デパストハルシオン まぶたを持ち上げると、目の前に見覚えのないカーテンがあった。
泣き出す寸前の空のようなくすんだグレー。わたしの部屋のカーテンじゃない。この色は、わたしの趣味じゃない。ここはどこ?
かすかに消毒薬の匂いがする。わたしはこの匂いを知っている。つんと鼻をつく薬品の匂い。この匂いは、ここは――保健室?
どうやらわたしは保健室のベッドで眠っていたみたいだ。どれくらいの時間眠っていたのかは分からないけれど、熟睡した後のように頭がすっきりしている。すっきりしているわりに、どうも記憶が曖昧だ。
寝返りを打とうとして、身体を動かせないことに気がついた。何かに拘束されている。わたしを拘束しているのは、誰かの――腕?
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