クリスマスイブの話「メリークリスマス!」どこかから聞こえてきた客引きの声にそうか今日はクリスマスイブかと思い至る。そうと気づけば街行く人たちの手に有名店のショップバッグやケーキ店の箱があるのが目に付いた。
「いいなァ」
思わずこぼれた独り言は寒空に吸い込まれていく。子どもかそれか恋人をもつ人たちにとっては特別な夜になる日だとすっかり気づきもせず今日一日、仕事をして過ごした。
とはいえ、私にも別に彼氏がいないわけではない。ただ私と違ってお偉いさんで日々忙しくしているだけのこと。彼ことベックマンは先週から海外出張だとかで帰りは年始になると聞いていた。
帰りついたとて暗く寒い部屋でぬいぐるみたちが私を待っているだけなんだよなァと虚しさに浸りながらとぼとぼ歩いてようやくマンションの前に着いた時、私の部屋に明かりがついているのが見えた。
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