あなたの心臓に
「……なれたらいいのに。」
「え?」
思わず口に出てしまった私の言葉に、前を歩いていたシンが振り返る。
どこか遠いところを見つめるシンの横側を見ると、いつも湧き出る想い。
無意識に口にしてしまった言葉を誤魔化したくて、咄嗟に明るい顔と声に切り替える。
「……なんでもない!ねぇ、お腹空かない?どこかカフェでも入らない?」
「うん、それはいいけどさ。……本当に、なんでもない?」
「うん、つい独り言が出ちゃっただけ。ほら、さっさといきましょ」
シンの手を取って歩き始める。
顔を見られないように、少しだけ彼の前を歩くようにして。
………誤魔化し方、下手だったかな。
シンが遠くを見つめている時、私はいつも彼が何処かへ行ってしまいそうな、そんな気がして不安感でいっぱいになる。
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