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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    成長する転生ア(記憶なし)×不老不死デ

    黄昏時のタイムラプス 6―06――06―

    光を失ったデンジの生活は、元通りに戻るどころか、前よりももっと真っ暗闇になった。

    デンジはもう、何かを食べることすら億劫になった。飲まず食わずを敢えて続けて飢えて死んだこともあったが、『チェンソーマン』の支持者たちに血を飲まされ、また生き返らされた。
    『チェンソーマン』の支持者には、デンジの意思を尊重してくれる者もいれば、その意思を無視して生かし続けようとする熱狂的な者もいる。
    そうして強い悪魔を狩らされた。
    デンジは緩やかに自殺することも、許されない。

    毎日が楽しけりゃいい、飯を食って眠れればそれだけで最高と思えていた頃が、懐かしい。
    アキやパワーが死んでも"泣けない"なんて、思っていたっけ。もうずっと遠い、昔のことのようだ。

    デンジはあの頃、何も"知らなかった"だけだ。
    与えられ、与える喜びも。誰かと寄り添う幸福も。人を心から愛することも。

    不老不死になった今は、もしもあの頃のマインドに戻れたら楽だろうなと思うことはある。
    それでもデンジは、前世も今世も含めたアキとの思い出を忘れたくはなかった。それは鋭い痛みとなってもなお、何よりも大切なものだったから。

    月日は勝手に過ぎる。もう数えるのも億劫だ。
    不意にカレンダーを見れば、アキの元を去ってから、すでに5年が経っていた。
    アキは今頃、21歳だ。前世でデンジと出会った時と、同じ歳になっているはずである。

    ――きっと滅茶苦茶、格好良くなってんだろうな。
    タバコ、吸ってんのかな。ゲロ女がいねぇから、吸ってねえか。ピアスも、開けてねぇかもな。

    ――会いてぇなぁ。
    一目でもいいから、遠目でもいいから。もしもその姿を見られたら、もう死にたいなあ、とデンジは思った。

    デンジはもう捨て鉢だった。
    ポチタがいる大切な心臓なのに、生き続けることがもう辛かった。

    ――ごめんな、ポチタ。でも、俺の夢はさあ。多分もうとっくに、叶ったんだ。だから、許してくれ。

    デンジは敢えて強すぎる悪魔を選び、単身で挑むようになった。
    日々身体は傷だらけになり、弱っていく。血を飲んでも飲んでも、精神の衰弱は免れない。

    そうしてデンジは、とうとう最悪の悪魔に挑んでしまった。

    『鏡の悪魔』。

    デンジはやぶれかぶれであったので、支持者から悪魔の能力の詳細も聞かずに、単身で突っ込んでしまったのだ。

    廃墟となった病院の屋上に、それはいた。

    歪に繋がりあった何面もの鏡。多数の白い触手が、それを支えている。上部にもがき苦しむ人間のような顔が、三つついていた。反響する電子音のような声が、響き渡っている。

    悪魔の見た目は大概気味が悪い。だからそんな奇妙な見た目でも、今更恐怖なんて感じないはずだった。
    しかしデンジはいざ相対してみて、身が凍りつくような恐怖を感じた。本能的な勘から来る、恐怖である。

    ――やべえ。これはやべえ。

    そう思った時にはもう、遅かった。
    デンジは預かり知らぬことであったが、その悪魔の能力は、『その者の一番恐ろしいと思う光景を映し出し、追体験させる』というものだった。


    果たしてデンジの前に現れたのは――銃の魔人になった、アキだった。

    アキ。
    どうして。
    アキ!!

    デンジの身体は勝手に動き出す。あの日の景色が現実のように、再生されていく。

    デンジの心は完全に囚われてしまった。もう、これが悪魔の能力だなんてことは完全に忘れ去っている。そのくらい、何もかもがあの日のままだった。

    ――戻れ戻れ戻れ。
    ――アキに戻れ!!

    止まらないアキ。
    笑いながら人を傷つけるアキ。
    パワーとデンジを傷つけるアキ。

    そしてアキを傷つける――自分。
    アキを殺す、自分。

    「あ…………あ……………………」

    アキのはらわたを、引き裂いた感触。
    身体にかかる、アキの重み。
    むせ返るような、生温い血の匂い。
    急速に失われていく、アキの体温。

    身体中を、だくだくと冷や汗が伝う。
    血まみれのデンジは、絶望で涙も出ない。
    アキが死んだのに、自分の心臓だけが激しく脈打っている。

    「あ……………………!!」

    もう嫌だ!
    もう、嫌だ――――――――



    「コン」



    その時、向こう側から声がした。

    パリン!!!

    鏡が勢いよく、割れる音がする。
    最悪の光景は、一瞬にして消え去った。
    まるで悪夢から目覚めさせてもらった、あの日のように。


    「デンジ。迎えに来た」


    まるであの日のように、青い海の瞳がゆらめいていた。

    鏡が割れた先にいたのは、21歳になった――かつての姿そのままの、アキであった。
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