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    AYAPersonifica

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    AYAPersonifica

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    本編より少し前の、先生とボッチアーニの出会いを想像したものです。
    雑なところもありますが大目に見てください←
    一応擬人化想定です。

    深い夜のような藍色のコートが潮風をはらんで翻る。
    透き通るような青い瞳を凝らしながら、その女性はキニオン海域の大灯台島に足を踏み入れた。
    月光に照らされる白い肌、海の輝きと金砂をまぶしたような髪。
    その美しさは、まるで人形のよう。

    「……今日も異常無し、と。屋上の様子でも見に行きますか」

    彼女の名はコトゼット。
    このコネクタルランドの中枢、人々の絆が紡がれる世界樹『コネクタルツリー』の管理人である。
    コネクタルツリーを見守る者はソダテナーと呼ばれ、その中でもコトゼットは特に重要な役目を担う。
    コネクタルツリーは絆の象徴。
    もしもコネクタルツリーに何かがあれば、それだけ世界の平和も脅かされる。
    故に、コトゼットは世界に散らばるソダテナー達を統括すると同時に、世界樹の手入れを行う必要があった。

    「……少し、星空を拝借しましょう」

    コトゼットは灯台の壁に寄りかかり、空を見上げた。
    今日は晴れており、空気も澄んでいる。
    月光を反射して煌めく星々は息を呑む程美しい。
    青い月光が、コトゼットの青い瞳に映り込む。
    コネクタルツリーの輝きは、月光に照らされ夜闇を照らしている。
    そんな光景を眺めながら、彼女は物思いにふけていた。

    「ふぅ……」

    夜風が吹き抜ける。
    星々がキズナのように輝き合っているように見えたが、彼女の心には、誰にも言えない孤独がそっと忍び寄っていた。

    彼女は、時々思う事があるのだ。
    この使命は、本当に自分に相応しいものなのか。
    自分にとっての幸せとはなんなのか。
    そんな疑問が、ふと湧き上がってくる。
    世界そのものに干渉してしまうほどの世界樹を育て、人々の繋がりを守り抜く。
    それがどれほど重要な事か、彼女にはわかっていた。
    自分の存在意義。
    与えられた役割。
    何よりも重要で、誇りある使命。
    コトゼット自身もソダテナーとしての誇りを胸に、その役目を全うしてきた。
    だが、たった一人で背負いきれるほど軽いものではないのも事実。
    このコネクタルツリーに異常があってはならない。
    世界に光をもたらし、皆を紡ぐ絆の象徴なのだから。
    コネクタルツリーを育てる彼女の心はキズナの力で満ちていたが、同時に誰とも分かち合えない重責に小さな影を落としていた。
    キズナの輝きを信じる一方で、ソダテナーとしての孤独が、彼女を蝕んでいた。

    「私は、一体どうすれば……」

    誰に語るわけでもなく、ひとり呟く。
    人々の繋がりを見届ける度に、彼女の心は孤独を望むようになっていた。
    もしも、この繋がりが消えてしまったら。
    もしも、この絆が壊れてしまったら。
    その責任は全てソダテナーである自分に降りかかるのだ。
    自分はソダテナーだ。
    彼女の元には、コネッタという見習いソダテナーがいた。
    だが、彼女はまだ幼く未熟。
    何もかも自分ひとりで全うしなければ。
    無意識に、そんな思い込みができていた。
    絆を、繋がりを、誰にも頼る事なく見守り育てていく。
    ひとりぼっちで背負うには、あまりにも重い責任。
    何故、自分だけが?

    誰もいなければ、誰とも関わらなければ。
    こんな思いはしなくて済むのだろうか?
    ならば。
    一人になりたい。
    孤独でありたい。

    (……世界が、私一人だけになればいいのに)

    彼女の、たった一つの心の弱み。



    ゴトッ



    「ん……?」

    微かに聞こえた物音に、コトゼットは顔を上げた。
    音のした方向に目を向けると、屋上の扉が僅かに開いていた。

    (誰かいるのでしょうか?)

    こんな真夜中に屋上を訪れる者など滅多にいない。
    恐る恐るそちらに目を向けると……。

    「……卵?」

    まるで今の彼女の心を体現したような、真っ黒で歪な卵が、そこにあった。
    禍々しさと神々しさを同時に放つ、不思議な卵。
    コトゼットは引き寄せられるように、卵へと手を伸ばした。

    「……」

    コトゼットは驚きに目を見開いた。
    卵が、異様な程冷たかったのだ。
    氷……いや、それよりもさらに冷たい。
    死そのものを孕んでいるかのように。

    「まさか……もう……」

    もう既に、この中に宿っている命は……。
    いや、そんな事はない。
    コトゼットは首を横に振る。
    夜風に煽られ続けたから表面が冷え切ってしまっているだけだ。
    きっと中にはまだ、温かな命がいるはず。
    まだ生きている。
    だが、このまま放って置けば……。
    そんな思いのままに、コトゼットは卵を抱きしめた。

    「……」

    ……冷たい。
    あまりの冷たさに戦慄する。
    そうだ、親は?
    親はどこにいるのだろう。
    そんな考えが頭をよぎるが、すぐに打ち消される。
    この卵は、こんなに冷たくなるほど長い間放置されていたのだ。
    親が側にいれば、すぐに異変に気付いたはず。
    となれば、親はこの卵を捨てたとしか考えられない。

    「なんて、酷い事を……」

    コトゼットは悲しみに顔を歪ませた。
    生まれ出る前に息絶えてしまった命。
    愛されて生まれるはずだったのに、産声を上げる事すら許されずにこの世から引き離されてしまった命。

    コトゼットはタマゴを強く抱きしめる。
    相変わらず、何の温もりも鼓動も感じない。
    感じるのは冷たい死の静寂。
    誰にも頼れず、真っ黒に塗り潰されて、身も心も冷たく冷え切った……。
    まるで、今の自分のよう……。


    「あなたも、ひとりぼっちなのですね……」


    ……ピシッ


    「えっ?」

    突然、卵に亀裂が走った。
    否、正確には。
    卵の表面に亀裂のような模様が浮き出てきた。
    卵から伝わる冷たさが、一層強くなったように感じられる。
    嫌な予感がする……。
    そんなコトゼットの予感を肯定するように、卵の亀裂はどんどん広がっていく。

    『そうだよ〜?ボクチンはひとりボッチ!いいよねぇ、誰にもジャマされずに、自分だけの世界で好きなことを好きなだけ出来るんだからさ』

    「っ」

    卵が、喋った……
    いや違う、卵が喋っているのではない。
    この声は……自分の頭の中に直接響いてくる!

    『この世界はどこを見てもキズナキズナキズナ!うんざりなんだよね〜。『一緒にいることが力になる』なんて、笑っちゃうくらい滑稽だよ!だからさぁ、このキズナで塗り潰された世界、全部まとめて……ぶっ壊してやろうと思ってるんだ〜』

    ピシィッ

    卵の亀裂が目のような形に変化した。
    ギョロリとコトゼットを見たその瞳は、ひどく冷たい。
    夜空に浮かぶ月が雲に隠れ、歪に歪んだ。

    『ここはみーんな絆や繋がりが大事なんて言うんだよ。ボクチン、それ聞いてるとイライラしちゃってさ〜。誰かとの繋がりとかキズナなんて、弱いヤツがすがりつくものじゃん? ひとりボッチで立ってられないから誰かにくっついてるだけ。ボクチンみたいに強いヤツは孤独で十分! だからボクチン、ぜーんぶ壊してあげようと思って。世界がまるごと全部崩れてグチャグチャになるのを想像するだけで……あぁ〜もう最っ高だよねぇ』

    この声の主は禍々しい悪意で満ちている。
    そして、その悪意は自分に向けられたものではない。
    世界全てに向けられたものだ。
    そう直感した瞬間、彼女は確信した。
    この卵が孵った瞬間、世界は終わる……。

    「……あなたの思い通りにはさせません」

    『はぁ?何言ってんの〜?だって何かと繋がってるって思うとめんどくさくない? みんなでワイワイ仲良くなんてさ、ボクチンには全然わかんないんだもん。めんどくさくて、うるさくて、自由がなくなっちゃう感じがするの。キミもさ、たまにひとりボッチでいたいときない? ボクチンはずーっとそうなんだよ!』

    「そんな事はありません! 孤独で心は満たされません。キズナがあるからこそ、コネクタルランドは平和なのです。この世界の絆を……繋がりを壊すなど、ソダテナーである私が許しません」

    卵の声が一瞬止まり、すぐにくすくすと笑い始めた。
    その笑いは、まるでコトゼットの心の奥を見透かすようだった。

    『キュララ、強いね〜、キミ。でもさ、ホントにそう思ってる? キズナとか繋がりとか、キミが背負ってるそのおにもつ……疲れない?』

    「」

    コトゼットの目がわずかに揺れる。
    卵が笑うように亀裂を広げた。
    その声は一切の感情が籠もっていない機械的なもの。

    『いいよ別に〜?ボクチンを止めたきゃ止めても?でもさぁ、キミは本当にそれでいいの?』

    「ど……どういう意味ですか?」

    その声には微かな震えがあった。
    声はその揺らぎにすかさず畳みかけた。
    蜜のように甘く、毒のように鋭く、彼女の心に忍び込む。

    『キミは……ひとりになりたいんじゃなかったっけ?』

    「」

    『ひとりになりたいのに、誰かが繋がるところを見守らなきゃいけない。その矛盾がキミを苦しめているんだよねぇ?わかるよ〜その気持ち』

    「そ……それは……」

    『なんで自分だけ?こんな重たい役目をなんで背負わなきゃいけない?ひとりボッチなら誰かに気をつかう必要ないし、自分の好きなようにできるじゃん! 誰もジャマしないし、誰かをジャマしなくていい。そしたらさ、心がすっごくラクになるんだよ。ぜーんぶ自分の世界になっちゃう感じ! キミにはキミの世界、ボクチンにはボクチンの世界。それでいいよね?キズナを守るなんてめんどくさい役目、他のヤツに押し付けたらいいじゃない!』

    その言葉は、コトゼットの核心を突いた。
    彼女はソダテナーとして皆を導いてきたが、誰とも深い絆を築く時間がない。
    コネッタに教える日々は喜びだったが、彼女自身、誰かに心を預けることはなかった。
    たったひとり、彼女自身の心はどこか置き去りにされていた。

    「キミ、ひとりで頑張ってるよね。一番弟子?に全部教えて、キズナを守って……でも、キミ自身のキズナは? 誰もキミの心を、本当にはわかってくれない。違う?」

    「っ……!」

    卵はズカズカとコトゼットの心に入り込んでくる。

    『キミはただ……誰かに必要とされたいだけなんだよ。だからアレを育てた。絆の象徴であるアレを育てれば、誰かが自分の事を見てくれるかもしれないから』

    「ち……違います!」

    『でもさ、結局誰も来なかったよねぇ?だってさぁ、キミがこんなに頑張ってるのに、みんなキミの事なんか見向きもしなかったもんねぇ?キズナを繋いでもらうのが当たり前だから』

    「そ……そんな事……」

    『あるでしょ〜?今だってそうだよ?世界は滅びかけてるっていうのに……誰も気付いてない。キミのことをみてないから。だからさぁ、キミももうそんなヤツらの繋がりのために頑張らなくていいんだよ?』

    「っ」

    『ほら、ボクチンと一緒に世界を滅ぼしちゃおうよ〜。そしたらキミはもうキズナに苦しむことはないよ?』

    卵が笑う。
    コトゼットの心を蝕みながら。

    『孤独は自由だ。完全な自由!誰にも縛られずに、期待にこたえる必要もない……それこそ至高だよ!ね?悪い話じゃないでしょ?一緒に世界を壊そうよ、コトゼット?』

    「……っ、わ、私は……」

    卵の誘惑に、心が揺らぐ。
    この誘惑を受け入れれば、もう苦しまなくて済むのかもしれない。
    だが、本当にそれでいいのだろうか。
    そんな思いが、彼女の心を揺さぶる。

    『孤独の世界ではそんなゆらゆら消えてっちゃう脆い感情なんかいらないよ。誰からもジャマされないしジャマできない。そこには純粋な『ボクチン』だけがいて、ジャマなノイズなんかないんだ。静かで、カンペキで、揺るぎない。そう思わない?』

    「そ、それは……」

    『別にどうでもいいじゃない?絆なんて、どうせいつかは壊れちゃうんだよ?だったらさぁ……そんな下らないものを守る必要なんてないじゃん』

    「……っ!」

    『ほら、さっさと認めちゃいなよ。絆なんて守る価値ないって。ただそこに存在するだけの孤独の世界、きっとキミたちはそれを『冷たい』とか『かわいそう』とか言うんだろうけどさ。繋がりがなければ痛みも何もない、シンプルでステキでしょ?だからボクチンと一緒に壊しちゃおうよ』

    「そ……そんな事……許されるわけが……」

    『 じゃあ、なんでキミの心にはスキマがあるの? キズナなんてただのおにもつだろ。誰もキミを助けてくれない。ボクチンなら、キミを自由にしてあげられるよ。キミは辛いんでしょ?苦しいんでしょ?だったらさ……もういいじゃん。全部壊しちゃえば、キミはもう苦しまずに済むんだよ?』

    「……あ……」

    卵の誘惑が、彼女の心を蝕んでいく。
    コネクタルランドのみんなの繋がりを守りたい。
    その使命感も確かにある。
    だが、それと同じくらいに……いやそれ以上に苦しみ続けていたのだ。

    『孤独って言葉、キミたちはマイナスだと思うんだろ?でも考えてみてよ。ひとりボッチで夜空を見上げて星を見たときのことを。誰の声も目も気にせずに存在するだけでいい。そこには期待も裏切りも、痛みも何もないだろ?』

    「…………」

    ひとりになりたい。
    誰とも繋がりたくない。
    この世界と関わる全ての者達を疎ましく思ってきた。
    そんな自分が嫌になって、ますます孤独感を募らせてしまう……そんな悪循環に苦しんできたのだ。

    『ひとりボッチでいるのがいちばん自由で、いちばん強くて、いちばん気持ちいいんだよ。誰かに頼ったり、誰かに縛られたりしないで、自分だけで全部決められる。それが……キミにとっての完璧な世界なんだろ?』

    彼女の心に、抑えていた疑念が溢れ出した。
    キズナは本当に意味があるのか?
    ソダテナーの使命は、彼女を縛る鎖ではないのか?
    卵の言葉は、彼女の心の闇を映す鏡となった。

    「……あぁ……」

    コトゼットの目から光が消える。

    「もう……疲れた……私は……ひとりになりたい」

    コトゼットはゆっくりと卵に手を伸ばす。
    その手が卵に触れた瞬間。
    恐ろしいほどに美しかった月光は、濁った雲に覆い隠された。

    『キュラララ〜!そうこなくっちゃ〜!』

    卵は楽しげに笑う。
    その亀裂のような目が、一層輝いた気がした。

    『じゃあ……一緒に世界を壊そっか?まずはあのおっきな木をブチ壊してね!』

    「はい……」

    マフラーが解け、全てを断ち切る刃と化す。

    『わかってるよね?キズナなんて、全部ブチ壊そうね』

    「ええ……」

    海と月の色をしたコートは、不安定な絆を示すかのようなギザギザのマントへと。

    『ボクチンと一緒に、こんなキズナだらけの世界をこわしちゃおう!』

    「ええ……!」

    ソダテナーの印が刻まれた帽子が風に飛ばされ、破れたシルクハットと骸骨のような仮面に変わった。

    「では、始めましょうか……」

    もう迷いはなかった。
    彼女は、卵に宿った闇を受け入れた。
    いや、受け入れたというより……取り憑かれたという方が正しいのかもしれない。
    コトゼット……否、ゾケットーーー孤独の眷属ーーーはゆらりと立ち上がり、仮面の下で微笑んだ。

    『いいねいいね〜!繋がりなんてめんどくさい!キュ〜ララララ〜!』

    機械的な笑い声が夜空に響き渡る。
    もう迷いは無い、後悔もない。
    全てを受け入れて、ゾケットは笑った。




    ーーーーーーーーー…………。




    世界が壊れ始める音がした。
    それはまさに悪夢。
    いや、夢というにはあまりに現実味を帯びすぎた光景。
    空が、大地が、繋がりが……。
    ガラスのように砕け散っていく。

    脆い、なんて脆いのだろう。
    こんなに呆気なく壊れてしまうなんて。

    あぁ、やはり……絆など脆いのだ。

    私は……間違ってなかった……。





    『先生!』





    「……?」


    不意に聞こえた声に、彼女は我に返った。
    正確にはそれは声ではないのかもしれない。
    だが、確かに聞こえたのだ。
    懐かしい声が、自分を呼んでいるのが。

    ゾケットの心の奥で、何かがちらついた。
    懐かしい誰かの笑顔。
    コネクタルツリーの若葉を一緒に見上げた日々。
    誰のものとも知れない小さな声が、遠くから響いてくる。



    『コネクタルランドに生まれて出会った人たち……すべてキズナで つながっています。いっしょに過ごす時間は あまり 関係ありません』

    『出会ったときからキズナは生まれています。すべての人が キズナを大事にしていれば、コネクタルランドは 平和であり続けるはずです。わたしは そう信じています』




    その記憶は、紫の霧に閉ざされたコトゼットの意識に、鋭い痛みとなって突き刺さった。
    彼女の足が震え、両手で頭を抱える。

    「違う!キズナなんて……重荷だ!キズナなど……私を縛るだけだ!」

    ゾケットは声を荒げ、拳で灯台の壁を叩いた。
    かつての優しさを失い、絶望と怒りに震える掠れた呻き。

    「あのお方の言う通り……孤独こそ……至高!!」

    その叫びは夜の海に虚しく響く。
    彼女の目は再び濁り、ゾケットの操り人形としての冷たい表情に戻った。
    卵の笑い声が、再び島を支配した。

    「それでいいよ、ゾケット!さぁ、ボクチンと……ボッチアーニさまと一緒に、コネクタルランドを孤独の世界に変えよう!」

    「はい……ボッチアーニ様。孤独こそ……至高……」

    ゾケットは卵を抱えて歩き出す。
    孤独のエネルギーがゾケットの全身を締め付け、彼女の意識を再び闇に引きずり込んだ。
    記憶の中の笑顔が歪み、紫の霧に飲み込まれる。
    焼けるような痛みが胸に走った事に、ゾケットは気付かなかった。

    彼女の心に残る絆の記憶は、孤独の霧に飲み込まれ、跡形もなく消え去った。
    美しい月は濁った雲に覆われている。
    灯台の明かりだけが、静かに深い孤独の海を照らし続けていた。





    END.
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    #書き出しと終わり #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/801664

    だって、好きなんだもん(*´艸`*)
    しょうがないよね😂😂
    「ほら、目ぇ閉じろよ」
     いくらキスをするときは目を閉じるのが礼儀でも、それはできない。真っ昼間の明るい獠の部屋で、なぜか獠に押し倒されているあたしは、獠を睨みつけていた。今、この状況で目を閉じてしまったら、それは同意として取られてしまうに違いない。それだけは嫌だ。まだ、昼から伝言板を見に行かなきゃいけないし、ビラ配りもしたい。あんたとここでもっこりが始まっちゃったら、それが全部できなくなる。
    「つまんねぇ意地張ってると、襲っちまうぞ?」
    「最初からそのつもりのくせに!」
     両手で押し退けたって、獠の身体はびくともしない。首筋にキスをされたら、力が入らなくなる。
     どうしてこの男は、いつもこうなんだろう。そんなに心配しなくても、あたしはもう、他に行く場所なんてないのに。あたしが愛しているのは、獠だけ。毎夜毎夜、そう言ってるじゃない。あたしはずっと、獠のそばにいる。夜になれば、あたしは必ずここへ帰ってくるわ。だって、ここがあたしの帰る場所だもん。

       了 434