telescope「今夜二人で星を見ないかい?」
ルカのその誘いにアンドルーは二つ返事で頷いた。
約束の時間、待ち合わせの庭へ行くと白くて長い筒を覗き込むルカの姿がある。
「なんだそれ」
「ああ、ちょうどいいところに来たね」
白い息を吐きながらこちらを振り返る。焦げ茶色のしっぽのような髪が揺れた。
「覗いてごらん」
上を見上げれば満天の星空があるというのに、筒を覗けとはどういう事なのか。頭の良い奴の考える事は僕にはわからない。
言われるがままに筒を覗き込むがぼんやりとしてよく分からない。
「ああ、違う違う。片目で見るんだ」
ルカは僕の背後に回って、筒を握る僕の手に手を重ねてこうやるんだと教えてくれた。
近い距離に跳ねる心臓の音が聞こえませんようにと祈りながら、言われた通りに筒を覗く。
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