For you -white- ——カランカラン。
開店準備に伴う作業を一通り終え、店の周りを掃除するために箒とちりとりを持って外に出る。ここ、喫茶ポアロのシフトが朝から入っている日のルーティンだ。ひと月前と比べるとだいぶ高い位置から射し込む光に、どこか清々しさを覚えながら店の前を掃いていく。厳しかった寒さもだいぶ緩み、自然と顔が綻ぶ。
そんな誰もが待ち侘びたであろう春の陽気に束の間の平穏を感じていると、頭上から「いってきまーす!」と幼い声が降ってくる。程なくして元気な足音とともに声の主がランドセルを背負って下りてきた。
「おはよう、コナンくん」
「おはよう、安室さん。久しぶりだね、今日は朝から?」
「そうなんだ、マスターに今日はどうしても出てくれないかって頼まれちゃって……」
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