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    ren_ta11

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    ばじふゆワンウィークのお題
    「電車」お借りしました!

    注)
    千冬が小さくなっちゃったお話の続編?です。
    みんな生きてるし、千冬が原因不明のショタ化してるどこかにあるかもしれない世界線です。
    マイキー、タケミチ、一虎出演してもらってます🥺

    #ばじふゆ
    bajifuyu
    #ショタ化

    小さくなった恋人のはじめてのおつかい「電車」
    恋人がまた小さくなった話

    「電車」

    「千冬、ほんとに行くのか?」
    「うん!いく!」
    「……」
    お気に入りの鞄を背負って目をキラキラさせている黒髪の子どもは、キュッキュッと音が出るサンダルを持って見上げてくる。

    オレはそのキラキラと輝かせる目を無視することもできず、ただため息をついた。


    千冬が小さくなったあの日から、前触れもなく起こる不思議現象。あれ以来度々千冬は小さな千冬になることがあった。
    仕事が終わり帰宅すると、ソファーに丸まるちっこい体。何度体験しても驚く現象で、オレは肩から下げていた鞄を床にドサッと落としてしまった。

    (昼間はなんともなかったよな!?)
    一緒に昼間まで仕事をしていて、その時は大きな千冬のままだった。
    「んう……う?」
    鞄を落とした音でソファーの上に丸まって寝ていた子どもは顔を顰め、目を擦りながら起き上がる。くりん、とした目がゆっくりと開きオレを写した。
    「けーしゅけく……?けーしゅけくん!おはよ!」
    「!っおう千冬……はよ」
    小さな千冬はオレを見つけるなりパァッと顔を綻ばせて飛びついてくる。オレはそれを受け止め、挨拶を交わした。

    (グゥ〜……)
    「腹減ったのか?」
    「おなかのむしさんだよ!」
    「っふ…そうな、お腹の虫さんな?」
    飛びついてきた、小さな体から聞こえたとは思えないような音が千冬の腹から聞こえてきたことで、困惑していた気持ちは吹き飛んでいく。
    「すぐ飯作るから待っとけ」
    「ちふもやる!にぎにぎ!」
    小さな千冬は小さくなっている間の記憶もちゃんとあるらしい。もうどうゆう原理なのかは不明だが、可愛いからいいか……というだいぶヤケクソな気持ちになってきている。
    千冬の言うにぎにぎとは、最初の時一緒に握ったおにぎりのことだ。今日の飯当番は本来千冬だった為、買い出しも行っていないしちょうどいい。
    両手を無条件で広げてオレを見上げ、抱っこをせがむ千冬を軽々抱き上げ、片手で支えながらキッチンまで向かっていく。
    冷蔵庫、流しと見ていけば炊飯器が起動しているのが目に入る。小さい千冬が米を炊けるわけがない、千冬が小さくなる前にセットしたものだろう。
    恐らくソファーでうたた寝しているうちに小さくなった、とオレはあまり使いたくない頭で考えながら以前使った踏み台を持ってきた。
    小さな千冬と並んで、塩とのりを巻いたシンプルなおにぎりを作っていく。仕事終わりの体には少々物足りなさを感じそうだが、そこは我慢。

    「いたーきます!」
    「おう、ゆっくり食えよ」
    千冬はなぜかオレの膝の上に座っておにぎりを頬張った。
    「ん〜〜!おいしーねっ!」
    口いっぱいのおにぎりを一生懸命咀嚼する千冬は片手を落ちそうなほっぺたに当てながら食べた感想を口にする。
    「良かったな」
    「ん!けーしゅけくんもどーぞ!」
    「あー……んむ」
    「きゃーっ!けーしゅけくっ!ちふのてたべた!」
    千冬が握ったおにぎりは、手が小さいため小ぶりだ。オレの口に運んでくれたおにぎりを、パクっと口にするのと同時に千冬の小さな手まで口に含んだ。すると千冬は大袈裟に反応してきゃっきゃ!と大騒ぎし、オレはその反応を楽しんでいた。
    小さな千冬とふざけ合いをしながらその後もいつもどおり過ごし、お風呂に入る。最難関の寝かしつけまでくるが、拍子抜けするくらい今回はすんなり夢の中に入れたらしく、オレもそのまま眠りについた。

    そして朝。
    「ンナァ〜〜、ンナァ!」
    早朝からペケに起こされ目を覚ます。ペケの要求は朝ごはんだった。
    オレは寝ている千冬を起こさないようにベッドから出る。ペケのご飯を用意していれば、隣にいたオレがいなくなったのに気づいて起きてきた千冬は出てくるなりオレに抱きついてきた。
    「んん〜、けーしゅけくん……」
    「っと……起きたン?まだ寝てていいぞ」
    ぐりぐり、とオレに頭をなすりつけたせいで元々方々にうねる髪の毛はさらに爆発していた。
    離れる気配のない千冬を抱えながら、ペケのご飯の準備をする。
    カラッと袋が軽くなり、見ればちょうどペケのフードがなくなった。
    「やべ。エサの予備終わってたっけか?買いに行かなきゃダメだなこりゃ」
    「……ぺけのごはん?」
    「おー、なくなっちまった」
    幸い今日は休みだから、千冬を連れて買いに行こうとなんとなく考えていた矢先に、予想もしない言葉が飛んできた。

    「ちふが、買いに行く!」
    「おー、じゃあ一緒に」
    「ちがーぅ!ちふがひとりでいくの!」

    え……?
    まさか……。

    「もしかして、おつかいに行きてぇって言ってんのか?」
    「おつかい!ちふがする!」

    その言葉を聞いて、不安しか出てこない自分がいて、しばらく千冬を見つめてみたがどうやら意志は変わらないらしい。
    オレはため息をついて、どうするか……と頭を抱えた。

    オレの不安や心配をよそに千冬は、三ツ谷からいつしか増えたプレゼント、リュックにサンダルを用意している。

    「千冬、ほんとに行くのか?」
    「うん!いく!」
    「……」

    (さっきまであんなに眠そうだったじゃねーか)
    さてどうする……。ため息と共に悩んでいると不意に震えるスマホが目に入る。画面に映し出された名前にオレはひとつの案を思いつく。
    慣れた手つきで通話をタップする。
    『場地ー、納品来たんだけどさ、昨日言ってたエサ見つかんねぇんだけど』
    「おう、なかったらオレが後で確認すっから後回しでいい。それより、なぁ一虎?今日一日だよな?」
    『後で?分かった。は?一日だけど』
    「頼みがあんだけど――」

    オレは行く気満々でいる千冬のはじめてのおつかいの目的地を自分たちの店にする事に決め、その旨を一虎に伝えた。
    電話越しに「はぁ!?」とデケェ声が聞こえたが、最後には渋々了承を得ることに成功し電話を切る。

    「千冬、本当に行けんのか?一人だぞ?」
    「ぅ……、い、いけましゅ!」
    千冬の目と目線を合わせる為にしゃがんで、真っ直ぐ見つめて問いかける。一瞬不安そうに眉が歪むがすぐにキリッと言い切った。
    「……っし、じゃあペケの飯頼むな?」
    「うん!」

    こうして千冬のはじめてのおつかいが始動した。
    朝食をとりつつオレは方々に連絡を入れれば、ちょうど時間の空いていたタケミチが道中変装しながら見ていてくれることになった。アイツは本当にいいヤツだ。
    流石にこんな子どもが一人歩いてたら攫われちまうからな。

    千冬の身なりを整えながらタケミチの合図を待つ。その間に簡易的な地図と降りる駅を復習する。
    「いいか?路面電車に乗って、ドアが2回開いたら降りること。分かんなかったらこの首から下げてるこのカードを見せれば周りのヤツが教えてくれっから」
    「ドア……2つあく、おりる!」
    パッと手を上げて復唱している千冬は、丸一日見ていても飽きないだろう。それくらい健気でかわいい。
    「そうだ!天才だぞ千冬!」
    「ちふ!てんさい!」

    一生家から出したくない衝動に駆られたが、スマホは無情にもタケミチからの連絡を知らせた。どうやら準備が整ったらしい。
    「よし千冬、電車のとこまでは一緒に行こうな」
    「あいっ!」

    千冬はリュックに目的地の駅、店名が書いてある迷子札ならぬお助けカードを首から下げて、歩くたびにキュッキュッ!と音が鳴るサンダルを履いて外に出る。
    しっかりと手を繋いで路面電車まで歩いていく。

    「じゃあな、千冬。頑張れよ?」
    「ちふ、がんばりゅましゅ!」
    気合が入りすぎて、元々まだうまく呂律が回ってない上に噛んでいる。手が離れ、千冬は電車の前の方に座った。

    やべ、なんか泣けてきた。
    父親ってこういうものなのだろうか?

    その後から黒いメガネをして、深く帽子を被る黒髪の男が乗車する。チラッと目を配ればその男と目が合った。男はペコっと頭を下げてきたのでオレも小さく相槌を打つ。変装したタケミチだった。
    タケミチが乗車して、電車の扉が閉まったのを見届けオレは急ぎ近くの道路でタクシーを拾った。



    「ドア、ふたつ……あいたら、おりる」
    忘れないように、千冬はブツブツ言いながら手すりに捕まり座っていた。
    朝イチで場地君から連絡が来た時には心底驚いたが、一日オフだったから体を貸す事にした。
    小さな千冬を見るのはこれが初めてではないが、何度も回数を重ねたわけではないから恐らくここまで変装すればバレないだろう。
    路面電車は千冬が降りるはずの駅の一つ前に到着した。小さな千冬は降りる気配がなくひとまずホッと肩を撫で下ろした。
    次第に扉は閉まりまた電車は動き出した。
    「ドア、ふたつあく、おりる……あれ?ふたつあいたらおりる?つぎのつぎ?」

    次の次?聞こえてきた呟きでは目的地を越してしまうことになる。あまりに復唱しすぎて混乱してしまったようだ。

    「……」
    キョロキョロと周りを見回し始める千冬とオレはバッチリ目が合う。なんせそう遠くない距離に立っていたからだ。
    「……おじさんちふここにいきたいの、あとなんかいドア、あいたらおりる?」
    おじさん……。小さい千冬からしたらおじさんか……。
    少しショックを受けているオレをよそに、千冬は首から下げたカードを見せて一生懸命伝えてくれた。おそらくオレじゃなくてもしっかり伝わっただろう。
    「っ、ここに行くには、次のドアが開いたら降りるといいよ」
    「つぎ……わかった!」
    「お店にはネコの看板を目印にして行けばすぐだからね」
    「ねこさん!うんっ、おじさんありがとうっ」
    「一人でおつかいえらいね、がんばってね」
    バレていない事に安堵して少し話し込んでしまっていれば、いつしか電車のドアが開いた。千冬が降りる駅だ。
    「ドア開いた!おじさん、ばいばい!」
    「あっ、うん、ばいばい」
    千冬はしっかり覚えていたらしく、座っていた電車のシートからピョンと降りる。キュッキュッ、と特有の音を鳴らしながら、電車を降りて行く千冬を追いかけて、時間を絶妙に置きつつ電車を降りた。

    「ねこさん……ねこさん……あった!」
    どこに行った?と小さな体を探す。すると、電柱に貼ってあったネコのチラシを見てそちらに向かってしまう千冬の姿が目に入る。
    キュッキュッ、と歩いていく先は千冬の目指している店とは正反対の方向。あれでは店には着かない。慌てて助け舟を出そうとした時――。
    「ッ……わっ……!」
    足がもつれたのか、小さな石につまづいたのかは定かではないが、小さな体が前につんのめり傾いたと思えばそのままドサッと倒れ込んでしまった。
    「ッ……ちふ…!」
    咄嗟に出て行きそうになるのをグッと堪えた。
    倒れ込んだ千冬は、目に涙を溜めながらも自らの足で立ち上がり、涙を流すのを震えながら耐えていたからだ。
    「っう……いたっ……ッグス」
    膝を少し擦りむいているらしく、視界に入れた途端にまたしゃがみ込んで血の滲んだ膝小僧をジッと見ながら目をゴシゴシ擦っている。

    まずい、店まではここからそう遠くないしあと少しだけど……。
    オレが迷っていると、千冬に近づく人影を視界に捉えた。



    「朝から無茶言うぜここの店長はよー」
    「だァから、ちゃんとこうやって見に来てんだろーが」
    オレはタクシーに乗って千冬の行き先を先回りし、一足早く店に到着していた。
    迎えに行きたいし、なんなら様子を見に行きたい気持ちも尋常じゃない程ある。が、千冬とタケミチを信じてオレはここで千冬を待つと決めた。
    「てか、ほんとに大丈夫なのかよ?チビ千冬はここまでたどり着くかねぇ?」
    「アイツはやるって言ったんだ、やるに決まってんだろ」
    「でも、遅くね?」
    「……」

    オレがここに到着してから、一虎からの朝の連絡時言われた納品確認と在庫の確認まで終わってしまった。確かに少し遅い気はしていたが、嫌な予感を感じたくなくてわざと考えないようにしていた。一虎のせいで不安は一層倍増した。
    時計を確認するとやはり少し遅い。タケミチからはなんの連絡もないということはハプニングもないと思っているが……。

    「まぁ、あの千冬ならチビでも来れんだろ。気長に待とうぜー」
    「あぁ……」
    そう返事をして、だんだん膨らむ不安からかカウンターに腕を突っ伏しておでこを机につけていた。店長としてはあるまじき行為だが、幸い今日は客足が少なく店内には客はいない。
    しばらくすると、入店を知らせる音と共に大人と子どもが手を繋いで入ってきた。顔をガッと上げるとそこには意外な人物が立っていた。
    「おーい場地ー。コイツなんか、そこで……」
    「ありぇ?けーしゅけく?」
    「千冬!」
    何故か、マイキーに手を繋がれた千冬が店へと入ってきたのだ。今は泣いていないが目元が赤くなっているのを見て、おそらくさっきまで泣いていたのだと確信する。慌てて駆け寄り近くに行けば、ズボンから出ている膝小僧に血が滲んで赤くなっているのが見える。
    「転んだんか?大丈夫か千冬?」
    「ん……っいたかった、けど……まいきー、くんが」
    「電車んとこからちょっと行ったとこで転んだっぽい。座り込んでベソかいてるから声かけたら必死にそれ見せてきてさー」
    マイキーが示すそれ、とはお助けカードのことらしい。ちゃんと見せることができたようだ。無事にここまでたどり着いた事に、ホッと肩を撫で下ろした。しゃがんだオレにギュッとだきついてきた千冬を受け止めて、マイキーに向き直った。
    「マイキー、助かったワ」
    「最初どこの子どもかと思ったけど、ちょっと後ろの方でだいぶ不自然なヤツいたからピンときた♪噂の千冬だろ?」
    「あぁ。ほら千冬、オレのダチのマイキーだ」
    「けーしゅけくんのおともだちだったの?まいきーくん!」
    「おう、よろしくな!」
    千冬はマイキーと握手をすると「おともだち、いいねぇ」と笑顔をこぼした。
    「千冬、ここまできたんだ。おつかい、最後までやれるか?」
    「ぺけのごはん、ちふのおつかい!」
    「よし、じゃあ店員さんに行って買ってきてくれ」
    「うん!」
    ひょいっとオレの腕から降りて、千冬はエプロンをつけたアイツを探しに行く。
    「あっ!かじゅくん!」
    「いらっしゃいませーお客さまぁ」
    「ちがーう!ちふだよかじゅくん!」
    千冬は一虎を見つけるなりそばまで走りに行く。一虎は小さい千冬に何度も会っているが、からかい癖が止まらないらしい。今も棒読みで接客しながらニヤニヤ笑って千冬と戯れあっていた。
    「はいはい、チビちふな?今日は何買いに来たんだよ」
    「ごはん!ペケのごはん、くーだーしゃい!」
    本来であればペケのご飯なんて言っても伝わらないが、ここなら別だしなんなら一虎だから全然伝わる。だからおつかいの店もここにした。
    「ん、上手に言えたジャン。お札三枚出せよ」
    「ん!」
    千冬は一虎に言われたとおりにお気に入り鞄から渡したお札三枚を取り出して、一虎に渡す。
    「すげー、一虎がちゃんと仕事してんじゃん、しかも子ども相手にしっかりしてるー」
    「もう立派だぞ。時々変な客来ると殴りそうだからヒヤヒヤすっけど」
    マイキーと並んで二人のやりとりを見守っていると、成長に二人でジーンと目頭が熱くなっていく感じがした。
    ペケの餌を袋に入れてもらった千冬は、重さから引きずりながらもオレのところまで来てニッと笑った。
    「んしょ……けーしゅけくっ、買えた、よ!ペケのごはん!」
    「ん、偉かったなァ千冬」
    オレはそれを受け取るとギュッと千冬を抱きしめてやれば、千冬も安心と褒められた嬉しさで頬を赤らめながら笑った。ギュッとオレの服を掴む手にはいつも以上に力が入っていたことから、不安もあったのだろうと感じ取れる。
    (ほんとに、よく頑張ったな)
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