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    るすぱる自陣前日譚SS
    ネタバレなし

    雨冷「照君。僕が思うに─この事件のトリックには天候が関わっているんじゃないか?」
    そんな雨冷探偵の思い付きによる一言から、雨の日を狙ってトリック再現をしてみようという話になった。結局その思い付きは案の定見事に外れていたわけだが、それに付き合って雨晒しになった助手はその代償として見事に風邪を引いてしまったのだった。
    そのような経緯で現在駒津は毛布にくるまった状態で事務所のソファに座っている。そして、横に座っている雨冷から木製のスプーンを口元に突き付けられていた。
    「さぁ大丈夫。変なものは入っていないから安心してこれを食べてくれ。」
    笑顔で粥を差し出している雨冷に
    (不穏な事言ってるこの人…)
    と思いつつも、口には出さずに粥を啜る。そして次の瞬間には噎せた。本当に変なものとやらが入っていなかったかどうかは謎だが、少なくとも駒津自身あまり嚥下が得意ではないので恐らくそのせいであろう。
    「大丈夫かい?」
    横で背中をさすっていた雨冷は徐に立ち上がると、小さめのペットボトルを持って戻ってきた。
    「ほらこれを飲んで。遠慮する必要はないさ」
    肩を引き寄せて飲ませようとする雨冷を制し、駒津は水の入ったペットボトルを掴む。
    「いやそれは大丈夫です…」
    「おや。そうかい?」
    雨冷は特に抵抗はせずに水を受け渡した。しかし自力で飲もうとした矢先、水を盛大に拭き零した上、気管に入ったらしく咳き込んだ。
    「やぁ。あまり大丈夫には見えないな。」
    服に零れた部分と口元をタオルで拭いてやってから、濡れたタオルを洗濯籠へ放り込む。その中には先程まで着ていたずぶ濡れの上着も入っていた。
    「照君…きみ思ったより弱いんだな。」
    戻ってきた雨冷は助手を見つめてそんな風に零した。その感想に駒津は少し驚いて目を丸くしたものの、特に何か言及することはなかった。

    「あとは他に何か欲しいものは無いかい?」
    「そうですね…取り敢えずもう眠りたいです」
    普段あまり風邪を引かない分、珍しく熱を出している状態の振り幅に戸惑っていた駒津はそろそろ限界を迎えていた。
    「なるほど。」
    それを聞くと、雨冷は毛布をかき寄せて駒津を包み、自分の方へ引き寄せる。弱っている駒津は大人しく体重を預けた。
    「さぁ、おやすみ照君。」
    そう言っておきながら、静かに寝かせる気の無さそうな子守歌を口ずさむ。
    探偵的にも多少の罪悪感はあったのだろう、以降助手に無理をさせるようなことはしなくなった。本来多少身体が丈夫な彼が看病される羽目になったのは後にも先にもこれきりなのであった。
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