番犬たちの夜 いつもは踊るほど騒がしい会議が行われているこの部屋も、時計の針がてっぺんを過ぎればすっかり静かなものだった。あるのは、冷房が吐き出す風の音と、モニターが時折鳴らす軽快な電子音。そして、すよすよ安らかに眠る寝息がひとつ。
そんな静かな空間に、ぱしゃり、とシャッター音が鳴った。
「烈風刀が起きちまうぞ」
「こんぐらいじゃ起きねーって」
普段の声量からは信じられない、かすれかけた密やかな声で雷刀はそう言う。
烈風刀は机に突っ伏して眠っていた。門――ヴァリアントゲートの調査が一段落したと思えば、今度は夏のアップデートの準備が始まっている。それなりに忙しいのだろう。低めに設定された冷房に「少し寒くないですか」と言ってブランケットを取り出し羽織るように肩にかけたら、そのままあっという間に眠ってしまった。もうすぐ四時になるのだから、仕方のないことだろう。
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