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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    転生ショタア(成長する)×不老不死デ

    黄昏時のタイムラプス 4―04――04―

    デンジはアキの元を立ち去りながら、今までのことを思い返していた。

    デンジとアキは、確かに恋人だった。
    けれどそれは、アキが亡くなる直前の、たった一ヶ月ほどのこと。
    アキに抱かれたのなんて、彼がひどく酔った時の、たった一回だけだ。

    それでもその一ヶ月間は、デンジの人生の中では一際眩しい日々であった。
    アキのことが大好きで、アキが同じだけの想いを返してくれた日々は、奇跡みたいに幸せだったのだ。
    その思い出は、長い人生の中で記憶の中に埋もれていくどころか、時が経つほどに輝きを増していくばかりだった。

    デンジが自分の身体の異常に気がついたのは、そんなアキと、パワーがいなくなってから何年も経った時だった。
    自分の周りの人間には何かしらの変化があり、身長が伸びたり、皺ができたりしていった。そしてある日デンジは鏡を見て気付いたのだ。自分は"全く変わっていない"ということに。
    自分の顔なんかにデンジは興味がなかったので、気がつくのに随分時間がかかってしまったが、さらに数年が経ってその気づきは確信に変わった。

    自分は老いないらしい。
    しかも、自分は死ぬこともできない。

    楽観的なデンジも、その事実にはさすがにショックを受けた。

    ――俺、やっぱもう人間じゃなくなっちまってたんだな。

    その事実は、デンジの心に暗い影を落とした。

    マキマを"食べて"から10年以上の月日が経って、色々なことが変わって行った。
    悪魔の勢力図も随分変わったし、世の中の技術もどんどん発展して行った。
    そしてデンジのそばにいた者たちは、その形は違えど、皆一様に彼の元を去って行った。
    ポチタ。アキ。パワー。レゼ。マキマ。ナユタ。吉田。
    何一つ変わらずそこにいるのは、デンジだけだったのだ。

    デンジはそうして、孤独にまみれていった。
    10年ほど経つうちに、人生にも飽きるようになった。
    美味しい食事をとっても、いくらお金があっても、心が満たされなくなった。馬鹿みたいにモテたいとも、ちやほやされたいとも、別に思わなくなってしまった。
    別れを経験しすぎたデンジからは、次第に"欲"がなくなっていった。それこそが彼の原動力であったのにも関わらず、である。
    彼はもう、人生の底を見た気がしていたのだ。

    デンジはポチタといた頃のような最低限の生活を送って、自堕落に過ごすようになった。
    何もつけない食パンをかじり、薄着をして、ハンモックで寝る。もしもアキが生きていたら、青筋を立てて怒るような生き方だ。
    だって、どんな風に生きたって、どうせ老いることも死ぬこともない。要するにデンジは、投げやりになってしまったのだ。
    時々悪魔を倒しては日銭を稼ぎ、適当に暮らす日々が続いた。

    しかし、そんな時である。
    とある悪魔から、アキの魂が生まれ変わったことを聞いたのだ。
    まあ、その悪魔は、「せっかく生まれてきた大切な者の魂を消してやる」と脅して来たのだが。勿論、ブチ切れたデンジによって滅茶苦茶に切り刻まれた。

    デンジは生まれ変わった『アキ』を探し、かつてアキとともに行った北海道の、彼の故郷へ向かった。
    そこでしばらく過ごして、ようやく見つけたのだ。
    小さな『アキ』が歩いているのを。

    どんなに幼い姿でも、デンジにはそれがアキだとすぐにわかった。
    瞳が、アキのそれと全く同じであったから。
    初めて彼の姿を見た日は、ベッドに蹲って一晩中泣いた。アキが生きている。それだけのことが幸せで、なのに声を掛けられないことが寂しくて、ぐちゃぐちゃの心のまま泣き続けた。

    デンジは今のアキと、直接関わる気はなかった。
    自分は「人間じゃない何か」である。相変わらず、悪魔にも狙われている。家族も無事で平穏に暮らしている今のアキに関われば、彼を不幸にするかもしれないと思ったのだ。
    デンジはただアキが健やかに過ごしてくれれば、それで良かった。近くの森に隠れ潜むように住み、時々遠くから見つめて、アキが無事であることを確認するだけ。それを繰り返して、何年か過ごした。

    しかし、ある日。
    アキがよりにもよって、悪魔に襲われているのに遭遇した。デンジは躊躇なく飛び出して、それを助けた。
    相手は「肉の悪魔」。それなりに強かったため、スマホから『チェンソーマン』の支持者にSOSの信号を送った。何人かの支持者には時折助けを借り、必要最低限の接触をしていた。今回SOSを送ったのは医者。デンジは自分が重傷を負うことを、想定していたのである。

    腕をまるごと切断されながらも何とかアキを守り切り、ぐるりと振り返ったデンジは、そこで初めて今世のアキとはっきり目が合った。
    前のアキと変わらない、その深い海のような目を真正面から見て――デンジは思わず微笑んで、名前を呼んでしまった。
    「アキ」と、その一等大切な名前を。

    アキに大層懐かれてしまったのは、想定外だった。
    デンジの話を「信じる」と断言されて嬉しくて、前世のアキの話をしてしまったことも、今思えば間違っていた。
    早く離れなければと何度も思ったけれど、アキを大好きなデンジにとって、それはとても難しいことだった。

    何故なら――アキは、生まれ変わっても、やっぱりアキだったからだ。

    幼くてもアキは真面目で、頑固で、そして面倒見が良かった。かつてのアキと同じように、何度もデンジを叱ったのだ。デンジは、それがとても嬉しかった。かつてのアキの面影を今のアキに見るたびに、喜びが溢れて、くふふと笑ってしまった。
    笑うのなんて随分久しぶりのことだったのに、アキのそばにいれば当たり前にできてしまったのだ。

    それに――今世の『アキ』のことが、デンジは好きだった。
    アキはまだ幼かったので、デンジのそれは恋愛感情ではなく、家族への親愛に近いものだったけれど。

    幼くて、でもしっかりしていて、可愛いアキ。
    寂しがりで、でも意地っ張りなアキ。

    かつては知らなかったアキの新たな一面を、デンジは見ることができた。その度に、今のアキのことがもっと好きになった。

    幼いアキと共に過ごす時間は、デンジにとって新鮮で、楽しい時間だった。
    二人でココアを飲む時間が何よりも楽しみになり、せっせとココアの粉と牛乳を用意するようになった。
    アキが選んだ物で、殺風景な部屋が賑やかになって行くのを見て、まるでかつての早川家のようだと思った。
    そしてアキの身長に印をつけるたび、まるで家族みたいだなと思った。
    今の『アキ』と新しい習慣や約束事ができるたび、デンジは少しくすぐったくて、穏やかな気持ちになることができたのだ。

    生まれ変わった『アキ』は、何の希望も無くなったデンジの人生に差した光だったのだ。

    だから――アキに「友達」だと言われた時は心底びっくりして、嬉しくて仕方がなくて。多分、照れで真っ赤になってしまっていたと思う。

    だって、デンジの「友達」は、ポチタ以来であったのだから。
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