深夜に食べるのが一番美味い。「ん…。」
目を擦り、時間を確認する。時刻は深夜二時を回ったところ。もう一度目を瞑り、寝ようと試みたが思ったよりも目が冴えてしまっていて眠ることは叶わなかった。ベッドを抜けダイニングへと向かうと、ガラス戸越しに部屋に明かりがついているのが見えて、一瞬寝る前に消し忘れたのかな?と思ったが、小さな物音にその考えはすぐ打ち消される。
「誰かいるのですか?」
控えめな声でそう呟きながら、そっとドアを開ける。辺りをゆっくり見回すと、キッチンでコソコソと何かしているレオさんの姿が見えた。
「何してるんです?」
声をかけると、レオさんの肩はビクッと上がり、あからさまに驚いたのがわかった。
「司お、起きてたのか…?ビックリした〜。」
「それはこっちのセリフです。」
「そうだよな、ごめん…。」
「ところで、レオさんはこんな時間に何をしていたんですか?」
「あぁ、ちょっとお腹すいちゃってさ。」
「まったく…セナ先輩に怒られても知らないですよ?」
「おれは別に…。あ、そうだ!司も食べるか?」
「私はそんなつもりで来たわけでは…。」
「ほら、ちょうど出来たとこだし♪」
「確かに、美味しそう…でもこの時間に食べたら太ってしまいます…。」
「ちょっとくらいなら大丈夫だよ。」
「では、少しだけ…。あ、セナ先輩には内緒ですからね!」
「わかってるよ、おれだって怒られたくないし。」
「ならいいですけど。それにしても、この時間にラーメンとは、なんと背徳的な…!」
「こういうのが一番美味いんだよ!」
「レオさんもなかなか罪な男です。」
「あ、汁飛んだ。」
「まったくもう…気をつけてくださいよ。」
「後でお風呂入ろっかな。」
「まさか、まだ入ってなかったんですか?」
「うん、没頭しすぎちゃってさ。」
「では、ついでに洗濯もしてしまいますね。」
「うん。」
「あ、そういえば冷蔵庫に…。」
「うわ〜セナが見たら倒れそうだな。」
「だって、〆はやっぱりご飯入れますよね?」
「いや、うん。美味しいけどね?さっきまでこの時間にラーメンは〜とか言ってたじゃん。」
「そんなことも言ったような…?」
「自分で言うのもアレだけど、司…最近おれに似てきてない?悪い意味で。」
「そうですか?私、レオさんよりはずっとしっかりしてると思いますけど。」
「失礼しちゃうなぁ〜?司だってまだまだ赤ちゃんのくせに…。」
「私は赤ちゃんではありませんよ。」
「こんな可愛いのに?」
「え、あ、え?」
「洗濯はおれがしとくから、ちゃんと歯磨いて寝るんだぞ〜?」
「はい…。」
そう言うと、レオさんは頭をポンポンと軽く叩いてから満足気に風呂へと向かった。なんだかフワフワとした気持ちのまま、空になった鍋を洗い、言われた通りにしっかりと歯を磨いてベッドに戻る。時刻は三時を回ったところ。ポカポカになったレオさんがベッドに潜り込んでくるのを待っている間にいつの間にか寝落ちしていた。翌朝、思ったよりも顔が浮腫んでいて焦ったのは言うまでもない。
fin.