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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    元セフレのアキデン転生パロ8話。
    9巻の描写あり。
    今回は全年齢。

    One Day 8================
    一九九△年九月×日

    (日記はここで途切れている)

    ================


    銃の魔人はずっと、笑っていた。

    デンジはそれを殺した。
    それはアキだったのに。
    でもアキのためだった。
    ああそんなの言い訳にならない。
    いつだって現実が一番残酷だ。
    よく知ってたよもう知りたくなかった。
    ああ何も考えたくない。

    アキから、温度が失われていく。
    いのちが、失われていく。

    自身にどっとかかる重みだけを受け止めながら、デンジはうつろな目で空を見つめていた。
    晩夏の空は晴れ渡り、まるでアキの瞳みたいな美しい色をしている。
    地には血みどろの現実が広がっているのが、皮肉だと思った。

    アキの亡骸を何度抱き締めても、それはもう冷たかった。
    デンジは涙も零せない。
    ただ震える声で言った。
    もう誰も聞いていないのに。

    「アキ…アキ。戻ってこいよ。酷くされても、全然平気だよ。なあ……すきになってくれなくていいよ……。優しくしてくれなくていいよ……。」

    返事はない。
    わかっている。
    『アキ』はいなくなってしまったのだ。

    「アキ………………すきだよ。」

    ほろりと零れ落ちた言葉に、デンジは目を見開いた。
    そうだ、せめて――――好きだと言いたかった。
    言えばよかった。
    好きだって、アキに言えば良かった。

    アキに触れたい。
    アキに触れられたい。

    アキ。


    「アキ……!!」


    がばりとデンジは起き上がった。
    背中にはびっしょりと汗をかいている。
    夢。
    夢だ。
    頻繁に見る夢。

    ぺたぺたとベッドを触った。
    ここがどこか確認する。
    ナユタはいない。
    ここは今の家。
    ここは――アキの家。
    今は二〇二×年。
    ここは、生まれ変わったアキの家だ。

    「ハァッ…………ハァッ……」

    片手で顔を覆う。指の隙間から、ぼたぼたと水滴が零れた。涙なのか汗なのか、それすらもわからない。


    ヴヴヴヴヴ!ヴヴヴヴヴ!


    突然鳴り響いたバイブ音に、デンジはびくんと身体を震わせた。あの夢を見た直後は、いつだって気が動転しているのだ。
    音の方を恐々と見れば、アキに買い与えられたスマホがテーブルの上で振動していた。いつもは滅多に音を鳴らさないそれ。

    そっとスマホの画面をタップすると、知らない番号が表示された。なんだか嫌な予感がする。デンジは冷たい汗が背中に流れ落ちるのを感じながら、電話を取った。

    「……もし、もし?」
    「あっ!もしもし!?ええと……デンジ君、でいいのかな?早川の家に住んでるっていう……」
    「あ、ハイ、そうだけど」

    全く知らない男の切羽詰まったような声。その声が確かに『早川』と言ったので、デンジは耳をそば立てた。

    「あの、アキに何かあった…?」
    「そうなんだよ!早川が君の番号を、緊急連絡先にしていたから……」

    男は一度言葉を切ってから、デンジを震撼させる言葉を伝えてきた。

    「早川が、交通事故に遭ったんだ」


    ♦︎♢♦︎


    デンジは駆けた。

    アキから緊急用にといつも持たされている一万円札を握りしめて、タクシーに乗り込んだ。電話口で聞いた病院の住所を何とか運転手に伝え、震える手を握り込んで身体を小さくする。

    「アキ……。アキ……!」

    電話の男によれば、アキの容態は詳しくわからないとのことだった。それでも緊急の電話が流れてきたくらいだ、大きな事故には違いない。

    もし、またアキがいなくなったら。
    きっともうデンジは生きていけない。

    「アキ…………」

    こんな時なのに何故だろう。
    今回のアキの、やわらかな表情ばかり思い出す。

    ――今度こそ、好きだって言えば良かった。
    前にもこれで後悔したのに、どうして今になって思い出すんだよ。
    日記に書かなかったから、忘れてたんだ。
    俺はやっぱ最低の馬鹿だ。

    ――アキ、無事でいてくれよ。
    なあ、俺のことすきになってほしい。
    もっと優しくされたいんだ。
    アキの恋人になりたいんだ。

    目からははらはらと涙が零れ落ちた。デンジがやっと流せるようになった涙。アキのお陰で、また流せるようになった涙だ。

    ――アキにまた触れたい。
    ――アキにまた触れて欲しいよ。

    祈るように手をきつく握りしめて耐えていると、間もなくタクシーは到着した。
    運転手にお金を押し付けて、デンジは一も二もなく駆け出す。
    身元を伝えて、案内された番号の部屋に向かった。

    アキはまだ死んでいない。
    手術中でもなかった。
    その事実に心底ほっとしたけれど、アキの姿をこの目で確認するまでは安心できない。
    ごうごうと音を立てる心臓をぎゅっと押さえながら、デンジはエレベーターに揺られた。今世はここにポチタもいない。アキがいなくなったら、デンジはほんとうの独りぼっちなのだ。


    「――――アキ!!」


    そうして勢いよく開けた病室の中に、デンジは晩夏の美しい青色を見つけた。
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