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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アンドロメダの青い瞳(4)
    転生記憶なしア←記憶ありデ。公安パロ。

    アンドロメダの青い瞳 4アキは屋上で、タバコを咥えていた。
    デンジがあそこまで執着するものを、少しでも知ってみたいと思ったのである。

    「ゲホッゴホッ!まっず…………」

    アキはすぐに咽せ込んだ。
    こんなものの何が良くて、あいつは吸い続けているんだろう?

    涙目になりながら、アキはデンジが見せた柔らかな笑顔を思い出していた。
    きっと、あれが本当のデンジの姿だ。アキは本能的にそう感じとっていた。いつものへらへらした薄い笑みは、本当の姿を隠すためのものなのではないだろうか?
    もしそうならば、何故隠そうとする?

    そこまで考えてアキは、鉄柵に額をこすりつけ、大きな溜息をついた。タバコの火はつけたまま、二本の指で摘んでいる。

    何で、あいつのことが気になるんだろう。
    何で、俺はあいつに苛々するんだろう。
    あいつの、過去が知りたい。
    あいつはいったい、誰を想っている?
    誰があいつに、ピアスやタバコを――そして、生活していく術を、教えたんだ?

    デンジと話す時、アキはいつも、自分じゃない他の誰かを見られている気がしていた。
    それが今になってどうしても、気にかかる。
    そこに、大きなヒントがある気がするのだ。

    「アキ君、こんなとこで何して――――って、タバコ吸ってるぅぅぅー!?」

    背後から、もはや悲鳴に近い声が響いた。アキを探して、姫野が来たのだ。

    「姫野先輩……タバコ、クソまっずいんですけど」
    「やぁっと私のお願い聞いてくれて嬉しいな〜♪って、言いたいところ、だ・け・ど。……どうせ、まぁたデンジ君のこと考えてたんでしょ……?タバコも、彼の真似?」
    「……よくわかりましたね。まあ、そうです」

    アキが認めると、姫野は傷ついた顔を隠すように俯き、これみよがしに盛大な溜息をついた。頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜている。一体どうしたのだろうか?

    「……デンジ君の真似して、ついにタバコまで吸うなんて。私があんだけ勧めても、ずぅっと頷かなかったのに。……で、今度は何考えてたのよぅ?」
    「理由が、わからなくて。……あいつのことばかり考えたり、あいつのことを見てると苛々したりする、理由が……」

    姫野はまたハアーっと、さらに盛大な溜息をついて項垂れた。表情が、もう全く見えない。
    それから突然、心底呆れたような声で吐き捨てるように言った。

    「アキくんさあ。……それ、恋じゃん」
    「…………は?」

    アキは茫然自失となってしまった。動きも思考も、完全に鈍っている。油を差していない古い機械みたいに、ギシギシと首を振った。

    ――…………は?
    恋?恋って、恋愛の?
    これが?

    ………………恋?

    やがて額に手を当てて下を向き、冷や汗をかきだしたアキを横目に、姫野は嘆いた。ごく小さな声で早口に、ぽつりと。

    「はあぁ。嫌だ嫌だ。敵に塩送っちゃった……」

    自分のことでいっぱいいっぱいのアキには、その声はもう届いていなかった。


    ♦︎♢♦︎


    強力な悪魔が現れたとの報告が入ったのは、その翌日のことであった。

    今回は四課と民間で、協力して討伐に当たることが決まった。
    敵の能力が厄介で、既に民間に大きな被害が出ていたのだ。そこで、敵の能力を目撃している民間のデビルハンター数人と協力し、四課が対応に当たることになったのである。
    これから合同で会議を行い、その後すぐに討伐に向かう予定だ。

    アキはデンジをちらりと見た。
    あれから、アキはよくよく考えた。自分の気持ちにまだ整理をつけ終わっていないが、もう確信めいたものはある。
    しかし、今は任務中だ。気を取られないように、完全に気持ちを切り替えなければ。

    と、アキがそう思った時である。
    デンジに軽やかに話しかける者がいた。

    「調子どう?デンジ君」
    「まあ、ぼちぼちかなア〜〜」

    すらりと高い背に、真っ黒な髪を目の上までさらりと流している、美貌の男。そのピアスの数はデンジの比ではなく、年若いが壮絶な色気とオーラに溢れている男だ。
    民間のデビルハンターの一人、吉田という若者。

    彼はデンジの肩に気軽に腕をかけて、ヒソヒソ話を始めた。
    ………………距離が、随分と、近い。

    「ねえ。どうだった?」
    「どうってなンだよ」
    「……早川さん。やっぱり忘れてただろ?……望みないよ。もうそろそろ諦めて、僕と遊びにいかない?」
    「ハア?お前今回もストーカー野郎なわけえ!?絶〜〜っ対やだね!」
    「はい、一万円」
    「いや、それにはもう釣られねーかんな!!」
    「チッ」

    二人のヒソヒソ話は、断片的にしか聞こえない。しかし、ストーカー野郎などという不穏な単語がアキの耳に届いた。
    アキはもうそちらが気になって、仕方がなくなってしまった。何故あんなにも、親密そうなのか。自分から殺気が漏れ出ているのに気がついて、アキは慌てて引っ込めた。
    アキは姫野にそっと近付いて、耳打ちした。

    「あいつ……何者ですか?」
    「民間から助っ人で来た吉田くん。岸辺さんの秘蔵っ子。知ってるでしょ?」
    「いや、それは知ってます。そうじゃなく、その……デンジと、やたら親しくないですか?」
    「友達なんじゃなーい?年も近いし、民間時代に知り合ったとか?」

    友達……?そんな距離感では、ない気がする。
    まさかあいつがデンジに、ピアスやタバコを教えたのだろうか?
    アキの心は、いっぺんに千々に乱れた。

    これは――嫉妬・・だ。

    さすがに、アキにだってわかった。
    アキはもう、認めざるを得なかった。


    間違いなく、自分はデンジを好きなのだと。
    この不可解な感情たちは全て、恋だったのだと。
    この時とうとう降参して、受け入れたのである。


    そうこうしているうちにメンバーが揃い、会議が始まった。
    アキはあれほど乱れていた自分の気持ちを完全に封印し、仕事モードに切り替えていた。伊達に長年、公安のデビルハンターをやっていない。その精神力は、まるで鋼のようであった。

    民間のまとめ役の人物が、本題を切り出す。

    「今回問題になっているのは、夢の悪魔。人に取り憑いては、その者の一番の望みを夢として見せるようです。取り憑かれた者は次第に精神を乗っ取られて、死に至ります」
    「取り憑く……?外側から、討伐することはできないのか?」
    「人へ取り憑くと一時的に悪魔の身体能力が強化され、こちらの攻撃時に分裂増殖するようになります。討伐の難易度が跳ね上がるのです。取り憑かれた人物の、夢への依存度が高いほど、能力がより強化されるようです。敵の増殖から逃げきれないケースが相次いでおり、民間の死亡例が増えています。勿論、取り憑かれること自体のリスクもありますが」
    「なるほど。それでは誰かに取り憑く前に、速やかに討伐するのが一番か」
    「それが最適と考えます。ただし、奴の肉片に少しでも触れれば、一瞬で取り憑かれます。討伐時は、それを警戒する必要があるかと」
    「……一度取り憑かれた者は、死ぬしかないのか?」
    「第三者がその者の夢に入って、夢への依存を断ち切れば、助かるケースがあるようです。しかしその第三者も夢の中に一緒に囚われて、死ぬリスクが大きい。取り憑かれた人間を救うのは、命懸けになります」
    「現実的じゃないな。一度取り憑かれた者の命は、諦めて引くしかないということか」

    話し合いをしながら作戦を決めていく。
    確かに、民間に全て任せるには厄介な案件だ。速攻で片付けられれば良いが、失敗すれば泥沼に陥るだろう。

    会議が終わり、アキ達は現場へ向かう。

    「お前ら、今日は先行すんな」

    いつもは先行させるデンジとパワーに、アキは車を運転しながら声を掛けた。

    「なんでじゃ!!!ワシは血が足りぬ!!!」
    「俺、チェンソーマンになってぶった斬ってやるぜ〜〜!?」

    文句を言う二人に溜息を吐いて、アキは念押しした。

    「話、聞いてなかったのか?相手の肉片に触れれば取り憑かれる。お前らの戦闘スタイルはあまりにもリスキーだ。だから俺が良いというまで、前には出るな」

    バックミラー越しに見る二人は納得がいかなさそうだったが、しぶしぶ頷いた。

    ――それでいい。

    アキは今日、なんだか嫌な予感がしていたのだ。
    二人を守らねばならないような、そんな気がしていた。

    先程気持ちを自覚したばかりの、想い人を見る。デンジは薄ら笑いで軽口を叩きながらも、少し心配そうな目でアキを見ていた。

    ――大丈夫。俺が、必ず守る。

    アキはギュッとハンドルを握り込んだ。真っ直ぐに前を見据える。

    ――この気持ちはいつか、絶対にお前に伝える。今までのことは、何度だって謝ろう。

    アキは、既に決意していた。彼は一度こうと決めたら即行動、絶対に迷わない男であったのだ。

    しかし。
    嫌な予感ほど当たるものだということを、この時のアキは失念していた。


    ♦︎♢♦︎


    浦寂れた、廃ビルの一室。

    床から蠢く、無数の黒く細い手。それらが持ち上げるようにして一本の黒い幹が立っており、その先端には月がついていた。
    月は、悪夢に耐える人間のような形相をしている。

    報告書通りの、夢の悪魔だ。

    「コン」

    アキは、迷いなく狐で速攻をかけた。それを合図に、公安と民間のデビルハンターたちが素早く接敵する。
    喰いきれなかった肉片を、触れないように処理していく。打ち合わせ通り。特に問題は無さそうだ。

    しかしそこで、ごく小さな肉片が突然、弾丸のように飛んだ。
    その方角には――――後ろで待機する、デンジがいた。
    デンジは弾丸と化した肉片に、そのまま脳天をぶち抜かれた。

    「デンジ!!!」

    デンジの周囲から正円を描くように、無数の黒い腕が素早く伸びる。倒れた彼を、蠢く小さな手が掴み上げ、あっという間に磔にしていった。
    デンジはもう、意識を失っている。
    そこからぬるりと、一本の幹が生えた。

    ぐら、り。

    月の顔面が、現れる。それは、奇妙な笑みの形を作っていた。
    アキたちが動かずに警戒していると、悪魔は突然、発狂したように笑い出した。無数の音声と金属音の合成音のような、不快な音が部屋中に反響する。

    「…………はハハ……わはハハハは!!!チェンソーマンダ!!!チェンソーマンにトリツいた!!!こレデ、セカいはわたシノものダ!!!!!」

    アキは自分のミスだと思ったが、どうやらデンジが取り憑かれたのは、たまたまではなさそうだ。敵はデンジのことを知っているらしく、チェンソーマンと連呼している。それに先程飛ばされた肉片は、明らかに彼に狙いを定めたものだった。

    「クソっ!!!」

    アキは舌打ちをする。
    ――どうして。よりによって。どうしてデンジが!

    「にんゲンドもよ、あきラメろ…………そのライんをコエテキたら……………こイツのゆメニとりこまレテ、しんジマうからなア!!!ひはハハハハはは!!!」

    夢の悪魔はデンジの血を飛ばし、自分の前にピッとラインを引いた。ここを超えてくれば死ぬと、こちらを脅しているのだ。
    悪魔はその口端を異様に吊り上げ、興奮し切っていた。

    「ぎゃッはハハハ!!!すごイユめだ!!こんナニツヨくいぞンシテいるユめは、ハジメてだア!!!!」

    狂気の声を上げながら、敵の細い腕は急激にその本数が増えていった。ざわざわとデンジの姿が埋もれて、どんどん見えなくなっていく。

    ――駄目だ。このままでは、デンジが死ぬ!!

    この状態で攻撃すると分裂増殖し、こちらが死ぬリスクが高くなると会議で共有されている。それが分かっている以上、安易に攻撃はできない。仲間の命が掛かっているのだ。
    しかしデンジを見殺しにするという選択肢は、アキにはまずなかった。

    それならば、取れる手段は一つだけだ。
    アキは、会議で言われていた言葉を思い出す。

    "第三者がその者の夢に入って依存を断ち切れば、助かるケースがあるようです"


    「俺が行きます。――デンジを、助けます」


    アキは、一片の迷いもなく言い放った。
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