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    とまと

    @nyotagiyu

    特に日受、🌊受、を今は。
    女の子、NLBLGL女体化好き。
    にょたぎゆは俺が幸せにする。

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    とまと

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    瓶底眼鏡を外せばそこにあるのは白雪の顔。ベタベタの男子校入学式パラレルでさねぎゆ。

    #さねぎゆ

    不死川実弥の初恋なんともむさ苦しい男子校の入学式当日、不死川は不審な人物を目撃した。制服を着ていて自分と同じ様に席についているのだから生徒なのは間違い無いのだが、伸び過ぎた前髪(鼻の下まである)、挙げ句謎の眼鏡(普通の眼鏡となんか違う)。髪は黒々としているのにやけに生白い肌をしていて細い。
    やたら俯き加減で影が薄い。ようは怪しい貧弱だった。むさ苦しいとは違うがアレはアレでゾッとする。一瞬霊体と間違える程に暗かった。名前順に並んだ席の自分の隣。そこだけジメッとしていてキノコでも生えそうだ。不死川はため息を吐いて、吸った空気がかび臭くないかとやきもきした。
    小学校、中学校、学年が変わる初めの授業は必ず席替えだった。きっと高校初日もそうなるだろう。この陰鬱としたド陰キャともすぐにおさらばだ。不死川は陽キャとまでは行かないが、男友達とふざけあって笑い合うのが好きだった。たまにはやり過ぎて先生に怒られるのも合っていいと思っている。
    そんな自分と明らかに真逆の存在の、隣のジメ男がどうにも生理的に無理だった。此方がどんなに光っていてもその光を根こそぎ吸収してきそうなブラックホールみたいな存在。いっそ恐怖だった。だってこいつ教室入ってから一度も喋ってないんだもん。本当に幽霊の可能性も出てきた。なんか冷気も感じる。
    不死川は背筋が強ばるのを感じた。どこか気持ちの悪い得体の知れない寒気、これが悪寒って言うやつか。ジメ男に向けていた目をやっとの思いで逸し、正面を見ることに成功した。こんなに全身で拒絶していると言うのに何故か不死川は隣が気になって仕方がなかった。これが怖いもの見たさって言うやつか。
    教壇に立った教師が一人ひとりの点呼を初めた。これは何度経験しても少し緊張する。短い自己紹介でも彼らにとっては大イベントだった。不死川の番になるとクラスの視線が一斉にこちらを向く。不死川はこの時必ず皆が気を使って見て見ぬふりをしてくれていた顔の傷について話すことにしている。
    本当に何でもない、公園の遊具でアホみたいな遊び方をした末路だった。本当に小さいオレ、馬鹿だったな。でもそれが楽しかったんだよな。と多少ふざけて話せば大体の人間は気を緩めてくれる。そう、隣のジメ男以外は……。やつは此方を見ていた。くすりともしないで、唇しか見えない顔で見上げていた。
    ヒェッとして視線だけ動かすと、やけに小さくキュッと引き結ばれた唇が目に入った。何でそれだけちょっと可愛い見た目してんだよ気持ちわりぃなァ。不死川は脳内で悪態をつくと椅子に座り小ぶりな唇から目を逸らした。何か塗ったみたいな色してやがる。もう頭の中はピンクの小さいおくちで一杯だった。
    頭を抱えるようにして俯く。やつは脳内に直接悪影響を及ぼす霊魂だったようだ。点呼はちゃくちゃく進められて行き、早くもジメ男の番になった。椅子からゆっくりと立ち上がる、その背筋はスッと真っ直ぐに伸ばされていて、先程まで俯き加減だった人物とは別人のようだった。何やらボソボソ言っている。
    隣にいる不死川でさえ聞き取れない、心霊現象並の声の小ささだった。ザワつく教室。おいそんなザワザワしたらもう絶対聞き取れないだろ。不死川は本日二度目のため息を吐いた。教師は皆に静かにするよう告げると、ジメ男に向けて優しく微笑んだ。急かす素振りも無く、まるで仏の様な顔をしている
    「冨岡、もう少し声を大きくしてくれると助かるなあ。あと、皆にちゃんと顔を見せてあげないと誰だか分からなくなってしまうよ」
    生徒達の困惑した空気がガラリと変わり、興味津々と言った視線がジメ男を見た。やつは冨岡と言うらしかった。見るからに動揺している。相当顔を見られるのが嫌なのか。
    「冨岡は瞳の色の関係で太陽の光に弱くてね、みんなとは違う眼鏡を掛けているんだ。色の付いたサングラスみたいでカッコいいんだぞ?」
    眼鏡の謎は解けた。変な目で見てしまった事に少しだけ罪悪感を覚えた。ちょっと外して顔を皆に覚えてもらおう?と優しく諭す教師にジメ男改冨岡も諦めがついたのか、ゆっくりと眼鏡を外した。前髪の隙間から目元がちらりと覗く。ハッとした瞬間、冨岡は自分の前髪をおもむろにかき上げた。
    覗いた白い額と丸みを帯びた柔らかそうな頬、それに先程のちっちゃい花みたいな唇、スッと整った小鼻の上。海外の人形みたいに透き通った青色のした大きな瞳があった。
    恥ずかしそうに白い肌に赤みがさし、音が出そうな程長いまつ毛が震えながら閉じたり開いたりするのを不死川はただひたすら眺めていた。まるで金縛りにあったように体が動かない。視線は冨岡に向けられたまま。淡い色のした唇が、途切れ途切れに自己紹介をするのをただジッと見つめていた。
    そこに突如現れた衝撃的な美少年に生徒達は皆一様に息を呑んだ。まるで時が止まったかの様に誰一人として動けなくなっている。自己紹介を終えた冨岡が前髪を下ろして眼鏡を掛け直し席に座るまで誰一人として声を出さなかった。全てを知っていた教師は苦笑いをしながら次の点呼を始める。
    次に呼ばれた生徒の自己紹介はしどろもどろだったが誰一人それを気にする者は居なかった。
    なぜならば、不死川含む殆どの生徒が生きてる人形を見るのは初めてだったのだから。アレは同じ人間じゃない、きっとお人形さんなんだ。先程までの表情から一変悟りを開いた様な顔をして皆は考えるのを止めた。
    しかし不死川だけが現実に戻れないでいた。胸に疼くぐにゃぐにゃとした何か。ふつふつと湧き上がって来て暴れ出したくなるような衝動。何だか知らないが全身が熱を帯びたように熱い。今すぐにでも隣に大人しく座っている冨岡を自分の方に引き寄せてどこかにしまっておきたいと脳が訴えていた。
    視線は冨岡に向けられたまま、今はもう視線だけでなく体ごと隣を向いているため見られてる本人にもバレバレである。視線が気になるようで、不死川と目が合うと慌てて挙動不審な行動をとる。保護されたばっかりのにゃんちゃんかテメェはァ。不死川はその凶悪な顔にフッと笑みを浮かべた。
    いよいよ冨岡も恐怖が勝り隠れた瞳に涙を浮かべる。形勢逆転、今じゃ不死川が不審者だった。冨岡の目が助けを求める様に教師を見つめる。しっかり点呼を終えた教師が不死川を小突きに行くまで、突き刺すような視線はずっと冨岡を捉えていた。
    「早く席替えしてほしい…」
    「席替えやっぱ要らねェ」

    不死川君が高校初日にギャップ萌えと初恋を体験する話し。
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