夏季休暇の時期も近づいてきたある日。
ポン、と。机の上に置いたスマホが小さな音をたてる。
手に取り画面を覗き込めば、そこには父親からのメッセージ通知がひとつだけ表示されていた。
その表示に少しだけ躊躇ったあと、タップしてそれをひらけば『今年はいつ頃に帰省するのか』といった内容が淡々とした文面で綴られているのが目に入る。
この時期の通知なので多少予想していたとはいえ、自然と困ったような顔になり、そのまま文面を眺めてしまう。
長期休暇には必ず帰り、顔を見せる……そういう約束でここへの進学と入寮の許可をもらった為、これは避けられるものではない、が……やはり気が重い。
あの家はどうしても息が詰まるから。
異物に対する義母や義兄の態度、別の何かを含んだ父からの視線。あまり、気にしないようとはしているが……
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