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    FuLu

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    オリテイマーのツムギくんの話
    (突然始まって突然終わります。そして続きもない)
    ⚠流血表現アリ
    ⚠小説初心者
    ⚠何でも許せる方向け

    <登場人物>
    ツムギ……天真爛漫でちょっとアホな中学生。いつも元気で明るい性格だが、何事にも首を突っ込むトラブルメーカーでもある。生まれつき、ある病気を患っている。アロエが大好物であり、わざわざ森にまで探しに行くほど。エリスモンのことが大好き。

    エリスモン……いつも不愛想な成長期。触られることを酷く嫌う。自由奔放なツムギに毎回振り回されている不憫な子。訳あって森で暮らしていたところ、ツムギと出会った。




    「…あんのッ、馬鹿ツムギ」
    オレは森の茂みを掻き分けながら走っていた。草や木の枝が引っかかって傷ができるが、今は気にしてる暇はない。

    「あれほど今日は森に近づくなって言ったのによォ…」
    最近、この付近で不思議な気配を感じていた。また暴走したデジモンが現れたと思ったオレは、ツムギに『しばらく近づくな』と警告したハズだ。…大方、話を聞いていなかったのだろう。
    そういえばアイツは『もぉ〜、エリスモンは心配性だな〜オ、アロエウマッ』と言いながらアロエを齧っていた。

    「どうせ、今日も呑気にアロエ探ししてんだろうなァ…あークッソ、どこに……ッ」
    突然、地面が大きく揺れた。体幹に自信があるオレも思わず膝をついてしまった。ますますツムギのことが心配になる。後先考えないアイツは、いつかどこかでコロッと死んでしまってもおかしくない。
    「とにかく、早くアイツを探さない、と……」

    ふと目の端に水色のパーカーが見えた。落石があってもおかしくない岩肌が見えるいかにも危険そうな場所に、ツムギはこちらに背を向けて立っていた。何故かその岩肌の崖を見上げている。

    「いたッ…オイ、ツムギ」
    叫びながら駆け寄ると、こちらに気づいて振り向いた。いつも通りの眩しい笑顔で。


    …少し話は脱線するが、成長期のオレはツムギより背が低い。だからアイツと話すときは少し目線を上げる必要がある。




    だから、地面に落ちていた真っ赤な液体にも気づかなかった。




    「あ、エリスモン!」
    ツムギは、いつも通りの屈託のない笑顔を見せる。だからそれが、余計な不気味さを増幅させていた。そう、ツムギはいつも通りの笑顔を浮かべていた……、



    額から大量の血を流しながら。



    「…………………は?」
    予想だにしていない状況に言葉が飛び出る。いや、怪我をしている可能性は考えていたが、おかしいのはツムギの様子だ。まるで怪我に気づいていないといった調子で、顔の半分を血で染めながらこちらを見つめる。

    「お前、それ…あた、ま……」
    オレの口からか細い声が漏れる。ツムギはオレが何を言ってるのかわからないような不思議な顔を見せた。血液が汗のようにツムギの顔を伝う。その異常さにオレは何も言うことが出来なかった。

    「頭?がどうしたの?あ、それより聞いてよ〜!さっきいきなり地面が揺れたでしょ?その時、この崖から石が落ちてきたみたいで、そう!ちょうど頭のこの辺にガツーンと……」
    オーバーなジェスチャーをしながらツムギは自分の頭に手をやった。その手にべっとりと血が付着する。その瞬間、ハッとした様子でツムギは自分の手を見た。どうやら、たった今オレが言った意味が理解できたらしい。



    そう、『たった今』。
    命に関わるような、激痛で動くこともままならないような怪我で平然としているツムギに恐怖すら感じた。

    対するアイツは血に気づき、痛がる素振りを見せるどころか『あぁ…やってしまった』というような絶望の表情で血濡れた掌を見ていた。




    長い沈黙が流れる。
    ツムギがこんなに静になることなんて、出会って一度もなかった。そして、こんな暗い顔を見せることも…。

    「ツム…」
    オレが喋りかけた途端、ツムギはハッとしてポケットから分厚いガーゼや包帯を取り出し慣れた手つきで患部を止血し始めた。

    もう、何が何だかわからない。目線を落とすと、真っ赤な液体がこびりついた少し大きめの石が、目に飛び込んできた。瞬間的に、ツムギはコレに当たったんだろうと察した。先程の地震でこの石が岩肌のからこぼれ落ち、たまたま近くにいたツムギの頭にヒットしたのだろう。だからさっきアイツは少し上を見上げてたんだ。『何が落ちてきたんだろう』と思って。


    だが、何故だ…?何でアイツは怪我に気づかなかった?あれ程の出血、痛みで動ける訳がない。まさか、ツムギは……


    「ごめんね。ビックリしちゃったよね」
    思考を巡らせていると、ツムギがぽつりと呟いた。そこにいつもの元気な顔はない。代わりに申し訳無さそうな哀しい笑みを微かに浮かべている。しかし、次の瞬間にはパッと明るく振る舞った。いや、振る舞おうとしていた。

    「い、いや〜!まさか本当に落石がクリーンヒットするとは思わなかったな〜これってどれくらいの確率なんだろうね今なら宝くじ当てちゃうかも、なーんて、あは…は……」
    だが、次第にその明るさは消えていった。やがて何かを決心した様子を見せると、半分が血で汚れてしまった顔を上げて力なく笑った。







    「僕、『無痛症』なんだ」
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