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    ORIGIN時空の玲→紗。RIKKAとEICHIも出てきてよく喋る。

    恋は野の鳥 REIJIと呼ばれる魔族の遣いが世界樹であるセフィロトから生まれてすぐISSAが天族として生まれたというのは、年長の遣いたちの間で有名な話だった。
     そのREIJIは自我を持つようになってすぐ、ISSAの存在が他の遣いたちとは違うものに見えることに気付いた。
     生まれた時期が同じというだけでは説明がつかない。
     他の遣いたちがISSAの話をしていると自然と内容が気になったし、彼が通りかかるたびに目を惹かれた。
     声をかけたら最初は天族らしからぬ険しい目つきを向けられて辟易したものの、めげずに幾度となく話しかけるうちに、どうにか近付いてもネガティブな反応が返ってこないまでになった。それがこの上なく嬉しかった。

     ISSAと一緒にいたい。
     対羽になって、世界の終わりを共に見届けたいとさえ願う。

     ただ、それを彼が望むとも思えないので、REIJIは心の内を言わずにいた。



     ある日、REIJIはセフィロトの木陰で微睡むISSAを見つけた。 
     羽を広げ、傍らには淡く光る“世界”を置いている。
     そっと近付こうとしたとき、背後に気配を感じてREIJIは振り返った。

    「わぁ、なんだよあんたら」

     REIJIと同じく魔族であるEICHIとRIKKAだった。

    「ごめんごめん、いつ声をかけようか迷ってたら、驚かせるタイミングになっちゃったね」
    「ふふーん、しょっちゅう“世界”に降りてる好奇心旺盛組の魔族の俺たちが、綺麗な音がするって噂になってるISSAの“世界”を見に行かないわけがなーい、というわけで、来ちゃった」
    「ったく、うるせえと思ったらお前らか」

     ISSAはいつのまにか目を覚ましていたらしい。REIJIが振り返ると、棘のある視線が飛んできていた。
     どう宥めたものかと考えあぐねているうちに、RIKKAが割って入った。

    「お、ISSA起きた。早速なんだけど、今そこに置いてる“世界”の音、聴いても良い?」
    「あんたが歌うならな」
    「歌?」
    「REIJIくんは初めてだよね、RIKKAの歌。俺は久しぶりだな。RIKKAは“妙なる歌い手”でもあるんだよ」
    「なるほどな、俺も御相伴に預かるか」

     RIKKAが歌うと、ISSAの抱える世界もセフィロトそのものも喜んでいるかのように辺りには光が満ちて、草木が震えた。
     聴き終えたREIJIは両手を打ち鳴らした。

    「おー、流石だな」
    「REIJIありがとう。この前降りた世界で覚えたんだ。さて、ISSA約束だよ。ちょっと失礼。……。……すごい、SHIKIやSORAのところで聴いたのと全然違う音だ」
    「だろ?」

     得意げなISSAに、RIKKAは穏やかに微笑みかけた。

    「この音、直接聴こうと思ったことはない?」
    「直接?」
    「世界に降りる、ってことだよ」
    「……」
    「聴きたくないの?」
    「別に」
    「不安、なんだよね。わかるよ。俺だって最後は好奇心に勝てなかったけど、やっぱり最初は不安だったよ。今こうしている遣いとしての在り方とは違う存在に生まれ変わるわけだし……」
    「別に、不安とかじゃねーよ」
    「……RIKKAやEICHIは、最近世界に降りたのか?」

     興味の向くままに、REIJIは尋ねていた。RIKKAが振り返る。

    「俺は最近世界に降りてはいないけど、出かけてたDAIが戻ってきたのを出迎えたかな。クジラになって海で泳いでいたんだけど、降りた先の世界の生き物は俺たちと違って、少し時間が経っただけで肉体が弱くなっちゃう定めでね。シャチっていう、クジラより小さいんだけど賢くて恐ろしい生き物がいて、それに食べられて命が終わったから、戻ってきたんだって」
    「うーん、感覚がどんどん人間に近くなる俺としては悲しいけど仕方ないと言えない気持ちになるけど、新入りの二人は、あまりピンと来ていないみたいだね」
    「EICHIは……、もう何度も世界に降りてるよね。人間として」
    「うん。怖い思いも、痛い思いもたくさんしたし、どんな人生でも命が終わる瞬間は自分の不甲斐なさにしても、もっと世界を見ていたかったなっていう名残惜しさにしても、遣る瀬無い気持ちでいっぱいになる。それでも大好きなんだ、人間の世界」
    「俺は……人間に生まれて、また恋がしたいな……ああ、恋って、マルクトのセフィラのKOIのことじゃないよ。人間にある、感情のひとつ、とでも言えば良いのかな」
    「恋、か。そんなに良いモノなのか?」

     REIJIの問いに、RIKKAは力強く頷いた。

    「うん。誰かのことを大好きって気持ちが溢れたり、大好きって気持ちを誰かから伝えられたり。そういう大恋愛もあったけど……。俺の場合、なぜか不倫だの略奪だのってことが多くてさー。存在が罪って何度言われたことか」
    「RIKKA、新入りの二人が話から取り残されてるよ」
    「あっごめん。まあとにかく、一度で良いから降りてみなよ。世界のことも、人間のことも、よく理解できるようになるし、何より短い時間でも恋をして愛し合っているのに傷つけ合って泣いて、それでも許したり結局上手くいかなくなったりっていうのを知ると、遣いとして戻ってきた後の世界の見え方が変わるし。俺はそれを、すごく素敵なことだと思っているよ」
    「……行く」
    「お、即決? ISSA大胆だね」
    「俺も一緒に行く」
    「REIJIくん?」

     EICHIの不安げな声をよそに、REIJIは宣言するかのように言った。

    「俺も行く。俺だって、世界を見てみたいし、知りてーこともあるしな」

     ISSAと対羽になりたいという願いが、RIKKAの言う恋なのかを確かめたい。
     REIJIは目を閉じてISSAの世界が奏でる音の流れに身を任せ、飛び込んだ。
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