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    AYAPersonifica

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    AYAPersonifica

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    📺️の短いお話を書きたかった……だけ……

    コネクタルランドの夜は、かつての星の輝きを失っていた。
    シャダーンツリーの影が大地を覆い、その根元でダークフラワーが不気味に揺れる。
    その中心に浮かぶ、孤独の支配者、ボッチアーニ。
    彼のモニターのような顔に映るのは、歪んだ笑み。

    「キュラララ……いいね〜、この静寂。誰もいない、誰も繋がらない、誰も手を繋がない。これからはみーんなひとりボッチ!ボクチンみたいにね!」

    シャダーンツリーの最深部。
    その玉座とも呼べる暗闇の中で、ケーブル状の腕を揺らし、楽しげに歌うように笑った。
    ボッチアーニにとって世界はただの遊び場、壊すべきお砂遊びの城にすぎなかった。

    ケーブル状の腕が宙を泳ぐようにうねる。
    機械と有機物が融合した異空間。
    壁には無数のダークフラワーが脈打ち、赤黒い光を放ちながら、島々の住民たちに幻覚を見せ続けている。
    彼は腕を伸ばし、ダークフラワーをそっと撫でた。
    花は甘い幻覚の花粉を吐き出す。
    それは人々の心を縛り、偽りの夢で満たす毒だった

    ボッチアーニは殻を纏い閉じこもった。
    彼はよくこうして負のエネルギーを溜め込み、孤独を満喫するのだ。
    暗闇の中で、彼は自分の過去を振り返った。
    いや、過去なんてない。
    ボッチアーニは生まれた瞬間から『ボッチアーニ』だった。
    誰かに愛された記憶も、誰かを信じた記憶もなかった。
    ただ、孤独を愛し、孤独を広めるだけ。

    彼の記憶は、冷たい闇の中で始まった。
    黒いタマゴの殻に閉ざされ、かすかな脈動だけが彼の存在を証明していた。
    虚空の果て、星屑すら届かない深淵。
    そこでボッチアーニは生まれた。
    いや、生まれたというより、呪いのように吐き出された。
    タマゴの殻は、誰かの絶望で塗れている。
    憎しみ、悲しみ、絶望ーーー孤独に呻く魂の断片が、負のエネルギーと共にタマゴに注がれた。
    ボッチアーニはその結晶だった。

    彼は孤独だった。
    孤独であることこそがボッチアーニだった。
    ボッチアーニは知らなかった。
    自分が何のために生まれたのか。
    ただ一つ理解していたのはーーー『繋がり』を断ち切り、すべてを孤独に染めることが、己の存在理由。
    笑顔、絆、友情。
    そんなものは、彼にとって理解不能なノイズだった。
    黒いタマゴの中で、負のエネルギーが凝り固まり、形を成した瞬間から。
    彼の心は空っぽで、ただ一つ、強い衝動だけがあった。

    壊したい。
    繋がっているものを、全部バラバラにしたい。

    「繋がりなんてジャマなだけ。気持ち悪い、なんで一緒にいるの?めんどくさい!ひとりで、ずーっと、ボッチでいいじゃん!みんな、ボクチンみたいにひとりボッチになればいいのに!」

    最初の世界で、彼は学んだ。
    人は絆を求める。
    友、家族、愛。
    それらが人々を強くする。
    ボッチアーニはそれを憎んだ。
    魔神として生まれ持った力。
    孤独の花の幻覚は、人々を甘美な夢に閉じ込め、絆を忘れさせる。
    世界は緩やかに崩れ、ボッチアーニは嗤った。

    負のエネルギーが凝縮されたその殻の中で、彼は世界の終わりを夢見た。
    絆も、愛も、希望も、ただの雑音にすぎない。
    全てを断ち切り、孤独の静寂に世界を沈める。

    彼のする事はシンプルだった。
    静かで、しかし確実に世界に終焉を齎すモノ。
    ダークフラワーを通じて人々の心に忍び込む。
    幻覚を見せ、互いを忘れさせる。
    家族も、友も、愛する者もいない世界。
    孤独の花を被せ、甘い夢を見せる。
    そこでは誰もが孤独で幸せ。
    友達も、家族も、必要ない。
    素敵で絶望的な孤独の世界。
    ボッチアーニはそれをゼツボッチ計画と名付け、まるで子どもの遊びのように楽しんでいた。
    人々を夢の幻覚に閉じ込め、絆を断ち切る。
    世界を滅ぼし、タマゴに戻り、また次の世界を壊す。
    その繰り返しが、彼の存在意義だった。

    「ほら、みんなくっついてるから苦しいんだよ。ボクチンが解放してあげる!みーんなひとりボッチになって、世界はボクチンのもの! キャラ〜ラララ!」

    誰もが『優しい』幻覚に沈んだ。
    夢の中では、誰もが笑い、誰もが幸せだった。
    その笑顔の裏で、彼らの心は少しずつ孤立していった。
    友との約束を忘れ、家族の声を遠ざけ、ただ夢に溺れる。
    ボッチアーニはそれを見て、ケーブルを揺らし笑った。

    力を使い切るまで、彼は破壊の限りを尽くした。
    そうしてタマゴに戻り、次の世界へ向かう。
    ボッチアーニは繰り返した。
    何度も、何度も。
    世界を滅ぼし、タマゴに戻り、また別の世界へ。

    温かな声、不屈の意志、小さな希望ーーーすべてが霧に溶けた。
    だが、ダークフラワーが吸い取ったのは夢だけではなかった。
    犠牲者達の記憶が、ボッチアーニの回路に流れ込む。

    ある記憶。
    仲間と笑い合い、夜空の下で未来を語る姿。

    ある記憶。
    仲間を守るため、どんな闇にも立ち向かう決意。

    ある記憶。
    怖くても、誰かのために一歩踏み出す勇気。

    世界は静かになった。
    緩やかに、誰も気付く事無く終焉を迎えた。
    絆を失った人々は互いを忘れ、屍と化した。
    ボッチアーニは満足だった。
    満足なはずだった。
    なのに、なぜか胸の奥で電流が暴れる。
    タマゴに戻るたび、ノイズが叫ぶ。

    「ボクチンは間違ってない。絆なんて、ボクチンにはいらない!」

    孤独は完璧のはずなのに、なぜか冷たい。
    壊した世界の残響が、モニターの裏で響く。
    毎回、ノイズは大きくなった。
    永遠の繰り返しの中で、彼は本当に『ひとりボッチ』を楽しんでいたのだろうか?
    ボッチアーニは気づかなかった。
    夢の中で沈黙する人々の顔が、どこか自分に似ていることを。
    モニターの奥で、ノイズがザザッと走る。

    「……ふん、キズナごときがボクチンをぐちゃぐちゃにしようだなんてむっかつく〜!孤独こそ至高!!」

    モニターに映る笑顔は、どこか寂しげだった。
    その笑顔の裏で、彼の心ーーーもしそれが心と呼べるものならばーーーには、微かな揺らぎが生じていた。
    彼はそれに気づかない。
    気づきたくなかった。
    モニターの光が一瞬揺れ、誰も気づかない影がその奥にちらついた。


    「孤独なら、誰もボクチンをキズつけない……誰も、ボクチンをキズつけられない……」




    コネクタルランドに降り立ち、眷属とその手下を利用して復活を遂げたボッチアーニは、またいつものようにゼツボッチ計画を進めていた。
    何よりも繋がりを大切にする世界。
    絆に満ちた世界。
    本来温かいはずの温もりさえ、彼にとっては目障りなノイズに過ぎなかった。
    ボッチアーニは小さな光を見つけた。
    異世界から呼び出された勇者。
    赤と緑が、キズナのエネルギーを集めている光景だった。

    「……なに?なんなの、その光?」

    シャダーンツリーの頂でバリアを張り、ダークフラワーを咲かせる今、ボッチアーニは感じていた。
    キズナの光が近づく気配を。
    赤と緑の兄弟が、住民たちの想いを携えて迫る足音を。

    キズナの力は、ボッチアーニのバリアを揺らし、シャダーンツリーの闇を切り裂く。
    それは、彼の存在そのものを否定する光だった。

    楽しいはずの夢の世界も、下僕たちも、忌々しいキズナの力で打ち倒される。
    シャダーンツリーの最深部で、ボッチアーニは二人と対峙した。
    最後の戦いが始まった。
    シャダーンツリーと融合し、ダークゼツボッチとなったボッチアーニは、世界を呑み込む闇を解き放つ。
    黒い花弁を広げ、孤独の力を操るその姿は、まさに世界の終焉を告げる怪物だった。

    戦いが激化し、ボッチアーニは叫んだ。

    「キャラララ~!もう終わりだよ、キズナなんてくだらない幻!ボクチンが全部こわしてあげる!」

    だが、キズナのエネルギーが光球となり、彼の核心を貫いた。
    彼らのキズナの力が、ダークフラワーを次々と砕いていく。

    「や、やめてよ!ボクチンの世界をこわさないで!」

    最後の壁さえ、キズナの力の前に無惨に砕け散った。
    もう後はない。
    ボッチアーニのケーブルが炎をまとい、氷を放ち、膨大なエネルギーが空間を歪める。
    だが、兄弟の攻撃は止まらなかった。
    ハンマーが、ジャンプが、彼のバリアを削った。

    「キュ、キュラ……キミたち、なんでそんな目でボクチンを見るの?」

    ボッチアーニのモニターに、困惑と怒りがちらついた。
    モニターに映る赤とピンクの目は、怒りと恐怖で揺れている。
    彼らの絆ーーー互いを信じ、共に戦う姿は、ボッチアーニの理解を超えていた。
    それは、彼が否定してきたすべてだった。

    「なんで一緒にいるの?孤独の方が楽なのに!孤独でいれば、誰も傷つかないのに!」

    ボッチアーニの叫びは、まるで子どもが駄々をこねるようだった。
    だが、その声には、どこか切実な響きがあった。
    彼は理解したかった。
    孤独こそが完全であり、繋がりは弱さだと信じていたから。
    彼自身にはその『キズナ』が理解できなかったから。
    なぜ人々は、傷つくリスクを冒してまで繋がりを求めるのか。
    なぜ、孤独を選ばないのか。



    「ボッチアーニ!キズナは弱くない!ボクたちは、仲間と一緒だから強いんだ!!」



    二人の絆を見た瞬間、モニターの笑顔が凍りつく。
    まただ。
    あの胸のざわめき。
    互いを信じ、背中を預け合う姿は、ボッチアーニにとって耐え難い光景だった。
    なぜ、君たちはそんな目で互いを見られる?
    ボクチンは……拒絶されたのに!

    「…………?」

    ……拒絶?

    「ひっ……!!やめろ……やめろぉ!!」

    ボッチアーニのモニターに、初めて恐怖が映った。
    核の疼きが、記憶を呼び起こす。
    タマゴの中で聞いた声。
    孤独は完全のはずだ。
    なのに、なぜこの温かさが、こんなにも眩しい?

    マリオがハンマーを振り上げ、ルイージがモニターを叩き、ボッチアーニの画面が砕けた。
    ガラスの割れる音が響き、絶叫が空間を切り裂く。
    破片が散らばり、揺らめいていたケーブルが力を失い垂れ下がった。
    致命傷を負った魔神は、とうとう地に伏した。
    砕けた画面から光が漏れる。
    恐怖と混乱に揺れる瞳が、眼前の絆のカタマリを捉えた。

    「ム……ググ……」

    記憶の廻廊が流れる。
    タマゴの中の記憶。
    冷たく、暗い殻の中で、彼は一人震えていた。
    暗いタマゴの中で目覚めた瞬間。
    真っ黒な殻に閉じ込められ、ただ孤独だけが彼を包んでいた。

    あの時、彼は初めて『孤独』を知った。
    だが、それは苦痛ではなく、安心だった。
    誰にも頼らず、誰にも傷つけられず、ただ自分だけでいい。
    それがボッチアーニの全てだった。

    次に映ったのは、彼が渡り歩いてきた世界の光景。
    互いに繋がり、絆を築く人々。

    彼が生まれた世界は、コネクタルランドのように繋がりに満ちた世界だった。
    あの時、幼い彼は繋がりを求めた。
    ただ遊んでほしいというだけの、純粋な欲求。
    何度も試みた。
    話しかけ、手を伸ばし、笑顔を向けた。
    だが、結果はいつも同じだった。
    返ってきたのは冷たい視線だけだった。

    不気味だ。怖い。来るな。

    拒絶の言葉。
    魔神としての姿と力。
    異質な彼が繋がりの輪に受け入れられる事はなかった。

    拒絶の記憶は、彼に二つの感情を植えつけた。
    孤独への執着と絆への妬み。
    孤独は彼を守る盾だった。
    誰にも頼らず、誰にも傷つけられず、ただ一人でいること。
    孤独を押し付け、終焉を迎えさせること。
    孤独の支配者。
    それがボッチアーニの全てになった。
    だが、絆を持つ存在たちを見るたび、胸が焼けるように疼いた。
    なぜ、キミたちにはそれがあるのに、ボクチンにはない?

    孤独が当たり前だった彼は、自分の中に芽生える妬みを自覚できなかった。
    だが、その感情は彼を突き動かし、ゼツボッチ計画へと導いた。
    絆なんて壊してやる。
    誰もがボクチンと同じ孤独になればいい!

    笑い合い、手を取り合う姿。
    ボッチアーニはそれを『めんどくさい』と嘲った。

    なのに、なぜ?
    なぜこんな感情が湧く?

    彼は絆を知らない。
    理解できないはずだ。
    なのに、なぜこの温かさが、こんなにも眩しいのか?

    彼らの絆が、妬ましい。
    ボッチアーニにとって、孤独は当たり前だった。
    黒いタマゴの中で生まれ、ただ一人で存在することが彼の全てだった。
    だから、自覚する機会などなかった。
    だが、住民たちの笑顔、互いを信じる眼差しを見るたび、彼の心は知らず知らずのうちにざわめいていた。
    なぜ、ボクチンにはそれがない?

    ボッチアーニは気づきたくなかった。
    自分が孤独を愛しているのではなく、ただそれしか知らなかっただけだということを。
    そして、当たり前に絆を持つ者たちを、妬ましく、憎らしく思っていたことを。

    走馬灯の中で、ボッチアーニは気づいた。

    彼が愛した孤独は、彼を守るものではなかった。
    それは彼を縛りつける、呪いの鎖に過ぎない事を。
    孤独を選んだのではなく、孤独しか与えられていなかった。

    ボッチアーニは、孤独を愛する怪物ではない。
    孤独にしか愛されなかった亡魂なのだ。


    もう、話す事も、息をする事さえも苦しい。
    モニターに激しいノイズが走る。
    刹那、キズナの光が彼を包み込んだ。
    温かく、優しく、ボッチアーニが知らなかった感覚。
    キズナの光が、孤独の魔神の核心を貫く。
    幼い頃の彼が感じた、冷たい孤独が蘇る。


    (ボクチン、ただ……ボクチンの孤独……分かってほしくて……)


    ほんの一瞬、ボッチアーニは思った。

    もし、もっと早くあの光を知っていたら……自分も……。


    (……キャラララ……なんて、つまんない……夢だ……)


    電源が落ち、事切れる瞬間。
    ひび割れた画面を、涙のような光が滑った。
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