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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    転生アキデン6話。記憶あり🍁が記憶なし🪚をキスで攻めて落とす話。

    初恋アザミにキスをする 6アキは薄暗い部屋で一人、絶望してソファに座り込んでいた。

    自分が好きなのは、『前世のデンジ』なのだろうか?

    すぐに否定することは、できなかった。だってデンジは、生まれ変わっても前世と全然変わりなかったから。
    デンジは相変わらず――底抜けに馬鹿で、純粋で、可哀想で、可愛かった。だからアキはこれまで、二人を分けて考えたことすらなかったのだ。


    前世でデンジを好きになったのは、アキの料理を眺める姿を見たせいだった。
    キラキラした茜色の瞳で見つめながら、「魔法みてぇだな」と言われたことがきっかけだ。

    なんて純粋なんだろうと、アキは衝撃を受けた。デンジが心の底から感嘆しているのが、伝わってきたからである。こいつは自分が守ってやらなきゃいけない存在なんだと、その時アキは思った。
    次第にデンジを目で追うようになり、その純粋さに何度も触れるようになった。デンジを守ってやりたいと思った初めの気持ちは、徐々に変化していった。穏やかだったその気持ちは、最終的に――デンジを自分だけのものにしたいという、強い独占欲に変わってしまったのである。

    恋なんて、一度落ちたら深みに嵌るのはあっという間だ。だがアキは、それを知らなかった。
    自分の寿命や死についてアキは軽く考えていたし、復讐の機会が減ってしまう程度にしか思っていなかった。恋を知るまで、アキはまさに怖いもの知らずであったのだ。

    アキが落ちた深い恋は、間違いなく彼の人生で一番の"未練"になるものだった。

    だから、アキはデンジに想いを伝えた。それは彼が死ぬ、まさに直前。確か、一週間前くらいのことであったと思う。
    その時既に、アキは決意していた。デンジとパワーの幸せのためなら、自分の何を犠牲にしても良いと。
    自分がいつ死ぬかもわからなかったので、アキは未練を残したくないと考えた。死ぬその瞬間に、少しも迷いたくない。そのために、潔く、こっ酷く振られてしまいたかったのである。

    だからデンジが予想外の反応をしてきた時、アキは激しく動揺した。
    簡潔に「好きだ」と言ったら、デンジは顔を真っ赤にして、俯いてしまったのだ。
    アキは驚愕していた。お前はマキマさんが好きなんじゃないのかと。面の良い女が好きなんじゃないのかと。
    そんな風に驚愕に固まるアキを見たデンジは、頬を赤く染めたまま、ふにゃっと笑って言った。

    「俺も……アキのこと好き」

    アキはとうとう我慢できなくなって、デンジを引き寄せてキスをしてしまった。
    そのまま何度も何度も、キスをした。まるで、自分の未練を打ち消すかのように。
    そうしたらデンジは、泣き笑いながら言ったのだ。

    「ずっと、こうしててぇなぁ……」

    長らくどうでも良いと思っていた"自分の死"を、怖いと思ったのは――恐らくそれが、初めてだった。

    アキはもう、まさに死ぬその瞬間まで――その時のデンジの表情が目に焼き付いて、離れなくなってしまったのである。


    そのようにして。
    結局前世で大きな後悔を残したアキは、この世界に生まれ変わった。十歳の頃から徐々に記憶を取り戻したアキは、デンジへの拗れた恋心もまた、同時に思い出していった。
    アキは、デンジもまたこの世界に転生しているはずだと信じて疑わず、ひたすらに探し始めた。彼はひどく誠実であると同時に、不器用で意志の強すぎる男でもあったのだ。

    アキはデンジがいるかどうかもわからないうちから、既に心に決めていた。
    今世では彼を絶対に手に入れて、最期まで一緒に生きるいうことを。

    料理と歌の動画を投稿し始めたのは、それが生まれ変わったデンジの目に止まるかもしれないと思ったからだ。動画の投稿なら、まだ十代で若いアキにも可能だった。
    デンジはアキが料理するのを見つめるのが好きだったから、動画を見たらアキに気づいてくれるかもしれないと思った。歌を投稿したのも、そのためだ。前世でデンジとパワーにねだられて一度カラオケに行った時、「アキの歌上手いなあ。なんかずっと聴いててぇ」と言われ、何度も歌わされたことがあったのだ。
    まあ結果論として、デンジは動画に気づかなかったというか、気づきようがなかったのだが。何と彼はこのネット社会において、インターネットに触れることもできないほどの劣悪な環境にいたのだから。
    料理と歌の投稿はどちらも再生数を稼いだため、現在のアキの職業を決めるきっかけとなった。他にも試行錯誤したことは幾つもあったが、長くなるので割愛する。ともかくアキは、デンジの目に止まりそうなことを片っ端から、全部やってみていたのである。

    結局デンジを発見するに至ったのは、探偵にしつこく捜索してもらったからだった。
    ただ、発見までは相当な時間を要してしまった。彼は幼い時からホームレスであり、住民票すらなかったのだ。父親が蒸発したという記録しか、手掛かりがなかったのである。

    探偵から連絡を受けたアキが車を飛ばして発見した時、デンジは高架下で犬を抱き締めて眠っていた。
    粗大ゴミに埋もれるようにして眠る彼の外見は、前世とほとんど変わりがなかったが、アキの記憶よりも痩せていて顔色が悪かった。それはあまりにも、悲哀に満ちた姿だった。
    アキはしゃがみ込んでその薄汚れた頭を撫で、一人静かに涙を零した。

    だからアキは、再度心に決めた。デンジをすぐに保護することを。美味しい食事と安心できる寝床を、十分に与えることを。そして前世、初めに辛く当たった分も、決して怒らずに何でも教えてやることを。

    前世で出会った頃の自分の態度や暴力は、アキの大きな後悔の一つであった。デンジの事情を詳しく知るにつれ、それは深く刺さっていく棘のようにアキの心に襲いかかった。デンジは考えなしのチンピラなんかではなく、劣悪な環境で生き抜いて来た純粋な子供であった。頭のネジは確かに外れていたが、そこに悪意なんてなかった。彼はただ、何も知らずに育っただけだった。


    今世で保護したデンジは、最初毛を逆立てる猫のように警戒していたものの、簡単にアキに懐いた。そのあまりの純粋さとチョロさに、アキは心配になって眩暈がしたほどだ。
    目を輝かせてアキの料理工程を見つめ、出来上がった食事を世界一美味しいものみたいに頬張る姿は、もう、破茶滅茶に可愛かった。

    このようにして、アキは容易く二度目の恋に落ちてしまった。

    前世の記憶がないことは、気にならなかった。むしろあの辛い記憶を思い出さないでほしいと、願っていたほどだ。前世でデンジを最も傷つけたのは自分だという自責の念が、アキにはあった。

    二人の生活は順調だった。
    アキがちゃんと教えれば、デンジは何だって吸収した。口と育ちが悪いので多少の文句を言ったりはするが、根が素直なのである。頭の回転だって悪くないし、要領も良い。アキはデンジに何でも教えてやるのが楽しくて、それに夢中になった。
    前世でもこんな風に、何だって教えてやれば良かったなと、時折後悔することもあった。しかし、今世でデンジに与えられるものがたくさんあるのだと知り、アキの心は救われた。

    ポチタはまさしく『前世のポチタ』の生まれ変わりであるとアキは確信していたので、とても丁重に扱った。それに何より、デンジの大切にしているものを、アキだって大切にしたかったのだ。まあ、途中から単純にポチタが可愛くて仕方がなくなってしまったのだが。アキがポチタをあんまり甘やかすので、デンジが愚痴ることもあった。

    「アキよぉ、ポチタのこと甘やかしすぎだろ!」

    そう言ってちょっと怒った顔をするデンジは、やっぱり可愛かった。だって彼は――多分、焼き餅を焼いていたのだから。
    デンジは無自覚だったようだが、アキにはちゃんとわかっていた。デンジがアキに対して、好意を持っていることが。

    だが、次第にアキは焦り始めた。

    ――このままだと俺は、いつまで経っても保護者枠だ。好きだと自覚してもらえないんじゃないか。

    あの"キス事件"が起きたのは、ちょうどそんな悩みを抱えていた頃であった。
    生まれ変わっても好きな相手に「キスうめえの?」なんて聞かれてドキリとしたのもあるし、あまりに無自覚なデンジに苛々したのもある。だって――女と付き合ってセックスしてえ、なんて、呑気に言ってきたので。それを一瞬想像した時は、相当怖い顔をしていた自信がある。デンジを好きになるまでは知らなかったが、アキの独占欲や執着心は人一倍強かったのだ。

    思わず「教えてやろうか?」と言った次の瞬間には、もうキスしてしまっていた。ポカンと開けられたその口ごと、食べるように。前世ぶりのデンジの唇は、直前に二人で食べたチョコレートとコーヒーの、ほろ苦い味がした。

    もちろん最初は、ここまでエスカレートするつもりなんてなかった。少しは意識してくれよ、という願いを込めた程度のものだったのだ。
    しかし、アキとて人間である。デンジより年上の大人だとはいえ、まだ二十歳を超えたばかりの若造なのだ。好きで仕方のない相手に毎日キスをしていたら、たがなんて簡単に外れていった。
    デンジは快楽に弱く、しかも教えに対して素直だった。アキのキスで蕩けながら、一生懸命その教えを実行しようとする姿は……あまりにも、いじらしかった。

    しかもデンジは、とうとうキスだけで達してしまったのである。欲情するなと言う方が、無理な話であった。その姿があまりに煽情的だったので、アキの心臓はもう、大暴れしていた。あの時よくキスだけで止まれたものだと、今でも奇跡のように思う。アキは己の中に制御しきれないほどの興奮が渦巻くのを感じながら、何とか頭をさらりと撫でて、デンジを突き放したのである。

    アキは自分の情欲がどんどん煽られ、歯止めが効かなくなっている自覚があった。このままでは超えてはならないラインを超えてしまうとも、本当はわかっていた。しかし、止まることができなかったのだ。

    今日、可愛い女の子にキスされているデンジを見て――自分よりずっと似合いの相手にキスされているデンジを見て、アキは明確にそのラインを超えてしまった。
    アキはもう、身体が震えるほどの嫉妬と怒りでいっぱいになっていた。

    ――お前が俺から離れるって言うなら。
    もう俺以外では、満足できなくさせてやる。

    アキは仄暗い感情のまま、デンジを蹂躙した。
    今思えば、甚だ見当違いな感情だ。だってアキは、デンジとはまだ恋人でも何でもないし、自分の気持ちを打ち明けてすらいなかった。
    アキがそのことに気づいたのは、全てを間違ってしまった後のことである。

    「アキは、俺を『前世の俺』の代わりにしてんだろ!?浮気してんのは、アキのほうだろ……!!」

    デンジにそう言われて、ハッとした。

    ――俺は、『今』のデンジをどれだけ見てやっていた……?

    自分が『前世』を覚えていることがデンジを悲しませているなんて、アキは知らなかった。
    デンジが前世と全然変わらなかったから、きっとアキは甘えていたのだ。

    ――俺は『今』のデンジの心を、ちゃんと知ろうとしてなかったんじゃないか?
    それなのに、勝手なことばかりしていた……。

    そう思った瞬間アキはもう、自分への嫌悪感で吐き気を覚えていた。

    ――俺は酷い大人だ。
    こいつの心を、わかろうともしねえで。
    目の前に快楽の餌ぶら下げて釣って、こいつの未来を奪おうとした。

    ――前世、デンジを置いていったくせに!
    デンジに、自分を殺させたくせに!

    ――今世はデンジだって、前よりずっと自由に生きられるのに!!

    「アキはいくらでも、『前世』に拘ってろよ。そんで、今の俺を巻き込むんじゃねえ。…………じゃーな」

    そう言い残して去っていくデンジを、アキは追いかけることができなかった。
    彼はもう、自分への絶望で、いっぱいになっていたのである。
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