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    m_shuncho

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    刀剣乱舞らくがきとか本丸の小説とか

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    色彩バグが発生した近侍の山姥切国広くんの日常【その1】

    日常①何か怪我をした訳でも無く、ましてや病気になったわけでもなき、朝目が覚めたら周りの色という色が認識できなくなっていた。とはいえ視覚を失った訳では無かったのでそれほど慌てることは無かった。とにかく主に伝えなければ、そう思い布団から起き上がる。幸いにも今日は出陣も内番も無く、厨当番の日でもない。ならば着る服はいつもの内番着で良いかと思い棚に手をかけ、服をり出す。色が分からなくても特に困ることはなく、寝間着を脱ぎ着替え、脱いだ服を抱えて部屋を出た。同室の初期刀である陸奥守はもう既に朝餉へと向かっているのだろう。もう一振の同室の燭台切は昨夜から遠征で不在である。つまり部屋にはもう己以外はいないと言う事だ。電気を消し、襖を閉めて洗濯場へ向かった。
    自身の部屋は2階、洗濯場は1階に造られているので服を抱えながら階段をおりる。すると向こう側から誰か近づいてくるのが見えた。色が分からないだけでそれが誰であるのか認識するのにはいつもより少しだけ時間がかかったと思う。それは骨喰だった。彼はこちらを視認すると「おはよう」と軽く手を振りながらすれ違い、今下ってきた階段を登って言った。こちらが返事をする前に急いで言ってしまった様子を見るとなにか急ぎの用があるかのように感じた。思い返してみれば彼は今日、鯰尾と馬当番出会ったと掲示板に記載されていた…ような気がする。そう思うと同時に外から鯰尾の、彼を呼ぶ元気な声が聞こえてきた。
    目的の場所へたどり着くと、そこには歌仙がいた。どうやら自分の布団のシーツを洗っているようであった。こちらに気づいた彼は鼻歌を歌うのを止め、「やぁ、遅かったじゃないか」とこちらを向きいつもの笑顔で言った。
    「あぁ、昨日は少し寝るのが遅くなってしまったんだ」
    そう返すと彼は苦笑いをし、夜更かしは程々にね、だけ言うと食堂の方へと歩いていった。
    洗い物をカゴの中へ入れ、主の元へ向かおうとしたその時、急に後ろから誰かに突撃された。大きさ的に短刀かと思い振り返る。予想通り、居たのは数振りの短刀たちであった。
    「おはようございます!一緒に食堂へ行きましょう!」
    「今日の朝は篭手切江と桑名江だってさ、楽しみだなっ!」
    前田に手を取られ、愛染に背中を押されあれよあれよと食堂へと連れていかれてしまった。さらにその後ろからは平野と小夜が小さな体をうずうずとさせ、早く食べたいと体全体で表現させていた。流石に断れる雰囲気でもなかったので大人しく引っ張られていくことにした。
    1階の大きな食堂には既に沢山の者が席につき美味しそうに料理を頬張っていた。今朝のメニューは白米に焼き鮭、野菜のたくさん入った味噌汁……。厨の方から自分で好きな量をよそってくるタイプだったので、用意されていたお盆と器を持って向かった。中ではちょうど加州と大和守が鮭のどの部分を摂るか悩んでいた。相変わらずだな、と笑いつつ2振りの横から尾に近い部分をトングで掴み皿に乗せた。他の全ての料理を盛り付け空いている席を探すが、どうやら1階はすでに満席の様子であった。遅く起きたから当然と言えば同然なのだが……。仕方なく室内にある階段を登り2回の食堂へと向かった。
    2階は1階とは違い数降りしかおらず、とても静かだった。近くでは和泉守と長曽祢が先日の出陣の報告書をまとめながら食事を摂っていた。その奥では兄弟―――山伏と堀川が並んで座っていた。その横の空いているスペースが俺のいつもの定位置だ。そちらに向かって足を進めると向こうも気配に気づいたのか、振り返って手を振ってくれた。堀川の兄弟の横に腰掛け、手を合わせて食べ始める。相変わらず鮭の色や兄弟の瞳の色も分からないがいつも通り美味しい。このことを今、兄弟に相談しようかと迷ったがそこまででは無いと判断し、今日の天気の話や洗濯物がよく乾きそうだなと、そんな他愛のない話をしながら朝餉を完食した。
    堀川の兄弟は出陣の準備が、山伏の兄弟は山へ修行の準備があるからと言って片付けが終わるとすぐに自室へと戻っていった。そんな兄弟に一足遅れて食器を大きな食洗機へ入れたその時、鶯丸と則宗が「ちょうど良かった」と声をかけてきた。どうやら今から茶会が開かれるのか、彼らの手にはそれはまあ高そうな茶葉があった。興味が無い訳ではないので参加させてもらおうかと考えたが今この状態で、それこそ今は恐ろしいほど何も困っていないがもしもの可能性があることを考えたら心惜しいが今回は遠慮すると断りを入れた。
    今度こそ主の部屋へ向かおうと食堂から出ようとしたそのタイミングで前方から走ってくる何かにぶつかった。予想外の出来事に思わず体制を崩し後方へ倒れそうになるのを何とか耐え、何事かと衝突した方へ目を向けるとひっくり返ってちんぐり返り状態になっている太鼓鐘だった。どうやら完全に目を回しているようだったのでとりあえず彼を抱え、保健室へ向かうことにした。廊下は走るなと後で言い聞かせておこう、そう心の隅で思った。
    ここから保健室まではそう遠くなく、目的地に着くとこの部屋の主の薬研と、彼を筆頭に後藤、厚、信濃の四振りが何やら双六のようなもの……いや、双六だな…を、作っている最中だった。保健室でお前らは何をやっているんだ、と思わず言ってしまった。すると厚が代表して口を開いた。
    「いやさ、弟たちが新しい遊び道具が欲しいって話をしてるのが聞こえてきてな。それでだったら俺たちで作ってやろうって話になってさ!」
    なるほど、他の部屋だとバレてしまうからあまり人が来ないここで作っているといった所か。そう自分で納得していると薬研が「ところで旦那、そいつはどうしたんだ?」と腕の中に抱えている太鼓鐘に目をやった。そういえばそうだった。事情を話せば奥にある布団があるからそこへ運んでおいてくれとのこと。短く返事をして布団へ寝かせ、一言礼を告げてから部屋を後にする。さて、またしても時間を食ってしまった、と1つ小さなため息をつく。とにかく、本来の主に報告するという目的を果たすため足を1歩踏み出した瞬間、今度は目の前にものすごい勢いの球らしきものが横切りすぐ横の壁にめり込んだ。正直血の気が引いたし折れるかと思った。お守り持っててよかった。球の正体は鞠玉であった。それが飛んできた方をゆっくり見やると真っ青な顔の鶴丸と片手で顔を覆い天を仰ぐ小狐丸と一期の姿が。なるほど、全て理解した。壁に小さなくぼみを作った鞠玉を片手で持ち主犯の元へ向かう。鶴丸は「すまん……」と消え入りそうな声で謝っていたところを見ると彼なりの誠心誠意の謝罪なのだろうことは分かったのでそのまま鞠玉を渡し、左手の手刀一発で許してやることにした。利き手ではないとはいえ極の打撃105は相当痛いだろうな、とは思ったがこちらは命の危険を感じたので致し方ない罰だ。…それに相手は太刀なので遠慮など必要ないだろう。「気をつけろよ」とだけ言い残しておいた。
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