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    moricocchi

    @moricocchi

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    moricocchi

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    🍯🎍ワンドロ
    第2回『わがまま』『2人だけの秘密』
    22/09/24 22:00〜23:00
    『わがまま』
    ※みっち不在
    ※🐉視点

    🍯🎍第2回『わがまま』「彼奴の特攻服、俺が仕立てるから」
     来て早々に発せられた声。そうして音を立てて向かいに座った。有無を言わせず物言いに、
    「おー」
     俺はただ相槌を打つだけだった。こうなったら梃子でも動かないことを俺は知っている。
     普段は聞き分けのいい子供のようで、比較的真面目な方であるから学校でもウケがいいらしい。見た目はどう見ても不良だが、他の不良と比べ学業と部活動、両方をこなしてるこいつは優等生だ。下手な一般生徒より評価は高いかもしれない。
     そりゃそうだろう。学校はあくまでこいつのガワしか判断しねぇ。内側で飼ってるデケェモンには気づかない。
     店員を呼び止め注文する三ツ谷を無視し、俺は目の前で湯気を立てるステーキにがぶりついた。学生が気軽にこれるファミレスだ、上等な肉が出てくるわけじゃない。噛み応えのあるそれを俺は難なく噛みちぎった。
     三ツ谷の注文を確認する店員の声が俺の耳に入る。俺はそれを冷めた頭で聞いていた。店員に愛想のいい笑みを向けた三ツ谷は、店員が去ると同時に俺に向き直る。
     あの若い店員のネーちゃんは俺の注文を聞いたのと同じ店員だった。俺とあからさまに態度が違う。三ツ谷はあの店員の御眼鏡に適ったのだろう。相手を挑発するように、誘惑するように発せられた甘い声。どさくさ紛れて手を触ろうとも。それを分かっていただろうに、三ツ谷は笑みを浮かべ対応していた。
     今頃あの店員は、相手も自分に気があると思って浮かれているのではないだろうか。この顔を見ても同じことを思えるのだろうか。何事もなかったように澄ました顔をしている。三ツ谷の頭にはあの店員のことなんて何一つ残っていない。ことを面倒にしたくなかっただけだ。
    「理由は聞かねぇんだ?」
    「聞いたところでお前頑固だろ、変える気ねーじゃん」
     ならするだけ無駄だ。話は終わりだろと、残っていた肉を一口で頬張った。変わらず肉は固い。
     その様子を見ていた三ツ谷は、澄ました顔を少しだけ綻ばせ、肩の力を抜いたように背もたれに寄りかかった。そうして外を見つめる。
     不良にとって特攻服は特別で、今では何十人と膨れ上がった東卍でも三ツ谷が仕立てた特攻服は七着しか存在しない。創設時の特攻服とマイキーが着ている総長の長ラン。
     だから反対されるとでも思っていたのか。したって何だかんだと理由をつけて強行するくせに。する気はねぇけど。
     三ツ谷の中でそうと決まったのならそうであるし、誰がなんと言ったって変わらない。こいつは不良だ。諭されて、はいそうですかと意見を変える良い子ちゃんじゃない。人はそれを無謀だと、我が儘だと言うのだろう。だから何だ。そんな簡単に信念が曲げられるのなら不良などしていない。なっていない。
     三ツ谷はそれを内で飼うタイプだ。己の激情を内で内で押し込んで飼い殺して支配する。彼奴の内側は、誰にも打ち明けていないクソほどデカイ感情で埋め尽くされている。
     そのクソほどデカイ感情が、凝縮されて言葉になった。だから曲げない。曲げるつもりもない。他人が曲げられるはずがない。
     先程と同じ若い店員のネーちゃんが三ツ谷の注文したチョコバナナパフェを持って来た。去り際に小さな紙切れを置いていく。言うまでもない、あの店員の連絡先だろう。それを三ツ谷は同じ笑みを浮かべて対応していた。人の良い笑み。愛想のいい笑み。自分は敵でないと、無害であると主張する。
     何がチョコバナナパフェだ。無害な草食なふりしてお前ェは肉食だバーカ。

     灰皿の上でボロボロになった紙屑が空調の風で揺れた。
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