神社マスター不死川実弥不死川は取り合えず神社を見つけたら参拝する事にしている。今回も「お、神社あるじゃん」とフラッと入って行き鬼を殲滅出来ますよーにと祈ろうとしていたところ、突然背後から声を掛けられ振り返ると冨岡がおはぎの包みを差し出していた。
探した、今回はこし餡だと相変わらずの無表情で言うものだからいつもいつもしつけぇなぁあ!と怒鳴り散らしたかったが神様の手前そうも行かず出来る限り理性をフル活用してしっしと手を振るに留めた。本殿の方を向いて手を合わせると冨岡も横に並んで真似をしてくるからまた腹が立つ。拝み終わりおはぎ攻撃を回避しつつ声を荒げながら境内から出るとちょうど宇髄が通りかかり目をまぁるく見開いてこちらを見ていた。何かあるかと不死川が声を掛けると宇髄は開いた目をぱちくりさせながら言った。
「お前ら二人でここに来たのか?縁結びで有名な神社じゃねぇか」
不死川は絶句した。神社の神様はみんな一緒だと思っていた。彼は偶にポンコツだった。
「そうか、縁結びだったか」
義勇がぽそりと呟く。ぎょっとして義勇の方を見ると、何やら落ち込んでる様子。宇髄が何をお祈りしたんだぁとにやにやしながら問いかけると義勇は「傷が増えないように、不死川の」と答えた。脆弱と思われていると捉えた不死川。
「何だとコラ……」と地を這うかの様な声で掴みかかろうとした。騒がれると面倒だと考えた宇髄が止めに入ると「健闘を祈った」と義勇からか細い声が聞こえた。途切れ途切れだったが要は不死川が無事に帰れるようにと健闘を祈ったと言う事だろう。それに気付いた不死川は手を止めると誤魔化す様に舌打ちをした。
言葉の使い方が変だと、宇髄も思わず苦笑いをしてしまう。辛気臭さに拍車かかってんなぁと思っていると義勇がとんでもない言葉を口にした。「残念だ。不死川と仲良くなれるようにと祈るべきだった」縁結びと知っていたならば。義勇はしょんぼりと肩を落とすと二人に背を向けて去って行った。
時が止まったかの様に動かない二人。耐えきれなくなった宇髄が吹き出して大笑いをする横で、不死川はしゃがみこんで唸っていた。まるで地鳴りである。落ち着いた宇髄が不死川の方を見ると、覗いた耳が真っ赤になっていた。不死川君が天然ドジっ子を身をもって知る話。