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    hisoku

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    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形と作る料理がだいたい焼くか炒めるか揚げる系な杉元の話の「持ち寄り」の続きです
    尾語り
    持ち寄り(続き) ぼんやり一缶を飲み切って、さて、どうしようかね、と考える。夜の部屋の中に誰かがいる気配があるのはいつ振りだろう。社会人になってからは初めてかもしれない。置きっぱなしになっていた腕時計を手に取り、九時十分過ぎか、と小さく声に出して針を読み、見るとなく台所の天井を見上げる。目を閉じて集中しても杉元の寝息は聴こえてこなくて、静かなものだ。ここからだと姿も見えない。二十二時までは寝かせてやるとして、どうしようか。寝ているとはいえ客人がいるのに、シャワーを浴びに行くのも変か。
     さてさて、と呟いて目を開くと立ち上がり、冷蔵庫のドアに手を掛け、開けて何があるか確認をする。足りそうだ。立ち上がって振り返り、タッパーに入れて冷ましていた今日作った料理を見つめる。豚肉と刻み昆布の大蒜しょうゆ煮、ほうれん草の胡麻和え、切り干し大根、人参と油揚げを入れたひじきの煮物、蓮根のきんぴら、人参と牛蒡と豚肉のきんぴら、茄子の煮浸し、水菜と油揚げの煮物。味噌味がなかったよな、確認して蓋をして積み上げて寄せると、起きたら起きたでいいか、と食材を冷蔵庫から取り出して調理を始めた。
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    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形と作る料理がだいたい焼くか炒めるか揚げる系な杉元の話の続きです
    尾形語り、尾形の部屋で二人が飲み会をする話です
    ちょっとはsgoに近付いた気がします
    持ち寄り 四月は何かと不調になりやすい。新年度が始まって、新入社員を迎え新たに人間関係の構築が始まってそれなりに気疲れもするし、連休前ともなるとそれまで張り詰めていた気概も薄れ崩れてくる。あともう少しで休みだと思うと同時に切りよく仕事を納めておかねばという焦燥感も出てくる。心が縒れて、頑張るのが少し虚しくもなるのだろう。それでいて気温も乱高下するし、自分は五月病よりも四月病に罹りやすいと思う。
     こんな時はあれだ。料理をするに限る。台所に立って頭の中を空っぽにしたい。
     そう思って食材の買い出しに行った土曜の昼前にアバートの共用階段で杉元に会った。よう、と声を掛けると階段を降りようとしていた足を止め、あ、尾形、会えて良かった、と云って笑うので、何だ、どした、と訊いてやる。いや、ちょうど今、お前ん家行ってたんだけど出てこなかったから寝てんのかなと思って帰ってきたところだった、朝から買い物に行っていたのか、と云われて頷くと、ん、と両手に持っていたビニール袋を一つ持ってくれながら並んで降りたばかりの階段を上がり出す。
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    DOODLEちょっと狡い杉にランチを奢る約束をしていた尾の話、過去作、尾語り、この先sgoになるやつです
    当時は「口説く」というタイトルで、なんとなく読み返したくなって探し出してきました、拙いですが、良ければ
    (ちょっと手直ししました)
    (とある)絵師さんの描かれた絵から小説を書くというタグの企画で書いた話なので作風もその方の絵に寄り添わせようとしていた分、読んだ時の感触や雰囲気が普段のそれとは違うと思います
    言質 同僚で後輩の杉元と飯に行くことになっていた。二人で受け持っていたプロジェクトを無事遂行し終えた打ち上げとして飯に行く約束をしていて、俺の奢りだ。今回は杉元の頑張りにだいぶ助けられていて、それを讃えて労いたいと俺の方から申し出て約束を取り付けた。現金しか使えない店を選ばれても大丈夫なように予め数万円を銀行から下ろしてきて財布に入れてきていたし、一応カードもある。社食や飲み会で見た杉元の食いっぷりからして、焼き肉やステーキ店に行きたいと云われたら、それなりに払うことになるだろうが、約束をしたからには遠慮せずに好きなだけ食えと言ってやろうと思っている。そもそも自分は金のかかる趣味などもない独り者だし、可愛らしく煙草も博打もやらない慎ましい生活を送っているので有り難いことに金には困っていない。旨いと云って後輩が嬉しそうに飯を食ってくれる姿を見るのもそれはそれで悪くないと思えた。
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    DOODLE過去作に「猫は火を恐れない」という杉尾小説があるんですけど、そのうちの一章が雪の日の話だったので今日の気分で引っ張ってきました。物語のあらすじは車に轢かれそうになった猫と魂を半分ずつ使って山で炭焼きとして生きていた杉の元へ逢いに行った尾の話で、百というのが尾と猫が半分ずつ魂を使って生きていた頃の猫耳猫尻尾持ちの男の子のことで、今は尾の心の一部として生きていて、尾自身は百之助と杉から呼ばれています。
    猫は喜び庭駈けまはる ぎしりと畳の上を歩く足音がした後、しゃっとカーテンを勢いよく開く音と共に、寝室に柔らかい乳白色の光が射し込んできた。尾形だ。

    佐一、起きろ。

    んー。

    起、き、ろ。

     被っていた布団を捲ると前髪を退けて、尾形が眠っている人の額に顎を押しつけてごりごり擦り付けてくるという嫌がらせのような起こし方をしてくる。朝の髭は短く新しく生えたばかりのものが混ざっていて、夜に触れる時よりもちくちくとして痛い。じょりじょりと音がしている気すらする。これをしたら絶対起きると解っていてやるのだ。独特すぎて、ふふふ、と目を閉じたまま笑ってしまった。ここで一緒に暮らしているうちに性格も以前より穏やかに丸くなってきたと思うが、時々、こういう変なことをしてくる。
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    DOODLE昔書いた掌篇小説です
    杉語り、尾の寝る時の癖に気付いた話です
    両手に収まりきらない程の 同棲を始めて毎晩一緒に寝るようになって、尾形が寝ている間はいつも両手を握っていて、ぐーをしている事に気が付いた。毎晩、毎晩、時には眠る前に手を繋いでいたりすることがあっても、いざ眠りに落ちて繋いでいた手がするりと解けると同時にぐーになる。きっかり両手を握り締めていて、ぱーの手になっていた事がない。柔くもなく常にきつく握り締められていて、それに気付いてから目にする度に不思議だと思った。
     こいつは力んで寝ているのだろうか、そんな力を入れたまま寝て休めているのだろうか。夜中にトイレに起きたついでに気になって握っている手の指を開かせてみたくなった。腹這いになって尾形の手元に顔が来るように寝そべり、一本ずつ曲げている指の関節を伸ばしてやろうと指に触れる。親指は人差し指の隣につけられていたので、先ずはそれをそっと横にずらした。出来た隙間から人差し指の第一関節を優しく掴むと起こさないよう細心の注意を払いながら手のひらから離すように伸ばしてやる。開いたら、自分の手の甲の縁で押さえて中指も広げようとした時に声がした。
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    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形の話です。まだまだ序盤です。
    筑前煮 夜の台所はひんやりとする。ひんやりどころではないか。すうっと裸足の足の裏から初冬の寒さが身体の中に入り込んできて、ぬくもりと入れ換わるように足下から冷えていくのが解る。寒い。そう思った瞬間ぶわりと背中から腿に向かって鳥肌も立った。首も竦める。床のぎしぎしと小さく軋む音も心なしか寒そうに響く。
     賃貸借契約を結ぶにあたって暮らしたい部屋の条件の一つに、台所に据え付けの三口ガス焜炉があるということがどうしても譲れず、その結果、築年数の古い建物となり、部屋も二部屋あるうちの一部屋は畳敷きになった。少し昔の核家族向けを意識して作られた物件らしく、西南西向きでベランダと掃き出し窓があり、日中は明るいが、夏場には西日が入ってくる。奥の和室の方を寝室にしたので、ゆったりとしたベッドでの就寝も諦め、ちまちまと毎日布団を上げ下げして寝ている。また、リフォームはされているが、気密性もま新しい物件と比べるとやはり劣っていて、好くも悪くも部屋の中にいて季節の移ろいを感じることが出来た。ああ、嫌だ、冬が来た。寒いのは苦手だ。次の休日に部屋を冬仕様をしねえとと思う。炬燵を出すにはまだ早いか。洋間のリビングの敷物は冬物に替えとくか。気になるところは多々あれど住めば都とはいったもので、気に入って暮らしてはいて、越してきてもう三年目の冬になった。
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