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    或る千歳

    落書き置き場とかにするつもりではある

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    或る千歳

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    まつだじんぺ~を極めようの会① 感覚を取り戻したい

    年賀状編 mtd夢①「えっと……こんばんは?」

    一度か二度のコール音の後、すぐに電話は繋がった。画面の向こうにいる陣平に何を返せばいいのかが分からなくて少しつっかえてしまう。よく電話をするからこそ逆に言葉が出てこないこともあるのかと思えばむず痒い。とりあえず挨拶を口にすれば、電話口から陣平がくすくすと笑う声が聞こえて来た。

    「なんだその他人行儀」
    「べつに~……もしかして今外? 靴の音がする」
    「正解。ちょっと散歩してえから外に出てんだよ」
    「……えっと、も、もうすぐ年明けだね。事前に約束してたけど、大晦日に陣平と電話してるなんて不思議な気持ち」
    「不思議?」
    「何ていえば良いのか……いつもは電話じゃなくてLINEが多いのと、大晦日っていうのが初めてだからかな」

    そうかもな、と相槌を打ってくれる陣平の声は普段以上に柔らかい。自分の声色は浮足立っている事がよく分かるくらいにふわふわしていて、それが陣平にもバレていると思うと、やや照れてしまう。お互いに今年は大晦日が空いているからということで年越し五分前からの電話の約束を取り付ける事に成功して──こうして今、年が明けるまで秒読みで数えている訳だけれど。

    「……何だかね、今。すっごく陣平に会いたいなって思う」

    思わず口から飛び出してしまった本音に慌てふためいた。もう年越しまで一分を切っているというのに、今更会いたいなどと我儘にも程がある。今のは何でもないから、と誤魔化そうとした所で。

    「じゃあ外見ろ、外」
    「え?」
    「聞こえなかったか?」

    聞き間違いじゃなければ、確かに今、

    「──おまえの家の、窓の外」

    電話と家の外。その両方から、陣平の声がした。

    「噓!?」

    驚いて携帯を取りこぼしそうになりながら慌てて部屋の窓を開け放つと、確かに家の前の道路に陣平が立っているではないか。何で、どうして、という疑問が音になる前に、夜空には大輪の花が咲いた。年が明けた事を知らせる新年の花火である。

    「あけおめ」
    「あ、うん、明けましておめでとう……!?」

    電話からも真下からも陣平の声が聞こえてくるのがどうにも妙で、口元には困惑やらを後回しにした笑みが浮かんだ。それを見た陣平もまた、頬を緩める。満足そうに白い息を吐く顔立ちは花火の賑やかな色によって照らし出されていた。

    「お前に今年最後に会うのも、新年最初に会うのも、俺だったら面白いと思ったんだよ」
    「……こんな夜中に風邪ひいたらどうするの」
    「舐めんな、これくらいの寒さ余裕だっつーの」
    「そういう問題じゃないのに! 玄関で待ってて、」

    咎めながらも頬は緩みきっていて、きっと鏡を見れば自分のだらしない表情がありありと映し出されるだろう。急いで階段を駆け下りたあと玄関まで一気になだれ込んだ。もしも此処に共通の友人である萩原がいれば「青春してんな~」と言いたげな笑みを浮かべているに違いない。

    「陣平!」

    勢いよく抱き着けば、陣平は避けたり窘めたりせずにこの身体をしっかりと受け止めてくれた。

    「……今年もよろしくね、陣平」
    「おー、ことよろ」
    「なんか軽くない?」
    「今年もよろしくお願いします」
    「うーん……それはそれで変かも」
    「オイ」

    今年はきっと、去年よりもっと良い一年になる。そんな気がしてならない。
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