爆竹「前にどこかで聞いたんだけど」
書類に文字を書き込む手を止めないまま、弓親が口を開いた。
「現世の一部の地域では墓場で爆竹を鳴らす風習があるんだって」
「……それで、まさか爆竹の発注までしたってのか?」
「そんなことはしてないよ。そもそも、僕が頼んだのは隊葬の用意だけなんだってば」
つい先日。
現世に赴いた数名の先遣隊は破面との戦闘を余儀なくされた。
そこで破面の一人、エドラドと対峙した一角は戦いの中で劣勢に追い込まれた。
その戦いをそばで見ていた弓親は、一角の葬儀の用意をして欲しい旨を瀞霊廷側に伝えた。
結果的にそれは杞憂に終わり、一角はエドラドを倒して生き残った。そして誤算だったのが、瀞霊廷側の迅速な対応だった。
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