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    hisoku

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    hisoku

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    杉が誰かさんの夢を見る話
    sgo未満だけどsgoです

    #杉尾
    sugio
    #現パロ
    parodyingTheReality

    カラス 夢を見た。
     最初に視界に入ってきたのは黒だった。その映像がゆっくりとズームアウトしていくことでその黒が羽根だと解り、羽ばたいているのだと解り、その鳥がカラスだというのも解った。夢の映像はスローモーションで、幾羽かのカラスが画面右から左へと飛んでいく。音はなくカラスの夢かと思い、何の気もなく見つめていると、ふわりとその奥で黒髪が靡くのが見えた。一目見てそれが人の髪だと解りズームアウトし続ける画面の中、今度はその髪を注視する。カラスのはためきで起きた風で揺れているのだろうか。男が現れた。こちらに背を向けている。何も纏っておらず、やや猫背で透けて蒼白い、骨も浮き上がっていたが、決して薄くはなく僧帽筋のなめらかな隆起が三角筋へと続き、それは程好く発達ししなやかな硬さを持っているだろう想像の出来る整った身体だと思った。
     透けて蒼白く感じるのは時々画面全体が揺らめくからというのもあるのだろう。夢特有のどんなに自分が集中して見ていてもふわっとピントが合わせられなくなる瞬間があった。そういう揺めきの中で佇んでいた男がカラスの行く方に向かって顔を動かして振り向く。知っている男だった。静かに上げられていくその男の視線を追い続けていると、ふっと目が合った。真っ黒で真っ直ぐな視線。画面はズームアウトし続ける。カラスが羽根を落とす。男が遠ざかっていく。
     俺自身はスピリチュアルなことは解らないがただ、カラスは人々に忌み嫌われてもいるが、神からの遣いでもあるという話を聞いたこともある。古い言い伝えやなんかに登場する八咫烏は大きなカラスという意味なのだという。そう思うと、彼等の神聖な生き物だという気持ちも理解出来る気がする。夜明けの象徴とも太陽の化身とも云われている。忌み嫌われるもの、或いは、叡知を告げるもの。道理を識るもの。未来に向かって飛ぶもの。あの夢は俺に対する忠告だろうか、或いは。
      目を覚ましたベッドの中でひとり思う。ああして夢に出てきた尾形を見て、あんなにも憎かったのにこうも恋しく思うのは何故だろう。なんでだろう。遠ざかっていく背中に手を伸ばして追い掛けたくなるのは何の気持ちだろう。あれに触れてみたい。振り向かせたい。自分の流した涙が頬を伝って耳の中に入り、塞がれて音がおかしく聴こえる。ぼぅっと音が聴こえてくる。その音に紛れるようにして、杉元、もうじきだ、という尾形の囁きを聴いたような気がした。
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    Replies from the creator

    hisoku

    DOODLE過去作
    湯沸室で杉と尾がお茶を飲む話です
    前世記憶あり現パロ
    尾語り
    湯沸室 喫煙をする習慣はないので、就業中の休憩といえば緑茶だ。あるいは珈琲。それと少しの甘いものかしょっぱいものを一口頬張るのが日課で、デスクワークに根が詰まり、肩も凝りそうだったので仕事の効率が落ちる前に気分を変えようとひとり湯沸室に向かった。買い置きのドリップコーヒーを淹れるために湯を沸かそうと薬缶のことを思い、買い置きのミネラルウォーターはまだ残っていたっけと思い起こしながら廊下を行く。
     スタッフルームのあるフロアの一角、廊下奥の角の階段と廊下を挟んだ少し離れた斜向かいにトイレが、その対角線上の奥まった場所にひっそり湯沸室はあった。そこは小会議室の並びでコの字に壁と壁と窓に挟まれた造りになっていて、二畳半程の広さがあり、冷蔵庫と棚、その棚の上に電子レンジ、隣に小さな流し台があった。流し台にはガス台が二口と壁にガス給湯器が備えつけてある。どうってことはない必要最低限が備え付けられている極普通の湯沸室だが、流し台が木目調の引き出しのついた懐かしい感じのする流し台で、ばあちゃん家の台所を彷彿とさせて、そこを緑茶を飲みながら眺めているだけでも癒しを覚えた。面積の狭さも落ち着く。
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    hisoku

    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形の話です。まだまだ序盤です。
    筑前煮 夜の台所はひんやりとする。ひんやりどころではないか。すうっと裸足の足の裏から初冬の寒さが身体の中に入り込んできて、ぬくもりと入れ換わるように足下から冷えていくのが解る。寒い。そう思った瞬間ぶわりと背中から腿に向かって鳥肌も立った。首も竦める。床のぎしぎしと小さく軋む音も心なしか寒そうに響く。
     賃貸借契約を結ぶにあたって暮らしたい部屋の条件の一つに、台所に据え付けの三口ガス焜炉があるということがどうしても譲れず、その結果、築年数の古い建物となり、部屋も二部屋あるうちの一部屋は畳敷きになった。少し昔の核家族向けを意識して作られた物件らしく、西南西向きでベランダと掃き出し窓があり、日中は明るいが、夏場には西日が入ってくる。奥の和室の方を寝室にしたので、ゆったりとしたベッドでの就寝も諦め、ちまちまと毎日布団を上げ下げして寝ている。また、リフォームはされているが、気密性もま新しい物件と比べるとやはり劣っていて、好くも悪くも部屋の中にいて季節の移ろいを感じることが出来た。ああ、嫌だ、冬が来た。寒いのは苦手だ。次の休日に部屋を冬仕様をしねえとと思う。炬燵を出すにはまだ早いか。洋間のリビングの敷物は冬物に替えとくか。気になるところは多々あれど住めば都とはいったもので、気に入って暮らしてはいて、越してきてもう三年目の冬になった。
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