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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アンドロメダの青い瞳(6)
    転生記憶なしア←記憶ありデ、公安パロ

    アンドロメダの青い瞳 6デンジはゆっくり、意識を浮上させた。

    そこには、アキがいた。
    デンジの手を握って、ベッドのわきに付き添っている。

    「デンジ。目ぇ覚めたか」

    ――ぁあー、こりゃ夢だな。

    デンジは半覚醒状態でぼんやりとしながら、確信した。
    アキがこんなに優しいのは、もう現実ではあり得ないことであるし。

    ついさっきも、とても良い夢を見ていた気がする。
    全部、何もかも思い出したアキが、迎えに来てくれる夢だ。

    目の前のアキが、ポンポンとデンジの頭を撫でた。
    デンジは身体をゆっくりと起こした後、アキの青い瞳を見つめていた。

    「大丈夫か?気分悪いか?」
    「アキ……?」
    「そうだよ」
    「いーい夢だなあ…………」

    デンジがそう言って微笑むと、アキは変な顔になった。何か悲しいことを、必死に堪えるような顔だった。
    デンジは不思議に思って、口を半開きにしてぽかんとする。

    「……じゃねえ」

    アキが、絞り出すように何かを言った。

    「んぁ?」
    「夢じゃねえ。俺だ。全部、思い出した」
    「…………………………は?」

    デンジは一瞬で真顔になり、迷わず両頬を掴み……思い切り、つねった。

    「いっっってエエエェエーーー!!!」
    「馬っ鹿!なんで両方つねる必要があんだよ!!」

    アキは慌ててデンジの頬をさする。その手は確かに温かかった。本当に、夢じゃないらしい。

    「…………うっそだろ?あれ、現実かよ。さっきの夢も?全部……?」
    「そうだ。……デンジ、ごめんな」

    これが現実だとじわじわと理解したデンジは、また目からぼろりと大粒の涙を零した。

    「あ、アキ……アキ…………?」

    その痛々しい様子にアキは眉を顰めた。
    デンジの手を両手で包んで口元に持っていき、そこに口付ける。青い目がまっすぐにデンジを捉えていた。

    「デンジ。『今回』は本当にすまなかった。お前にずっと、辛く当たってたな……。お前を見ると、苛々してたんだ。今なら理由がわかる。多分俺は、ちゃんと思い出せない自分に苛々してたんだ……。ごめん」
    「……ん。そっかあ」

    デンジはすんすんと鼻を啜りながら、頷いた。『今回』のアキには確かに傷つけられたが、彼を責めるつもりなど毛頭なかった。だって、記憶がないアキのことも、デンジはちゃんと好きだったのだから。

    「大丈夫。怒ってねー。俺はさあ……『今回』も、ずっとアキのこと、好きだったし」
    「……そうか。ありがとな。俺も、お前が好きだ……」

    アキは目を細め、静かに笑った。青い目が潤んで、揺蕩っている。
    なんて綺麗なんだろうと、デンジは感動して見つめていた。届かないほど遠くで星が光っている、宇宙みたいだなと――何となく思った。

    「……あとな、デンジ。俺は、すげえ嫉妬してた」
    「ぅあ?しっと?」
    「デンジがタバコ吸ってピアスあけて、そこまで想う誰かに――まあ、俺だな。俺自身に、すげえ嫉妬してたんだ」

    その言葉には、さすがのデンジも驚く。

    「嫉妬ぉ!?ええ〜……?いや。ア、アキ……思い出す前も、俺んこと好きだったのかよお!?」
    「ああ。性懲りも無く」
    「はは……!うっそだろ…………」

    デンジの表情は、そこで一気にやわらいだ。ふにゃりと笑ったデンジを、アキは抱き締める。
    今度は、夢の中じゃない。現実だ。抱き締められた温度も匂いも、全部リアルだった。随分久しぶりなので、デンジはさらに泣いた。そしてアキの目からもとうとう、一筋の涙が零れ落ちた。

    「……デンジ。今度こそだ。俺は今度こそ、お前をちゃんと幸せにしたい。また、一緒に暮らそう」
    「ん……わかった!いーよ!!」

    デンジは思い切り、幸せそうに笑った。アキもつられて、ふわりと笑った。
    二人は惹かれるようにして、静かに口付けた。涙の味がする。角度を変えながら何度か味わって、ゆっくり顔を離す。デンジの頬は、すっかり熱を持っていた。

    「な、なあ。済むのってさあ、パワーも一緒?」
    「勿論。パワーも一緒だ。家族だからな」
    「やった!!」
    「…………まあ。あいつ、記憶ないから。躾が大変そうだな……」

    アキはそこで、ややげっそりした表情を見せた。デンジはそこで声を上げて、けらけらと笑った。

    「大変だぜ〜〜?あいつ野菜投げるし。トイレ流さねーし」
    「風呂にも入らねえだろ?」
    「そう!はははっ!」

    声を上げて、二人で笑う。こんな風に笑ったのは、『今回』で多分、初めてのことであった。


    ♦︎♢♦︎


    アキはすぐに適した物件を探し、手配をした。
    夢の悪魔の討伐から、既に一ヶ月弱が経っている。
    非常に忙しくてあっという間だったが、今日は引っ越しだ。三人分の荷物が、新居に運ばれてきた。

    デンジの荷物は極端に少なく、逆にパワーの荷物は極端に多かった。
    ――一体何を詰めてきたんだ、こいつは。
    アキの額には既に、青筋が浮かんでいた。

    その後の引越し作業は、大騒ぎだった。

    「狭い家じゃのオ〜〜!!!この広い部屋はワシのじゃ!!!寄越せ!!!」
    「お前っ!ここはリビングだっつーの!!」
    「お前ら、走るんじゃねえ!荷物が積んであるんだから危ねえだろ!!」
    「ワシに指図するでない!!人間が!!」
    「アキ!こいつどうにかしてくれよ〜〜!!!」

    全ての荷物を片付けるには、大分時間がかかりそうだ。
    とりあえず最低限のもの――トイレットペーパーや歯ブラシ、寝具などを出して、その日は終わりにした。夕食はコンビニで買ってきて、段ボールをテーブル代わりにして食べる。

    「玉ねぎが入っとる!!!」
    「あっコラお前投げんなっ!!」
    「パワーお前……メシ抜きにされたいか」
    「そ、それは!嫌じゃあ……!!」

    アキが本気で叱ると、パワーはしぶしぶ言うことを聞いた。こいつも、うっすらと前回の記憶があるのかもしれない。いつか思い出すだろうかと、アキは思った。

    まあとりあえず、今はこれで良い。
    久しぶりの、賑やかな食事。アキは、ようやく帰ってきたのだと実感していた。

    ちなみに記憶を取り戻したアキは、すぐにピアスを開けたし、タバコも再開した。どうにも落ち着かなかったのである。
    勿論、デンジにはタバコをやめさせた。未成年なのだから当たり前だ。デンジは、「アキの匂いかげんなら、別に吸わなくていーし」と言っていた。その言葉が健気すぎて、アキはぐっと呻いた。

    その代わりと言ってはなんだが、ピアスは揃いのデザインにした。結婚指輪の代わりと言っても差し支えないくらいの、ちゃんとしたものを購入した。
    一緒に買いに行った時、デンジは嬉しそうにふにゃふにゃと口元を綻ばせていた。可愛かったのでキスしようとしたら、「外だろうがあ!!」と怒られた。

    『今回』のデンジは、『前回』よりも大分しっかりしていると思う。
    アキが亡くなった後に生きた経験や、今回ずっと一人で生活してきた経験があるからだろうか。
    アキがデンジに世話を焼かれたり、叱られたりすることも、多くなっていた。

    そんな違いはあるが、アキは変わらず、デンジのことが好きだった。

    ……いや。
    『今回』の自分が恋し直した分も含めて、前よりもずっと、一層好きになったのだろう。

    こうして、早川家はやっと再結成されたのであった。


    そして――新しい、人生が続いていく。
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