名簿を見て名前を呼び、出欠確認をすることにした。アキが生徒を1人ずつ呼ぶと順調に返事が聞こえる中、やはり、空席の持ち主の名前を読んだ際には、教室の中に静寂が張り詰めた。欠席連絡等は聞いていない。初日から休むなんてどんな奴なんだ、とアキは考える。しかし、対面していない限りは結論など出る訳がないため、大人しく、名簿の、返事のない生徒の欄に欠、と記入するしか無かった。
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