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    kokoaoko2

    @kokoaoko2

    好きなものは増えたりする。尾勇の都合のいい幻覚文章を書きます。R18は鍵付き。

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    kokoaoko2

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    ■ここにあるもの
    ぴくしぶに掲載した現代転生話のその後。付き合ってる未挿入の尾勇。DK勇作さん。年齢差。友人(同級生)としての杉元。

    現実的なことは一旦忘れてお時間と心に余裕のある時に。
    上記全てご了承の上でご覧下さい。
    大遅刻のクリスマスネタです。でもまだ12月なので許して…下さい…!

    ぬるいバターと熱々のハチミツドク・ドク・ドク

    心臓の音が頭の中で響き渡る。
    瞼を開けば見慣れた天井の白が目に眩しい。
    マスクをずらし、はあ、と吐いた溜め息の温度は高く、口を開いた途端に激しくせき込んでしまった。
    咳を繰り返しながら、じわじわと目頭が熱くなってくる。
    (今とても、)
    心細い。
    悲しい。
    虚しい。
    私は両手でぎゅっと布団を握り締め、頭からすっぽり包まった。

    布団の中で携帯の画面をそっとスライドさせる。
    真っ暗な毛布の中がパッと照らされ、表示された日付は12月25日。
    因みに昨日は12月24日。
    クリスマスイブである。
    敬虔な信者の方々にとっては偉大な存在の生誕を祝う前夜祭であり、そうではない方々にとっては年に一度の楽しいイベントの夜。
    私にとっては後者であり、更に今年は特別な意味をもつ夜でもあった。
    毎年、この日は兄様と共に過ごすのが通例になっている。
    翌日の25日は両親と過ごしたり、友人と過ごしたりしていた。
    けれど、24日だけは特別で。
    出会ってからずっと、私にとっての24日は兄様と過ごすための特別な日だった。
    (それなのに―――――)
    また悲しい気持ちが込み上げて、瞳から涙が溢れそうになる。
    画面を閉じようと携帯に手を伸ばした瞬間、通知音が鳴った。
    ハッとして画面を見れば、SNSアプリの通知が表示されている。
    差出人の名前を見て、私はまた目頭が熱くなってしまった。
    「杉元……」
    高校の同級生で、私の大切な友人の一人である。
    携帯に表示されたその名を確認するや、私は即座に電話をかけていた。
    いつもならば『誰かと一緒かもしれない』とか『迷惑かも』とか考えてワンクッション挟むのだが、今日に限っては心細さと連絡をくれたことへの喜びの方が勝ってしまった。
    正常に脳が機能しない程度には、心身ともに弱り切っているのだろう。
    ワンコール後、杉元は直ぐに出てくれた。
    「勇作、大丈夫か…?」
    「うう…ッ杉元の声、安心するぅ…」
    「え、え…?まさか今、泣いてる…?」
    「…うん…うえ…っなんか…めちゃくちゃ…心細くなっちゃって…」
    「そっかあ…勇作が熱出すの珍しいもんな~」
    「そうなんだよぉ…普段風邪なんて滅多にひかないのに…今回に限って…」
    「うんうん、そうだよなあ。勇作、毎年イブを楽しみにしてるもんなあ」
    「…今年は特に…本当に凄く楽しみだったのにぃ…」
    優しい杉元の声に、瞳からぽろぽろと涙が零れる。
    杉元は私の家の事情も、兄様の存在も承知していた。
    私が前の生での記憶を思い出したことは、最近話をしたばかりである。
    打ち明けた際、彼はとても驚いていた。
    杉元には記憶がないのかと一瞬不安が過ぎったが、エビフライの話題を出したら『そんなことまで覚えてるのかよぉ』と言って照れくさそうに笑ってくれた。
    兄様と恋仲になったことに関しては、まだ話が出来ていない。
    大切な話を打ち明けるなら、一気に話すのは良くないと思ったからだ。
    近いうちに、彼にはきちんと話をするつもりでいる。
    因みに毎年私が兄様とイブを過ごすことを楽しみにしていることは、以前から知ってくれていた。
    だから、私が落ち込んでいることも直ぐに察してくれたのである。

    昨日は特別な日になるはずだった。
    兄様と気持ちを通わせてから初めてのクリスマスイブだったから。
    色んな計画を考えて、一緒にあそこへ行こう、ここへ行こうって悩んで、兄様へのプレゼントだって一生懸命選んで、手に入れるためにアルバイトだってして。
    「…そのバイトが今回仇になるとはなあ、」
    「うううう~言わないでよぉ…」
    そうなのである。
    今回、私はきちんと自分のお金で兄様に贈りものをしたかった。
    だから、プレゼント代を貯めるために一週間ほどの短期バイトに初挑戦したのである。
    そしてそのバイト先で、風邪をうつされてしまった。
    確証はないが、タイミング的に間違いないと思う。
    最終日だけ、たまたま作業で組んだ相手。
    その相手は終始咳き込んでおり、その上気遣いが出来るタイプではなかったようで口に手を当てるとか
    マスクを装着するようなこともなかった。
    私も慣れないバイトで疲れていたし、その日だけ我慢すればいいと状況を軽視したことも良くなかった。
    運の悪いことにそのたった一日行動を共にしたことで、しっかりと風邪をうつされてしまったのである。
    「たった一日だったのにぃ…運が悪いにもほどがあるよねえ…」
    「結局プレゼントは?」
    「買えなかったよぉ…バイト代入ったら買いに行くつもりで…っでも熱出しちゃったから…」
    「そっか…そいつは残念だったな」
    「残念だよね…私…残念な男過ぎる…」
    「ヨ~シヨシヨシ。勇作くんはなぁんにも悪くないからねえ~熱出したのも本当にたまたまだからねぇ~」
    「杉元ぉ~でも私がこんなだから…兄様は看病する羽目になって……っ」
    「羽目とか言うなよ~兄貴が文句言ってる訳じゃないんだろ?」
    「文句は言ってない…けど…昨日からずっと機嫌が悪くて…怖い」
    「はあッ!!??」
    杉元が突然声を荒げたことに驚いて、気管がぐっと狭まり激しく咳き込んでしまった。
    「わ、え、大丈夫か?勇作…」
    「ご、ごめん…いきなり大声出すから驚いちゃって……」
    「あ…ッ…ごめん…けど、え、機嫌悪いって勇作に対して?ケンカでもした?」
    「ケンカはしてない…し、看病はしてくれる…けど、ずっと顔が怖いんだ…」
    「…珍しいな、勇作から聞く兄貴っておまえに対して不機嫌な態度とったりしないイメージなのに」
    「こんな変なタイミングで私が風邪なんかひいたから…」
    「いや、それはさ、どうしようもないじゃん。勇作だってひきたくてひいたわけじゃねーのに」
    「色々準備して下さってたみたいなのに…台無しにしちゃったし…」
    そう。
    兄様も毎年色んな計画を立ててくれ、私を喜ばせて下さる。
    きっと今年もそうだったはずで。
    それなのに。
    (なのに私が…)
    楽しく過ごせるはずの一日を、私の看病のためだけに費やさせてしまった。
    (兄様の貴重な休暇を、こんなことのために…)
    一度考え始めると、涙が止まらなくなる。
    涙でシーツに染みを作っていると、杉元が神妙な声で言った。
    「……俺、看病に行こうか?」
    「エッ」
    「だってさ、弱ってるとこにそんな顔されたら余計ヘコむじゃん。兄貴と二人きりが気まずいなら俺…」
    そう言った杉元の後ろから、楽しそうな声が聞こえる。
    恐らく杉元の大切なひとたちの声だ。
    ようやく少し冷静になって、私はのそりと布団から顔を出す。
    「ありがとう、杉元」
    「じゃあ、」
    「杉元は優しいね。でも……」
    杉元の申し出を断ろうとした瞬間、唐突に部屋の扉が開いた。
    驚いて入り口へ視線を向けると、話題の人物が立ち尽くしているのが見える。
    (え、兄様…?)
    手にはトレイ。
    トレイの上に乗っているのは、もうもうと湯気が立ち昇る器。
    恐らく私のために用意されたのであろうそれらを手に持ったまま、ずんずんとベッドの方へ近づいて来る。
    ベッドサイドまで来ると、サイドテーブルの上に器の乗ったトレイを置いた。
    あまりの勢いに、呆気に取られて私は様子を見守ることしか出来ない。
    そんな私に構わず、兄様は身を屈めて顔を寄せてきた。
    (あ、)
    咄嗟に口の前に手のひらを当てる。
    兄様にうつりでもしたら大変だからだ。
    制止されたことが不服だったのか、兄様の眉間に深く縦のしわが寄った。
    「勇作、大丈夫か?」
    「…ッだいじょう…ぶ…そこまで杉元に迷惑かけられないよ…」
    「迷惑なんかじゃ」
    「今、ご家族と一緒だよね?私は、杉元には大切なひとたちと過ごして欲しい」

    少し前に彼から聞いた、血縁ではないけれど前の生から繋がりがあるという人たち。
    家族同然で一緒に住んでいると言っていたし、今日は特別な日だから。
    「俺にとってはお前だって」
    「ありがとう、私も杉元のことは大切だよ。だからこそこれ以上、楽しい時間の邪魔をしたくないんだ」
    杉元にとってのクリスマスも、楽しい思い出の日であって欲しい。
    「勇作…」
    「弱音、聞いてくれてありがとう。おかげでかなり落ち着いたよ」
    「…本当に大丈夫なんだな?何かあったらすぐ電話しろよ」
    「うん、ありがとう」
    「んじゃ、今更だけど。メリークリスマス」
    「メリークリスマス」
    通話を終えると、慌てて携帯を置き空いた手でマスクを引き上げ口を覆う。
    もう一方の手は、兄様にガッチリと手首を掴まれていた。
    熱で弱った私では、どうしても逃れることが出来ない。
    私が杉元と会話をしている間も、兄様は手の甲に口づけしたり舌を這わせたりしていた。
    舌先で指の股を舐め上げられたり、散々弄ばれた私の手の甲は兄様の唾液でしっとりと濡れている。
    なんとか兄様の拘束を振り解こうと力を込めるも、呆気なくまた引き戻されてしまった。
    (どうして、)
    こんなことを、と思う。
    少し前まで怖い顔をされていたというのに、どうして今私を煽るようなことをなさるのだろうか。
    困惑の眼差しで様子を見ていると、兄様が布団の上に圧し掛かってきた。
    「…兄様…ッだめ…」
    慌てて顔の前に自由が利く方の手をかざす。
    兄様との接触を阻むつもりが、そちらの手首も掴まれ、頭の上でまとめられてしまった。
    シーツの上に両腕を押さえつけられ、私の顔が露わになる。
    私は半ばパニックになりながら、覗き込んでくる兄様から必死に顔を逸らした。
    「…随分と親密な関係のようですね」
    ぽつりと、吐き捨てるように言う。
    ハッとして兄様の方へ顔を向けると、彼の大きな黒い瞳と目が合った。
    「先ほどの電話の相手…」
    「兄様…!杉元は友人です!」
    「…ハ、またその名前か」
    そう言って、兄様は心底忌々しげな表情をする。
    「兄様…?」
    「なんでもありません。こちらの話です」
    言いながら、兄様は私の耳元に唇を寄せた。
    「…弱っている時ほど本音が出るものでしょう。そいつの声が聞きたくて仕方がなくなったのでは?」
    耳にかかる吐息に胸は高鳴るのに、掛けられている言葉はどうしようもなく悲しい。
    私はとうとう堪え切れなくなって、わっと泣き出してしまった。
    「だって…!兄様の機嫌がずっと悪くって…怖くて…でも心細くって…それで弱音を聞いて欲しくなったんです…!!」
    「え、ちょ…勇作さ」
    「一番甘えたいのは兄様に決まっているでしょう…ッ!!でも甘えようにも昨日からずっと怖いお顔をされていて…悲しくて…怒らせてしまったのかなって…でも怖くて言えなくて…」
    しゃくり上げながら、せき込みながら、嗚咽を漏らして泣きじゃくる。
    子ども返りしたように、自分でも感情を抑えることが出来なくなってしまった。
    「泣かんで下さい…あなたが泣くと俺はどうしようもなく死にたい気持ちになります…」
    「そんなこと…言われても……っく…止まらな…」
    「…ったく…」
    短く溜め息を吐くと、兄様は私の手首をそっと解放した。
    それからベッドの縁に腰掛け、ゆっくりと私の頭を撫で始める。
    「……これで、合っていますか。慰め方としては」
    「兄様…」
    私の髪をぎこちなく撫でていく手の動きに、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
    ばつが悪そうな兄様の顔をじっと見つめていると、心がポカポカと温かくなってきた。
    (ああ、そうだ。この方は…)
    冷静でかっこよくて落ち着いた大人の男性。
    それがお付き合いをする前の、私の兄様に対する印象である。
    けれど、恋仲になってからそうではないところをたくさん見せて下さるようになった。
    言葉選びが下手くそだったり、感情表現が不器用なところがあること。
    気まぐれで我が儘な一面や、思い込みが激しい一面も知ることが出来た。
    今見せているこの表情も、新たに知ることが出来た一面なのだろう。
    そう思うと嬉しくて、穏やかな気持ちになることが出来た。
    「ごめんなさい…私が風邪をひいて…楽しい計画が全部台無しで…」
    兄様の目を真っすぐに見て謝る。
    すると、彼は驚いたような、困ったような複雑な表情をした。
    「そこは別に…大体、俺はあなたに対して怒っているわけではないので」
    「え…」
    てっきり兄様は私に対してお怒りなのだとばかり思い込んでいたので、間の抜けた声が出てしまう。
    「じゃあなんで…怖いお顔は…?」
    「怖い顔ってのが俺には分かりませんが…もし何かあるとすれば殺意ですかね」
    「っ」
    「…いつも健康的なあなたが俺以外の誰かのせいで弱っているのを見るのが不愉快極まりなくて」
    「え…ええぇ…」
    「あなたに辛い思いをさせて…疫病をうつしたクソ野郎を何度も何度も繰り返し何度も脳内で殺していました」
    「だから怖いお顔…」
    「ええ、まあ。けど、俺は表面に出したつもりはなかったんですが」
    「……お慕いする方のお顔、ですから。毎日見つめている内に、分かるようになったのかも知れません」
    流石に、顔も名前も知らぬ相手に対する殺意を抱いている表情だとは見抜けなかったけれど。
    そこまで話をして、私はハッとする。
    「それはそうと!兄様!私から離れて下さい!」
    「嫌です」
    「何故ですか!?私は兄様に風邪をうつしたくないのです!!」
    「今更でしょう。こんなに近くにいるんですから」
    「でも…っ」
    「嫌ですよ」
    髪を撫でていた手が、指先が、そっと私の耳たぶを摘まんだ。
    「あ…ッ」
    「ここ数日、あなたに触れていないんです」
    「だ…だめです…!だめ!」
    「先ほど手や髪に触れたことで、もっと色んなところに触れたくなりました」
    言いながら、私の耳からマスクのひもを外していく。
    「勇作さん…」
    「キ、ス…しちゃ」
    冷たい、兄様の手のひら。
    その温度が心地よくて、私はつい瞼を閉じてこの身を委ねてしまった。
    指先が喉元を撫でていく。
    重なった唇の感触にうっとりしていると、歯列を割って舌が挿し入れられた。
    舌の縁を這うように舐められ、私は深い溜め息を吐く。
    「…勇作さんの口の中、熱いです」
    「…あにさまぁ…」
    「これでは確実にうつってしまいますなあ」
    「あああああ〜…兄様ったらどうして…」
    「年一回の浮かれたイベントですからね。本当ならセックスだってしたいのを俺は我慢してるんですよ」
    「せ…っ」
    「…勇作さんはひどい男ですね。そんな日に俺に我慢を強いるなんて」
    大袈裟に溜息を吐きながら、兄様は私の首元に顔を埋めた。
    「ァ…ッ…」
    「少しでも悪いと思っているのなら、もう少々お付き合い下さい」
    彼の吐息が首筋にあたってくすぐったい。
    私は身体が反応してしまうのを堪えながら、どうにか兄様に離れていただこうと慌てて理由を探した。
    「で、でも…っそう!兄様が作って下さった料理が冷めてしまいます…っ」
    「ご心配なく。あとで熱々に温めなおして差し上げますよ」
    あっさりとやり込められてしまった上に、次の上手い返しも浮かばない。
    半ば観念し、私は兄様の背中に両手を回した。
    「熱々…ですか?」
    「そうです。勿論俺が食べさせてあげます。勇作さんが火傷をしないように、丹念に冷ましながら…ね」
    腰に兄様の腕が挿し入れられ、ぐっと強く引き寄せられる。
    「メリークリスマス、勇作さん」
    吐息混じりの、いつもより低い声。
    (これは…兄様の合図…)
    私は瞼を閉じて、彼の温度にその身を委ねた。




    閑話

    翌日、兄様は見事に高熱を出して寝込んでしまわれた。
    私はといえば、兄様にうつしたおかげなのか今や全快している。
    熱でうんうんとうなされている兄様。
    意識が戻られた時、お一人では心細かろうと私は傍らでずっと寝顔を見つめながら看病していた。
    (熱で苦しそう…だけど、)
    私が握る手を、握り返してくれる手がひどく愛しい。
    (頼られてるみたいで嬉しいな)
    不謹慎なので、絶対口に出しては言わないけれど。
    「…ゆうさく……」
    うわ言で時々、私の名前を呼んでいる。
    彼は今、どんな夢を見ているのだろう。
    (怖い夢でなければいいな)
    兄様の手にもう片方の手のひらを重ねて、ぎゅっと包み込む。
    「勇作はここにおります。安心してお休み下さいね」
    言いながら額に口づけると、眉間に寄ったしわが少し緩んだ気がした。



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