“大好きだよ” 太宰には恋仲の相手がいる。
…………らしい。
何処から発生した噂かは知らない。
そして、それは中也の耳にも届いた。
あの人間失格に、恋人?
と、聞いた最初は真に受けなかった。
任務以外は執務室に篭りっきりになり、口を開けば物騒な話ばかりで浮ついた雰囲気は一切無かった。
だが、いつ頃からだろう。
任務が無い日、太宰の執務室を訪ねれば、そこにいつも居るはずの人物の姿は無かった。
ポートマフィア本部の何処かに居るのだろうと尋ね回った。
だがその日、あの幽鬼のような姿を誰も見なかった。
たった一日なら、そういう事もあるだろうと思った。
しかし、数が増えれば偶然では無くなる。
間違いなく、太宰は非番の日、特別な場所に行っている。
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