初恋(赤安)軍パロ 自らしんがりを務めて時間を稼ぎ、部隊は撤退させた。赤井の部隊は優秀だから、指揮官である自分がそう言えば情に捉われず従う。撤退はスムーズで、後は自分が離脱するだけだった。とはいえ、さすがにたった一人で一小隊を相手にするのは分が悪い。こんなところでくたばる気は毛頭ないが、さすがに怪我の一つも覚悟すべきか。ぐるりと自分を囲む奴らを見渡して、はてどこが一番脆そうかと突破口を見極めようとしたその時だった。
遠くから、蹄の音。
この状況で更に新手かと身構え闇に目を凝らすと、一頭の白馬が鬣をなびかせ猛然と走ってくる。
──速い。
そのスピードに目を剥いた。
瞬きする間もないほどあっという間に距離は縮まる。人も荷も載せない空馬、あるいは脱走馬かと思ったほどだ。だが、背中には確かに手綱を取るものがいる。ただし、いわゆる軍平の馬の走らせ方ではなく伝令のそれだ。腰を浮かせて身を低くし、前のめりの姿勢。視界は狭くなり、刀を抜くこともできない。ひたすら早くに駆けるためだけの特殊な騎乗姿勢だ。驚異的な速度で至った男はスピードを一切緩めることなくそのまま自分と敵兵の間に割り込み、ひらりと軽やかな身のこなしで音もなく地面に降り立つ。
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