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    みずなみ

    @mizu_tioh

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    みずなみ

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    スペース発企画6月末〆 あみだでお題
    担当「血腥い約束」
    🔫

    #OP夢

    銃とタンゴナワバリの近くの島でどうにもキナ臭い動きがあるという情報を得て、ベックマンと組んで潜入したパーティ。ベックの顔も名前も売れてる分殆ど陽動みたいなものだけど。ついでに話を上手く引き出して言質を取るのが目的だ。
     海の男なんて大概が粗野で野蛮な奴らばかりだというのに、ブラックタイを着込んだベックは極上だった。歩けばエナメルのオペラパンプスが煌びやかな照明を反射し、小さな足音が視線を集める。ショールカラーは高い背と長い脚を強調し、比翼のシャツに包まれ首をタイで締めた分厚くみっしりと詰まった筋肉は禁欲的。しかしポケットチーフは挑発的な赤が遊び心ある折りで入れられている。日頃は適当に後ろに流す髪は適度に崩し分け目からすら色気が垂れ流しだ。凶悪な目付きと顔の傷だって、刺激に飢えた陸の淑女達にすれば一夜の火遊びにピッタリの良いスパイスでしかない。もしかすれば淑女どころか男だって釣れそうだ。そんな男にエスコートされていれば視線が刺さる刺さる。この男、海賊生活ウン十年の癖に上流階級のエスコートを完璧にこなしているのだから憎らしい。普段とは違う香水を纏っていることすら嫌味に感じた。
    「アンタ出来ないことってないの?」
    「沢山あるさ。例えばお前程のイイ女と夜を過ごすなら我慢は出来ねぇな」
    潜めた声で喉を鳴らしながら、腰に添えた手をドレスの背中の隙間に忍び込ませて脇腹を指先で撫でられる。
    「ちょ、馬鹿!」
    「終わったら俺の部屋来るか」
    「行かない!」
    こちらだって色仕掛けに有効だろうとそれなりに着飾って、ボルドーのロングドレスは身体のラインを美しく出しながらも下品さのないものを選んだつもりだ。海賊ゆえに傷もあるので、デコルテは出すが肩を隠す分背中が大きめに開いている。それが間違いだったかもしれない。このスケコマシと来たら仲間にこういう冗談を言うのだから困る。
    「冗談言ってる暇があるならさっさとターゲット見つけて」
    「あぁ、大丈夫だ。もう見つけた」
    あそこ、壁際で今話している豚男だ。見えるか?と抱いているアタシの腰を強く引き寄せ囁くベックの見る方へ視線をやる。彼の言う通りターゲットの男がその肥えた腹を重そうにふんぞり返りながら歓談に興じている。アイコンタクトで頷きあって、気配を消して二手に別れた。あんなのに色仕掛けだなんて、ちょっとどころか大分憂鬱だ。

    ***

    しくじった。いや、大元の予定である陽動と、ついでに必要な言質もしっかり隠したTDで録音したのだけど。資料の持出し組だったライムとスネイクがどこかで見つかったらしく、仲間だと知られているアタシ達も当然何かを狙っているのだろうとバレたわけだ。まぁどちらも目的は果たしているので、ヤソップの援護の元脱出をするだけ。しかし敵も部下を揃えていてなかなか数が多い。
    「ベック!」
    「任せろ」
    船の上でも彼と背中合わせで戦うのはそんなに多くない。赤髪に喧嘩を売ろうなんて奴らがもう少ないというのもあるが、中・近距離の私とオールレンジ可能で全体の指揮をこなすベックでは持ち場が違うのだ。ドレスを割いて脚に付けた拳銃を取る。持ち込めたのがこれだけなのは悔しいところだけれど、海楼石の銃弾の口径に対応してるものを持ってこれたので上々としよう。見聞色で探ってもそう苦労しそうな強敵はいなさそうだ。
    「油断するなよ」
    「……そう言いながら人の脚撫でるのヤメて」
    「言ったろ、俺は我慢が苦手でな。目の前にこんなエロい脚出されちゃ見るだけなんか出来ねェよ」
    拳銃を隠し持っていたガーターストッキングの隙間に指を挟んでは内腿を揉むように撫でる不埒な手を叩く。脳天にキスまでしてくる本人だっていつの間にかタキシードのジャケットを脱いでタイも外していた。いつもより多い上にやたらそういう雰囲気を匂わせるベックとじゃれていれば、ベックの後ろから鈍器を持った男が振りかぶっていたのでそのまま蹴り飛ばす。
    「アンタそんなおっさん臭いこと言うタイプじゃないで、しょ!」
    ベックはアタシの蹴りに合わせて屈み、男の吹っ飛んだ方を確認して口笛を鳴らした。
    「tootいい蹴りだな。野郎がソッチに目覚めちまいそうだ」
    まったく馬鹿なことを言う。普段から仲間には案外愛想の良い男ではあるが、あまり茶化されるとそろそろ私の秘めた恋心が軋み始めるのでやめて欲しい。鈍器男を吹っ飛ばした方からさらにわらわらと出てきたので、物陰で銃撃をやり過ごす間に自身も弾を装填しながら叫ぶように忠告する。
    「ベック!いい加減にしてよね、アタシ本気にするわよ!」
    「そうしろ!とっくにこっちは本気だ!」
    「はぁ」
    寝耳に水どころじゃない。銃撃が止んだ一瞬の隙を突いて2人で飛び出す。殺す気は無いので脚の太い血管を狙って敵を無力化していく。
    「本気ならちゃんと口説きなさいよ!茶化してばっかりでガキみたいなことしか言わないじゃない!」
    「今更格好付けて口説いた方が嘘臭ェだろうが!一遍やってお前に笑って流されて一晩ヤケ酒したんだぞこっちは!」
    「そんなことあっ、たわね……」
    ヤソップとの合流ポイント近くまで来て思い至る。数ヶ月前、宴で隣に座っていたベックに腰を抱かれて口説き文句つらつら並べられたのだ。酒の席であったので全く意に介さず、しかし冗談として全て受け流すには自分に向けられたそれらが衝撃で、とりあえず笑ってしまったのだ。その時のアタシはなんて言ったか。
    『あっははは!さすがスケコマシ!アンタにこんな口説かれ方したらそりゃ女はこぞって落ちるわね。あ、手離して。お花摘んでくるわ』だった。
    「でもアレは無くない?宴よ?ほかのみんなだって揃ってたし」
    「あぁそうだな。あの場の全員に笑われたぞ俺ァ。やっと本命絞って、酒で気も緩んでるだろうといざ口説いたら欠片も意識されてねぇときた。茶化しながらでも距離詰めてくしかねぇだろうよ」
    苦々しく吐き捨てるベックは本当にそれしか手段がなかったと言いたげだ。
    「馬鹿じゃないの!?他にもやりようはあったでしょ!昼間にちゃんと口説いてくれたらアタシだって、」
    「、ちゃんと口説いたら。俺のモンになってくれるのか」
    そりゃそうだ。だってこちらはとっくにこの男に惚れているのだから。スカして格好付けてるけれど、頭が回り過ぎるが故に慎重で、時に臆病なくらいに繊細な感覚を持つこの男を。猪突猛進で楽天的なアタシが、なんだか放っておけなくなってしまった時から。目は口ほどに物を言う。アタシの顔を見て確信を持ったのか、ベックの雰囲気も変わった。お互い歩み寄り、空いていた距離を詰める。いたぞ!とか囲め!とか敵の声も聞こえてるけれど、視界に入ってるのはお互いだけだった。
    「なァ。……好きだ、」
    「うん。アタシも好きよ、ベック」

    「あっ!いた!お前ら到着したなら合図送れ、って何やってんだ敵陣ど真ん中だぞオイ!」
    イチャつくなら船戻ってからにしろよ!とヤソップが怒鳴りながら敵を仕留めていく。別口で一度脱出していたライムも戦闘に加わり雷撃で次々気絶させていってる。それは分かってるけど、アタシたちはキスに夢中で他に構っている余裕はなかったのだ。言い訳するならば、2人ともここまでに結構な数を倒していて興奮状態にあったのだ。そこに来て思いが通じあってしまったので、舌を絡める程ではなかっただけでも許して欲しい。

    「今度、新しいドレス贈らせてくれ」
    「嬉しい。それ着てデートしましょう」
    「夜は、宿を取る。部屋に来てくれるか?」
    「行くわ。ガーターストッキング穿いてあげる」
    何とか脱出した後、顔を寄せ合いコソコソと話しながら笑い合うアタシ達を見て仲間たちはやっとかと呆れていたとは、2人揃って知る由もないのだった。
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