サンカヨウ今日は野外ライブの予定が入っているのだが、窓の外は雨。けれど空はどんよりと暗い訳ではなく、所々青空が見えていて、なんだか変な天気だ。
「雨ですね…どうしましょう。」
「最悪中止だけど、止みそうなら遅らせるしかないんじゃない?」
「でも、雨の中ファンの皆さんを待たせる訳には…。」
「じゃあさ、このままやっちゃう?」
「はぁ?そんなの無理に決まってんでしょお?」
「アタシもこの雨で踊るのはちょっと難しいと思うわァ。」
「じゃあさ、振りも変更しよう!今からなら間に合うし。」
「それなら転ぶ心配はなさそうですが…。」
「ちょっとぉ、勝手に話進めないでよねぇ」
「俺はいいと思うけど。」
「くまくんまで…。」
「アタシも賛成。」
「まったく…わかったから好きにしなよ?」
「では、私はその旨を伝えてきますので皆さんは準備をお願いします。」
「スオ〜が居ない間、おれ達は振り考えておくぞ。」
「絶対こうなると思ってさっき話してるときに振りは考えておいたから。あとは覚えるだけだよ。」
「さすがリッツ!」
「じゃあ、早速始めましょ♪」
「やるからには雨の中だって俺が一番綺麗に踊って魅せないとねぇ!」
そんなこんなで準備が進み、野外ライブが始まった。そこまで土砂降りにならなかったこともあり、雨もパフォーマンスなのでは?と思う程だ。
「やっぱライブは楽しいなぁ!」
「やって良かったですね!」
「なぁ、ちょっとこっち来て。」
「?」
「いいから。」
「なんでしょう?もうすぐ次の曲が始まってしまいますよ。」
「その…透けてる。観客席からじゃ絶対見えないだろうけど。」
「な…そういうことは早く教えてくださいよ!」
「ほら、次、最後の曲!」
「もう!」
「あはは!顔真っ赤!」
「レオさんのせいですからね〜?」
「わかってるよ。」
「絶対わかってない…!」
「こっち見て。」
「ん」
「あらァ♪」
「やるねぇ月ぴ〜♪」
「あいつらステージでなにしてんの!」
「可愛い♪」
「っ…レオさんのばか。皆に見られて…」
「大丈夫。この位置じゃ観客席から今は俺の背中しか見えないよ。」
「そうですけど…!あ…。」
「?」
「振り飛んだ。」
「あはは!じゃあ、このままおれと踊ろっか♪」
「で、でも…!」
「心配するなって♪足は踏まないから!」
「そういうことじゃな…」
そう言ったレオさんはクルクルと手を取って楽しそうに回り出す。
「あはは☆司、雨でキラキラしててすごくきれいだ♪」
「そういうレオさんも、輝いてますよ。」
雲間から差し込む陽で水滴がパラパラと光り、踊っている。レオさんの視線が熱くて、何故か目が逸らせなくなってしまった。
「ライブ、今日で良かった!」
「私もそう思います。同じライブは二度とないですから。この景色はずっと忘れないです。」
「そうだな♪今ならインスピレーション沸きまくりで三百曲くらい書けそう!」
「ふふっ♪楽しみにしていますね。」
ライブも無事に終わった。後半につれて天気も回復してきたこともあり、タイムスケジュール的にも問題はなくライブ後はまたそれぞれの仕事へと向かった。
「もう、レオさん?」
「楽しかったんだから別に気にすることないのに〜?」
「そうはいきませんよ、まったく。」
「ステージでキスしたこと、そんなに怒ってるんだ?」
「そ、そうです!しかも、あんなキス…。」
「思い出して顔真っ赤だぞ〜?わはは☆」
「これだからレオさんは…。そういうことは、二人だけのときにしてくださいまし。」
「じゃあ、今はいいんだよな?」
「ちょっと!」
「え〜今いいって言ったじゃ〜ん!」
「言ってませんよ。それに、運転手さんはいるんですから、二人じゃないです!」
「それなら、仕事終わったらおれの家ね。」
「今の顔ずるい…。」
「わかった?」
「しょうがないですね…どうしても来て欲しいようなので行ってあげます。」
「まあ、そういうことにしといてやるよ。じゃあ、また後でな!」
チュッ
「な…っほんとに調子がいいんだから…。」
軽くキスをしたレオさんが事務所の前で降りていった後、真っ赤になった顔を手で覆いながらなんとか平常心を保とうと努力した。こんな事レオさんには絶対に知られたくないけれど、レオさんの家に着くまでの道中の記憶はいつもあまりない。浮き足立ってしまう心を落ち着かせて、今夜もまた玄関チャイムを押したのだった。
「おかえり、待ってたよ。」
fin.
あとがき
サンカヨウは、いつもは白くて小さな可愛い花。
雨や霧が出て花弁が濡れると、花は次第に白から透明な花へと変わり、太陽の光が当たるとまるでガラス細工のような美しさを見せます。イケメンが濡れるとなんとやらですが、そんな美しさを司に感じて見とれてしまうようなレオが書きたくなって…。最後はいつもの安定な終わりの感じになりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。