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    chanuitei

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    囚人愛

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    chanuitei

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    20210807
    #墓囚版深夜の60分一本勝負
    お題
    声 誤解

    #墓囚
    prisonerOfTheTomb
    #ワンライ
    oneLai

    7-38-55目を開けると、白い天井と真っ白い人物が見えた。
    頭がぼうっとして、現状が把握出来ない。私はいつ眠ったのだろうか。
    だんだんと視界がクリアになってきて、私の顔を覗き込んでいるアンドルーだとハッキリと認識できた。
    「ルカ。具合はどうだ?」
    じっとアンドルーの目を見つめていたら、彼は眉間に皺を寄せて、目をそらす様に俯いた。
    「まだ寝起きで頭がぼうっとするが、特に問題はなさそうだよ」
    手を布団の中から出して、握って開いたり、足も動かしてみたがどこも痛みは無い。
    「あんた、なんでここにいるのかわかっているか?」
    「いや……それが全く思い出せない」
    「3日も部屋から出てこないから心配で部屋のドアを開けたら、倒れていたんだぞ」
    アンドルーは私が寝かされているベッドの横の椅子に座ると、手を組んで長い溜息を吐いた。
    「ああ!思い出したよ!考えをまとめていたら、寝るのを忘れて集中していたかもしれない」
    はあーっと長い溜め息がした、
    「これで何度目だ?」
    ギロリと睨みつけられ、体がビクンと跳ねた。いつもより声のトーンも低いしこれは随分と怒っているな……
    「君も、私の性分をわかっているだろう?こればっかりは持病のようなものだから、私にもどうしようもない」
    後ろ手をついてベッドから上半身を起こすと、アンドルーの怒気が伝わってくる。
    これは、返答を間違えたな……
    「あんた、いつか死ぬぞ」
    「そうなる前に、君が私を見つけてくれるだろう?」
    肩を竦めてから、微笑んで見せるとアンドルーは白い頬に朱が差した。
    彼は私のこの表情に弱い。きっとまだ私を叱りたいだろうに、口をもごもごと動かすだけで何も言わない。いや、言えないのだ。
    「……僕がいなくなったらどうするんだ?」
    「私の前から、いなくなってしまうのかい?」
    アンドルーの首にするりと両腕をまわして顔を近付けると、視線を逸らす。
    突き飛ばす訳でもなく、手は組んだままで体を固くして唇をキュッと引き結んだ。
    赤くなっている耳に唇を寄せる。
    「いつもありがとう」
    そう一文字ずつ丁寧に囁くと、体を突き飛ばされて私はまたベッドに倒れ込んだ。
    「あんたなんか、くたばっちまえ!!」
    アンドルーはそう言って立ち上がってバタバタと部屋の扉を開けると立ち止まった。
    「……夕食はテーブルの上に置いているからちゃんと食べろよ……」
    バタンと、扉が閉まった。
    「くたばれと言った相手に言う言葉じゃないだろ」
    腹の底からふつふつと笑いが込み上げてきた。
    くたばれと残酷な言葉を放った彼の表情は、いつもの少し困ったようなそれとは違って、私が特別なのだと物語っていた。
    それに、くたばれと言った相手に食事の心配をするなんてチグハグにも程がある。
    「人は話の内容よりも、見た目や表情で他者を判断する、か」
    先程はからかい過ぎてしまったが、彼は、声のトーンやジェスチャーが言いたいことと一致していなくてよく誤解されがちだが、そこがまた愛おしくて堪らないのだ。
    「食事をしたら、彼の機嫌を取りにいこうか」
    甘美な気分を味わいながら、デーブの上に置かれた食事に手をつけた。
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    chanuitei

    DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負
    2021.12.18
    お題『横顔』
    お借りしました。

    荘園を出たあとのお話
    横顔あれから、もう何度季節を見送っただろうか。

    荘園でのゲームをクリアして、各々が自ら望む場所へと帰っていった。荘園で出会った一部の人間とはたまに手紙のやり取りをしている。中でも、ビクター・グランツとはよく連絡をとっている。手紙の内容は代わり映えのない近況報告。それでも、友人と呼べる人間なんていなかった僕からしたら、とても価値のあるものだ。
    荘園でのゲームはクソッタレな内容だったが、大金以外にも僕に沢山のものを与えてくれた。

    一つ目は他人との関わり方……いや、この言い方だとビクターに怒らてしまいそうだから
    、友人、と言い変えよう。
    ゲームは他サバイバーと協力、意思の疎通ができないと勝てない。これが僕にはとても難しかった。化け物の僕となんて、誰も話したがらない。ましてや、協力なんて無理な事だ。そんな僕に荘園のメンバーは根気よく付き合ってくれた。中でも、同じ頃に荘園に来たビクター、ルカは僕に寄り添ってくれた。ルカとは言い合いにもなった。ルカは柔らかそうな顔の裏でとても頑固で自分の意思を曲げない。一度火がつくと感情を面に出すくせに、ほとぼりが冷めると言い過ぎたとしょぼくれる。そんな僕達をビクターは呆れることなく、見守ってくれていた。
    1413

    chanuitei

    DONE #墓囚版深夜の60分一本勝負
    2021.09.11
    お題「鮮やか」お借りしました。
    花ざかりアンドルー・クレスのとある日の日記

    ++

    荘園には鮮やかな花が咲いている。庭師の女……エマ・ウッズが手入れをして花を咲かせているらしい。風に乗って香る花の匂いを肺いっぱいに吸い込むと、心に暖かいものが灯る。
    花は、好きだ。晴れた日の庭に出て、花を愛でたいが太陽は僕の肌を焼き尽くそうとしてくるので、それは叶わない。
    若葉が育ち、蕾ができて、いのちにみちあふれていま開こうとするその瞬間をできるのであれば、僕は沢山見てみたい。青く澄んだ空の下で太陽の下でキラキラと光る色とりどりの花達。その花の周りを飛ぶ蜜蜂。花咲くことは命の誕生だ。その光り輝く命の中に僕はいられない事が凄く寂しくて、そして羨ましかった。
    この荘園に来てからも、僕は隠遁とした生活を送っている。共に戦うサバイバーとは、ゲームをする上での最低限のコミュニケーションをするだけ。一部の奴等は、僕がテーブルに俯いて誰とも目を合わさないようにしているのに、そんなのお構い無しに話しかけくる。そいつらには真っ白で化け物と罵られてきたこの見た目が、普通の人間に見えているらしい。変な奴らだ。
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