合宿に参加する牧仙の話 周囲から注目されるのには慣れている。
バスケットでも、その他の面でも、生まれてこの方仙道彰の周囲はいつだって騒がしかった。己が望もうが望むまいがそれが変わることはなかったので、いつしか仙道は気にすることをやめた。周囲の騒々しさや他人の視線などよりも、バスケットの面白さや釣りの成果の方が彼にとっては遥かに大切だったからだ。そのせいで「マイペース」「気まぐれ」「能天気」だと言われようが、やはり彼には何の影響も及ぼさなかった。
だから、神奈川県国体選抜チーム合宿宿舎の脱衣所で、髪を下ろした湯上がりの仙道を前に「誰だこいつ」「不審者……!?」「知らねー顔がいる」と周囲から騒がれても、仙道はのほほんと微笑みを浮かべるだけである。
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