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    tobiranomuko

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    tobiranomuko

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    恋する人魚は洗面台で溺死する3(アキデン前提吉デン+ナ)です。まだまだR18には到達しない。アキデン匂わせに苛つく吉のパート。捏造沢山。ナユも出てる。

    デンジが早川アキを忘れない限りヒロフミが付け入る隙がない。
    デンジが早川アキを忘れる方法なんてあるのだろうか。

    チェンソーマンが食べてくれないかな。

    なんて、チェンソーマンでも死んだ人間なんて食べられないか。

    夕食の準備が終わる。ご飯と大根の味噌汁と鶏の唐揚げとひじきの煮物だ。
    デンジは席につく前に小さい皿を二つ用意し唐揚げ四個と二個に分けてサランラップで包む。それをアキの遺影の前に置いた。
    「パワー、お前のは四個にしてやったんだからアキの盗るんじゃねぇぞ」
    返事がない遺影の前で一人で喋っているデンジ。
    ナユタはデンジをじっと見つめている。泣きそうなようで怒っているような目つきだ。デンジが遺影の前から離れるとナユタはすぐに食卓の方へ身体を向ける。

    支配の悪魔、デンジ君の記憶を改竄してくれないかな。嫌なら二人の記憶をデンジ君から消せばいいのに。
    しないのか。できないのか。

    席に着くとデンジとナユタは手を合わせて「いただきます」と言う。ヒロフミも真似して手を合わせる。
    「私これやだ」
    「ひじき身体にいいんだぜぇ教育テレビでやってたんだよ。カルシウムが沢山で背が伸びるぜ」
    ナユタがひじきの煮物が入った小鉢をデンジに渡すも返されてしまう。
    「背なんか伸びなくていい。デンジが私のことおんぶ出来なくなるじゃない」
    ナユタは背が伸びなくても良い理由を述べるもデンジはごく自然に「背ぇ伸びてもおんぶくらいしてやるよ」と返す。ナユタはしばらく考え込んだ後でひじきの煮物を口に含んだ。やはり苦手なのか涙目になるも吐き出さずに咀嚼し飲み込む。
    「これ全部食べられたらアイス二個食べさせてよね…」
    「おう。食え食え。オレの分やるよ」
    ナユタがひじきを食べている様を見てデンジは微かに口角を上げる。

    いいよな。家族ってだけでデンジ君に甘やかされて。デンジ君の隣に座ることが出来ていいよな。

    「吉田」
    ヒロフミはデンジに呼ばれて我に返る。
    「腹、空いてねぇの」
    「いや…微笑ましいなぁって思ってみてただけだよ」
    ナユタに向けた笑みは消えていた。いつもの気怠げな表情に戻っている。
    「ホホエマシイ」
    「うん。兄妹…親子にも見えるかな」
    「ふぅん…それってホホエマシイんだ」
    デンジは唐揚げを口に含む。興味なさげだ。
    ヒロフミは味噌汁を啜る。いつもより少ししょっぱい。勉強疲れで味噌を入れすぎただろうか。疲れていると身体は濃いものを欲する。

    ヒロフミはいつもデンジを欲していた。

    デンジの食べ方は綺麗だ。正しい箸の持ち方を知っている。対してナユタは箸の持ち方が下手だ。デンジが何回か矯正している場面を見たがイマイチ成果が表れない。
    手際が良いデンジは教え方が下手なのかもしれない。
    それかナユタが覚えられないのか、覚える気がないのか。
    デンジは地頭が良いから少し教えただけですぐに覚えられてしまう。
    勉強に興味を持てば成績もだいぶ良くなるのに本人はあまり興味がないから順位は下から数えた方が早い。
    だからきっと今回の小テストも大丈夫だろう、とヒロフミは睨んでいる。補習が嫌だからという理由があるのでデンジは上手くやる。
    ようやく唐揚げに手を付けた。齧ると醤油ベースの味が口の中に広がる。咀嚼すれば咀嚼するほど旨みが深まっていく。
    「ねぇ、デンジ君」
    「んぁ」
    「唐揚げの味付けって早川さんに習ったの」
    ヒロフミは聞いてしまう。自分から傷を抉りにいってしまった。なぜだろうか。傷つきたくないのに。デンジのことになると気になって仕方がない。どこまで早川アキに染まっているのだろうかと探ってしまう。
    「あー…うん。アキに習ったのは醤油とおろしニンニクとおろし生姜と酒入れるやつ。これが唐揚げの基本の味付けって言われた」
    基本、と言われてヒロフミは安心してしまう。基本ということは誰でも同じということだ。
    「前に食べた唐揚げはちょっと味が違ってたよね。いつものよりも味が甘辛くて凄く濃かった。あれも美味しかったなぁ。また食べたい」
    ナユタが唐揚げを飲み込んだ後でそう言った。デンジが思い出したようで。
    「ああ…ザンギか」
    「ザンギ唐揚げじゃないの」
    「北海道だと唐揚げのことザンギっていうらしいぜ」
    「ふぅん」
    ヒロフミの茶碗が持つ手が力んだ。もう少し力を入れると茶碗が割れてしまいそうである。
    「デンジ君、北海道行ったことあるんだ」
    「あー…アキが家族の墓参りしに付いていったことがある」
    「へぇ、早川さん北海道の人なんだ…」
    これ以上聞きたくはなかった。自分から聞いた癖に早く会話を切り上げたくて次の話題に入ろうとする。なのにデンジは止まらなかった。
    「アキがザンギ食べたいから手伝えって言ったことがあって、それで覚えた」
    茶碗が割れる前に箸が折れた。デンジは折れた箸を見て驚き代わりの箸を持ってこようと台所に向かう。
    デンジは箸だけ見ていたのでヒロフミの顔を見ていない。
    ナユタはヒロフミの顔を見るも顔色一つ変えずにご飯を口の中に放り込んだ。

    夕食を終えて皿洗いをする。ナユタは犬たちと遊んでおり、ヒロフミが皿を拭いていた。
    「箸、ごめんね」
    「あー、まぁ、気にすんな。安モンだし」
    「本当にごめん」
    「んな箸ひとつ折れたくらいで深刻そうに謝んなよ…じゃあ明日…たい焼き奢って」
    「たい焼き奢って」という部分をナユタに聞こえないようにヒロフミに近寄り小声で囁く。悪戯っぽく笑うデンジが可愛らしくてヒロフミは持っていたお椀を床に落としてしまう。ワレモノではないので良かったがまた洗う羽目になってしまった。
    「ごめん…」
    「さっきから挙動不審だなお前…大丈夫か」
    「大丈夫…うん。大丈夫…おごる…奢るよ…二個…」
    ヒロフミは平静を保つ。デンジに恋をしてからデンジの笑った顔を見ると耳が熱くなるし顔が赤くなってしまう。恋というものは心臓が持たない。いつ襲ってしまおうかヒロフミは気が気でなかった。
    ただ、早川アキの存在が邪魔で仕方がない。キスもしているのだからセックスもしているに違いない。案外早く手を出していそうな男だ。
    デンジの感じている顔や愛らしい顔を知っているん。
    どこが感じやすくて何をされるのが好きか知っている。
    早川アキで染まったデンジの身体を暴きたい。
    デンジとキスしたい。
    デンジを抱きたい。
    滅茶苦茶に壊したい。

    「吉田」
    「…なに」
    「汗かいてる…熱あんのか」
    「暑いだけだよ」

    ヒロフミは口角をあげて笑う。目は笑っていない。



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