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    senkokusosaku

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    senkokusosaku

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    日常と爆弾

    とある柑橘類の創作を小説化しました
    恐らく長くなるので、シリーズということに
    解釈違い等あれば切腹してきます
    適宜修正入るかもしれません

    日常と爆弾 第一話 私の生まれたこの山は、とっても広かった
    小さい頃は知らない場所や、行ってはいけない場所もたくさんあって、知らない所もたくさんあった
    他の種族よりも私達の種族は生きられる時間が長いってパパが言ってた
    いくら時間があるからって、おっきくなってもこの山のぜーんぶは知れないと思ってた
    のに、そんな事はなかった。

    大きくなって、リーダー……パパの3番目のおにいちゃんから、山を見回って変なところがあれば知らせるって仕事をもらった
    この仕事のお陰で、私は山のどこでも行けるようになった
    最初は見た事ない物ばっかりで楽しかった
    ……いつの間にか、全部知っちゃって、つまらなくなった

    _____

    『ねぇ!2番目におっきい木の川の』
    『おひるね出来る原っぱでしょ』
    『ん〜……じゃあ、向こうの川の奥の、おひさまのほうの』
    『おいしいあかい実のところでしょ』

    二匹の兄弟猫はのんびりと、暮らしている小さな草原の日当たりの良い場所でくつろぎながら話していた
    姉の猫はその日見たものを全て、弟の猫に伝えていたのだ
    美しい場所、楽しそうな場所、不思議な場所……
    その全てを共有した
    そう、全て共有しきってしまったのだ

    『もうあたらしいところなんてないでしょ』
    『う……ぅぅ………』

    弟猫が自由に縄張りから出られない分、彼女はたくさんの話をしていた
    しかし、彼女が行ける範囲は限りがある
    全て伝え尽くしてしまったようで、ここ最近は弟猫も飽きてきたようだ
    『一々色々言ってこなくていいから。それに、頼んでもないし』
    『いーーーや!まだあるね!!絶対に見つけてくるから!』
    『………まぁ、頑張れ』
    はぁ、とわかりやすくため息をついたように見せたのだが、効果はなし
    ふんすふんすと鼻を鳴らし、絶対に見返してやるからなと言うような目をしていた
    (……そのやる気、ぜったい別に使いどころあるよ)
    軽やかに草むらに入り、ガサゴソという音は遠ざかっていった

    ____

    (とは言ったけど………)
    絶対!!と啖呵を切ったものの、当然当てはない
    いつもの悪い癖とは思いつつも、どうしても見栄を張ってしまう
    (ぜっっったいびっくりさせるんだから!)
    結局、よく考えず、彼女は文字通り野山を駆け巡る

    いつも通りの原っぱ
    いつも通りの大木
    いつも通りの果実
    いつも通りの場所………

    そうやって日がてっぺんから少し傾いた頃、ふと歩を止めた
    (あっ……こっから先って)
    生い茂る草むらの先の方を見つめる
    この前進んでしまうと、行ってはいけないと言われている地域に入り込んでしまう
    なぜ行ってはいけないのか、詳しくは聞いていないが、大方人間の気配があるからだろう
    どういうわけか、決して人間に関わってはいけないという、群れの掟があるのだ
    だから、彼女は人間を見た事がない
    彼女どころか、弟猫も、父も母も見た事はないだろう

    (でも、行った事ないのこっからさきぐらいしかないし……….ちょっとならバレないでしょ!)

    そうして、未知の地域に踏み込んでしまった



    カサカサと進んでいくと、原っぱでもないのに視界が開けた
    (地面、硬い?)
    まるで大型の動物が通った後の道のようだ
    肉球でふみふみと地面踏みつける
    (あっちに続いてる?)
    辺りを警戒しつつも、先へ先へと進んでいく
    この時点で、弟猫に新しい話を!!というよりも、好奇心に誘われて少しずつ進んでいく
    (見た事ない!これはなんだなんだ?)
    果物や何かの草、そして、先の方に見えるのは開けた土地
    ガサゴソと近くの草むらの中に入り込みズンズン進む
    (面白い気がする!楽しい!)

    その時、突然草むらがひとりでに避けた

    「       」
    (………え?)

    目の前にいたのは、熊のように大きいが、毛のない存在
    これは……この生き物は……?

    (…なに、これ)
    「    」
    何か鳴き声?のようなものを発してるが、何かはわからない
    するとこちらに、前足のようなものを伸ばしてきた為、サッと避けて威嚇
    怯えるか、危害を加えてくるのかなどかんがえていたが、あっけなくその生き物は何処かへ去っていった

    (…………もしかして、さっきのが、ニンゲン…?)
    さっきまでの恐れはどこへやら、今はただただ興味があった
    他の仲間達含めて皆が見たことのない人間
    どんな感じなのか、どんな生活をしてるのか、そして、あわよくば……人間と仲良くなってみたい。
    そんなことができたら、弟猫もびっくりするのでは!?などと、いろんなことを小さな頭で想像する

    思考を巡らせた結果、こそこそと後からつけていく
    流石に姿を見られるまでいくのは嫌だった為、草むらを渡り歩いているうちに、視界に入ってきたものに驚いた
    (ニンゲンって……こんないっぱいいるの!?)
    かなり広々と開けた場所に、いろんな人間がいた

    人の言葉でいうなら、ここは山中にある、小さな里だった

    (あれなにしてんだろ、てかさっきのは?)
    そう思いながら、身を隠し移動し、いろんなものが目に入ってくる
    新しい発見と、見つかってしまわないかのドキドキでいっぱいだった
    (あっ、さっきの)
    その人間は、少し外れの方へと向かっている
    草むらやら何やらを通り、変わらず身を隠しながら進んでいく

    (おっきい…….これ、ニンゲンのすみか、かな)

    ゆっくりと近づいていき、こっそりと中を覗く
    知らないものがたくさんで、思わず見惚れてしまった
    「おや、ついてきたのかい」
    びくり、と驚き音のした方を見れば、先ほどの人間が彼女を見下ろしていた

    ……なんと言ってるか、彼女には何も分からないが

    「随分細い猫やねぇ、ちょっと待っといで」
    彼女が呆然としているうちに、その人間はすみかに入り、手に何かを持って戻ってくる
    「ほれ、これを食べなさい」
    (………なにこれ、良い匂い)
    目の前に置かれ、少し怪しいと思ったが、彼女の敏感な鼻は異常を感じなかった為、そのまま噛みついた
    (えっ!?美味しい!!!)
    ハグハグとそのまま噛みつき食していく
    夢中になっているうちに、人間の前足が彼女の背中に触れた
    『っ!?何すんの!!!』
    バッと身を翻し、威嚇する
    「おや、驚かせてしまったかい。すまないねぇ」
    よくみてみると、殺意などを全く感じないと思い、そっと威嚇をやめる
    悪い事はしようとしてなかったのかと思い、そのままじっとしていると、また背中に触れられた
    『……なんか、きもちい』
    きがついたら、ゴロゴロと喉を鳴らしていた



    その日から、何度も何度もこの場所に訪れるようになった
    ここにきている事は、怒られそうだし、という事で誰にも言っていない
    段々と分かってきたのは、人間はかなりの人数いる事、彼ら以外の生き物はあまりいない事、そして、美味しいものがたくさんある事、この人間はメスだという事
    鳴き声の意味はよくわからないが、自分を『ネコ』と呼んでいることはわかった
    サッと人間がいる前に現れると、いつであろうと食べ物を分けてくれる為、彼女は酷く気に入っていた

    『おまえ、いいやつだな!』
    「このエサ好きねぇ、たーんとお食べ」

    そんな中、不思議なことがある
    他の人間が来た時、その人間は彼女を隠すのだ
    どういうわけかわからないが、まぁ、食べ物もくれるしどうでも良いか、と思うことにしている
    (いつか、あいつも連れてきてやろ)


    そんなある日、いつも通り抜け道を通り、すみかへ向かったときのことだ

    「ネコ      」
    「     」
    「           」

    あの人間以外の鳴き声が聞こえ、恐る恐る身を隠しながら様子を伺うと、いつもの人間と、違う人間が争っているような雰囲気だった
    (なにしてるんだろ、早くどっか行かないかな)
    少しすると、別の人間が軽くその人間を突き飛ばした
    (っ!)
    「       !」
    「    !     !!」
    それを見ていた彼女は草むらから飛び出し、人間の前に現れ威嚇した
    他の生き物はこの威嚇に驚いて逃げ出すものなのだが、今回は違った
    人間達は、近くにあった木の棒の先に何かついてるものを手に取り、振りかぶってきた
    明確な殺意を向けられ、ピリッとした感覚が身体に走り、その場から急いで逃げ出した
    あと数秒でも反応が遅れていれば、殺されていたかもしれない。それほどの殺意だ

    「ネコがでた!」「山が呪われた!」
    「繁殖しているかもしれない」
    「殺せ!殺せ!」

    遠くから人間の鳴き声が聞こえてきた
    どういう意味かは全くわからないが、なぜだか背筋が凍る
    命の危険を、何故だか感じていた


    気がつけばいつもの縄張りの近くまで逃げ仰せ、仲間達が彼女の様子を見て不思議そうな顔をこちらに向けていた
    なんでもないと言い、一人でお気に入りの原っぱに寝転んだ
    死の危険を感じたほどの恐怖を、夜になっても忘れられなかった


    ____

    (………最近、行かないなぁ)
    あれから太陽が6、7回昇って降りたぐらいのある日、彼女はいつもの寝床でふと思い出した
    ぼぼ日課のようにあの人間の元へ通っていたのだが、あの出来事の後、一度も行かなかった
    なかなか帰りが遅いと、他の仲間やリーダーに言われていたのだが、近頃はあまり遅くならなくなったので、ある意味心配されている

    『姉さん、さいきんどうしたの』
    弟猫は、ふと彼女に問いかけた
    『いつも五月蝿いぐらいに俺に絡んできてたのに』
    『別に、なんでもない』
    毎日嬉しそうに見張りに出かけていた姉が、近頃はしょんぼりとしているのを流石に見かねたようだった

    弟猫は、番のいないリーダーの代わりとして将来群れのリーダーとなる
    その為、碌に縄張りを離れられず、掟やらなにやらを叩き込まれているのだ
    姉からの縄張り外の話だけが、今のところ弟猫の知る世界なのだ
    …….まぁ、実は楽しみにしていたなんて、言えないのだが(言ったら調子に乗られる為)

    元気のない姉の姿が、どこか心配だったようだ

    『あのさ、もし俺に新しい所を、とかで大変なら、別にそんなことしなくていいから』
    『ちがうよ、そんなんじゃない』
    『だって、』
    『大丈夫だってば!!』
    それ以上追求されて仕舞えば、ぽろっと余計なことを言ってしまいそうだった為、急いでその場から離れてしまった
    別に心配かけたいわけではない、別に弟猫を思っていたわけではない

    ただ、胸騒ぎがするのだ

    (……あの人間、どうなったのかな)
    正直どうでもいいが、なんとなく体を動かしたかった
    いつもの縄張りから離れ、行き慣れたはずの草むらをかき分けていく
    騒がしい声が聞こえてくればすぐそこ……なのだが、何かおかしい

    人間のすみかへ辿り着く
    しかし、いつもの人間はいない
    それどころか、すみかが荒れている気がした
    (……待ってたら、くるかな)
    いない時は、大体しばらく待っていれば帰ってきていた
    きっと、今日だって……そう思いながら、こっそりと草むらの中で待ち続け、気がついたら眠ってしまっていた

    しかし、太陽が沈みかけた頃になっても帰ってこない
    それだけでなく、嫌な予感が頭から尻尾の先まで巡っていた

    嫌な、匂いと気配を感じたのだ


    居てもたってもいられず、人間のことなど小さな脳内から弾き出され、きた道をいつも通りより速い足取りで進んでいった

    そして、しばらく経ち、目を疑った



    『………うそ、だ』

    酷い匂い、夜なのに明るい視界
    こんなの、見た事がない
    熱い。

    すぐに思い立ったのは、仲間のこと

    急いで縄張りに向かう
    しかし、見たことない熱いものに阻まれて思うように進めない
    これは、人間が時々すみかの中で使っていた気がするもの
    暖かさを感じて近寄ろうとしたら、いつも人間に阻まれていたもの
    これは、こんなにも熱かったのか、なんて思ったのだが、すぐに吹き飛んだ
    今考えるべきなのは、みんなは無事なのか、誰が一体こんなことをしたのか……
    ようやく縄張りの近くの原っぱに辿り着き、視界が開け、縄張りの全体図が見えるようになった時、目を疑った

    『えっ…………』

    酷い事に、なっていた
    それ以外に言葉は見つからなかった

    『…………………』

    山中にたまにあった、肉の塊のようになっていた仲間達、知っている体の形をしていない父
    誰か、誰かいないかと彼女は走り回る
    だが生の気配はなく、酷い匂いと酷い光景が広がっているだけ

    『ぅっ…………』

    ピクリと耳が動く

    『マ、マ……』

    呻き声が聞こえた方に向かい、そこにいたのは、母だった
    『ママ、そ、れ』
    地に臥した母の足は……
    『ニンゲンが、まだ、ちかくに、はやく、にげ、て』

    「生き残りが居たぞ!!殺せ!!」

    どこからか聞こえてきた大きな音
    人間の声だ
    そちらの方を見てみると、大きな影がいくつも見えてきた
    『ママ、一緒に』
    『今すぐ、にげなさい!』
    普段は温厚な母の声を聞き、ピリリと毛が逆立つ
    急いで身を翻して走り出すと、背後から叫び声が聞こえ、思わず振り返る
    『……っ!!』
    夜闇でもしっかりと見えてしまうこの目を、ある意味呪った
    人間の手で、切り裂かれた母の最期が見えてしまった

    思わず足を止め、人間に襲いかかる

     




    それからの記憶はほとんどない
    見事に返り討ちにあい、死にかけた
    ただ、それだけの記憶


    気がつけば、腐り落ちた果物のように横たわっていた
    木々の隙間から、暖かな光が見える
    (……動けない)
    ふと脳内に昨夜の光景が蘇ってきた

    数匹の生き残っていた仲間が助けてくれた
    ボロボロになったところに助けに戻ってきてくれたようで、『何があっても走れ!』と、言われた気がする
    無理やり体を起こし、仲間達の断末魔を聞きながら、当てもなく走り、逃げ去った

    (……みんな………だれか、だれか……)

    無理やり身体を起こし、後ろ足を引きずり進み始める
    黒くなった木々がだんだんと増える
    薄くなってはいるが、未だに酷い匂いは残っている

    そして、見てしまった

    黒い塊が、点々と転がる、よく見知っていたはずの縄張りが、ただの更地になってしまった光景を
    もう、自分の他に生き残りはいないだろう。

    『ぅ……ぁあ………』

    走る

    『いや、いやだ』

    探す

    『ぅぅぅ……!!!』


    絶望。ただ、それだけだった。


    〜第1話 終〜
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