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    ななつみの倉庫

    @46Pfx

    pixivにはいろんな意味で載っけ辛いやつを格納すると思います。
    謎パロ、if、書きかけがほとんど。ゆるゆる。

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    ななつみの倉庫

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    読み直しておかしいところがあったら随時修正します……(書き上げただけで力尽きました)
    本編とはめちゃくちゃ掛け離れたお気楽現パロメイドカフェ

    メイドのスとご主人様(お客さん)の4
    ずっと昔に書いていてデータ吹っ飛んだやつを再現してみましたが、だいぶ違った感じになりました
    落書きだからと思って割と端折ったところが多いので、薄目でお読みください

    メイドカフェパロ「これは、君のチェキに変えられるの?」
     彼の白くすんなりした長い指がトン、と指し示したのは、今日から始まった新キャンペーン”いつも一緒に過ごしてくれるご主人様へ♡メイドからのハートいっぱい♡セットメニュー“に書かれたツーショットチェキの文字列だった。彼の手元にある手作りのメニュー、というよりただのラミネートしたフライヤーにはコーヒーとオムライス、それから“ツーショットチェキ“をとってもお得な値段でご奉仕しちゃいます、との文字が踊っている。
     
     やはり、この質問が来てしまった──
     スレッタはペンを持つ手をギュッと握り、ごくりと唾を飲み込んだ。
     なけなしの勇気を振り絞って、声を出す。
    「……ツーショット、だけなんです」
     ここが乙女の正念場――なるべく平静を装って、さりげなく。声が震えていないか、確かめる勇気はもう残っていないけど。
    「──そうなんだ」
     そう答える顔はいつも通り落ち着いていて、ツーショットチェキを値段的には安いはずのソロチェキに変更できない理由なんて、ちっとも考えていないのがわかってしまった。フリフリのレースのホワイトブリムの上の耳も、膝丈のふんわり広がったスカートの下からこっそりのぞく尻尾も、作り物のはずなのに、今だけは力無く萎れている気がする。
     
    「コーヒーと、“元気にお絵描き♪ふわとろひよこさんピヨライス”、それから“あなたの温もり♡タヌたぬメイド・スレッタ“のソロチェキを4枚くれるかな」
     後に続いた言葉はとっくに予想できていたはずなのに。彼が決まって頼むコーヒーとオムライス──セットメニューとそっくりおんなじそれは、作戦の失敗でただでさえしょげかえっていたスレッタを絶望のどん底に突き落とすのには十分だった。どうやって、注文をメモにとってバックヤード(違う、ここではお支度部屋と呼ぶんでした)に帰ったのかすら曖昧で、彼になんと言って踵を返したのかももう思い出せなかった。
     

     ◇ ◇ ◇

     
     超巨大メイド喫茶グループ、べね♡りっとから独立したばかりの小さなメイド喫茶がんど♪あ〜むはお屋敷も小さければ、お支度部屋も、厨房もとても小さい。そんな小さなお支度部屋に無造作に置かれているパイプ椅子に腰掛けて、スレッタは1人項垂れていた。お支度部屋はメイドの控え室と事務室を兼ねているため、オーナーである白い髪の少女がパソコンを猛烈な勢いで叩いている音が響き渡っているのだが、それすらも耳に入らない。

     ぼんやりと見つめるのは、今朝ラミネート加工したばかりのセットメニュー表だ。
     
     席についてすぐ、お出迎えしたメイドが会話もそこそこに差し出した見慣れないメニュー表をチラリと見て、メイドさん可愛さによく確認せずに頼んでしまう──メイド喫茶が集まるこのアスティカシア町では、至極ありふれた光景である。その話を聞いたエランのメイドさんであるスレッタも、徹夜でこの作戦を考え、疲れた顔でじとりと睨みつけてくるオーナーに頼み込んで新しいセットを出すことを承知してもらったのだ。
     確かに、途中でエランさんがあんまり確認せずに注文しちゃうって想像できないかも、とかいっつも小さい字が並んだ難しそうな本をポケットに入れているエランさんがツーショット、という字を見逃すとは思えないかも、と思ったけど、完璧な作戦だったはず。

     だって、スレッタがこのお屋敷のオーナーにウザがられながらも泣き落としに近い形でOKしてもらったセットメニューは大出血サービス、コーヒーの値段だけでツーショットチェキが撮れちゃう、さらにオムライスもついてくる!というお得すぎる代物だ。ご帰宅回数41回──ちょうどエランがここにご帰宅した回数だ──という制限はかけてあるけれど、普通のご主人様、お嬢様なら頼まないなんて考えられない。それに、コーヒーとオムライスは、何かスレッタが新しいものを勧めない限り、彼がいつも注文する決まりきったチョイスだ。

     オムライスを頼むだけでもお得なのに、それでも彼がセットメニューを頼まなかったのは。
     (エランさん、そんなに私とチェキ、撮りたくないんだ──)
     田舎から出てきたばかりのスレッタに優しくて、親切にしてくれて、本当に夢みたいで。告白したり、お休みの日に会ってほしいとお願いしたりする勇気はなかったけれど、好きに、なってしまったのだ。手帳に挟んで彼の写真をいつでも見られるようにすれば、夢じゃないんだって、勇気をもらえるんじゃないかとずっと思っていた。
     だが、はじめて立った街頭の客引きで困っていたところを助けてもらって、お屋敷にもご帰宅してくれるようになって3ヶ月弱。スレッタは一度もエランとチェキを撮ったことがない。ソロチェキ──可愛くなるポーズと角度を必死で研究したスレッタが、同僚のメイドに撮ってもらって、丁寧にお絵描きを施した特別製の一品だ──はいつも何枚か注文してくれるし、必ず、可愛いね、と言葉をくれる。だから、スレッタの写真が嫌だということはないはずだ。
     (写真撮られるのが嫌、なのかも……)
     だとしたら、先ほどの注文は優しい拒絶だ。
     (……絶対、困らせちゃったよね)
     それに、一緒にチェキを撮って欲しいとお願いする勇気がなくて、こんな回りくどいことをして……ずるい子だと思われたかも。
     そう思うとじわりと涙が込み上げてきて、もう止まらなかった。今日は彼と会える日だからととびきり気合いを入れて施したメイクアップが滲んでしまうとわかっているのに。彼に会えないどころか、泣き腫らした顔ではお屋敷に出られない。溢れた涙が注文用紙にぼたりと垂れて、まだ厨房の妖精さんに注文を伝えていないことにも気が付いた。つくづく、メイドさん失格だ。

    「あれ、スレッタ先輩どうかしたんですか!?」
     背を丸めてめそめそと涙をこぼし始めたスレッタにぎょっとして声を掛けたのは、メイド喫茶がんど♪あ〜むの一番人気メイド、リリッケだった。ニコニコとした柔和な笑みとしっかりした接客が人気の彼女だが、スレッタにどさくさに紛れてチェキを注文させる作戦を伝授した張本人でもある。察しの良い彼女は、お屋敷にぽつんと座っているエランと、机の上に置かれたメニューを見て落ち込んでいるスレッタを見比べ、すぐにあちゃー……という顔をした。完膚なきまでに叩き潰されたようだ。

     なんと声をかければいいか逡巡していたリリッケに、ようやくパソコンから顔を上げたオーナー、ミオリネが容赦のない一言を飛ばした。
    「ほっときなさいよ、またアイツのわけわかんない言動に一喜一憂してるだけでしょ」
     まったく急にセットメニュー作りたいとか言い出して何かと思ったら……とぶつぶつと続ける。ヘビーユーザー向けキャンペーンはやるべきだと思っていたところなのでOKを出したが、こんなアホみたいな恋の駆け引きに使うとは思っていなかったらしい。

    「えらんさんは、わけわかんないところも確かにあるかもしれないけど、ひどい人じゃないんです!それに、今回はわたしが悪いんです〜!」
     優しい人なんです、と言い張るその声は、鼻水と涙でぐちゃぐちゃに濁っていた。いつもの元気な声とは似ても似つかない。めそめそ泣いているだけだと思っていたが、意外と話を聞いていたらしい。

    「あの男のどこがそんなに良いのか、何回聞かされても本当に理解ができないわ」
     今度の返答は、うっうっという嗚咽の音だけだった。言い返す気力はさっきので尽きてしまったのかもしれない。ミオリネは溜息をついて画面に表示された収支表に目線を戻し、頭が痛いわと言わんばかりに首を振った。
     
     二人の間に挟まれて成り行きを見守っていたリリッケが、とりあえず保冷剤とティッシュを取りに行こうと一歩踏み出した瞬間、黒い影がぬっとドアの前に現れた。
     ──間違いなくメイドのものではない、フリルやリボンのない長身のシルエット。

    「どうかしたの?スレッタ・マーキュリー」
     どうして泣いているの。
     あろうことかメイドの聖域、お支度部屋に平然と入ってきた侵入者はぐいと距離を詰めると、いつもと変わらない無表情で首を傾げ、赤い髪の少女に静かに問いかけた。急に近い距離に想い人が現れ、じっと見つめられたスレッタは、え、とかあ、とか言葉にならない声を出して固まった。さっきまで注文用紙を濡らしていた涙もすっかり引っ込んで、顔を真っ赤にしている。

     想定外の出来事に、さっきまで3人の女の子が姦しく喋っていたお支度部屋にはしばしの静寂が降りた。ここにいるはずのない者が当然のように現れたとき、人の脳はそれを処理しきれないのだ。
     しかし、ミオリネの上擦った叫び声によって、その静寂はすぐに破られることになる。
    「ちょ、ちょっとアンタなんで入ってきてんのよ!ほんっっと信じらんない!!」
     バックヤードに客が侵入するなんて、前代未聞の 一大事。
     立てかけてあった箒を掴みつつ、リリッケも早く追い出して!と鋭い指示を飛ばしたが、リリッケは目の前で繰り広げられているやり取りにきゃあきゃあと声をあげて嬉しそうにしているだけで役には立たなかった。

     一人でぎゃあぎゃあと声をあげながら不器用に箒を振り回しているミオリネにちらりと目をやり、エランはどうしたの、ともう一度問いかけた。
     無視するなと叫ばれたが、歯牙にも掛けない。振り回されている箒も、全然当たっていないし。
    「え、エランさん、どうして…」
    「君の声が聞こえたから」
     その言葉に思わず目尻を下げて喜んでしまったスレッタは、次の瞬間はっとした顔になった。泣いていたことを、彼はきっと不思議に思っている。どうやって説明すればいいんだろう、ずるい手を使ってあなたとチェキを撮りたくて、うまくいかなくて泣いてます、なんてことを。
    「注文をした後から、君が元気がないような気がして。僕は何かしてしまった?」
     でも、真剣な眼差しから伝わってくるのは純粋な興味と心配だけで。ここで誤魔化してしまったら、彼の何かを裏切ることになる気がした。
    「えっと、その……ずっとわたし、エランさんとチェキを撮りたかったんです!それで、えっと、とってもお得なセットメニューにしたらどさくさ?で注文してもらえるかもって、思って……でもダメで」
     口に出すと、何を一番恐れていたのがが固まっていく気がした。初めて会った時も、彼は泣いているスレッタにどうしたのかと優しく問いかけてくれたのだ。
    「わたしと写真撮りたくないんだって、ずるい手を使おうとしたのがバレて嫌われちゃったかもって思ってたら、か、悲しくなってきちゃって!」
     全部言い終わると、スレッタはぎゅっと目を瞑った。まるで、裁判の結果を言い渡される被告みたいだ。

    「嫌いになったりしないよ」
     だが、耳に飛び込んできたのはいつも通りの優しい言葉だった。
    「君が、何か僕に言いたいことがあるんじゃないかって、たまに思っていた」
     思い詰めた顔をしてメニューのチェキの欄を見ていたこともあったね、と続けるエランにスレッタは慌てて無理しないでほしい、と言い募った。
    「エランさんが写真いやなら、全然いいんです!嫌な思いをさせたいわけじゃ、なくて」
     しょぼくれたスレッタを前にして、エランは手を顔にやった。白い指が、ライトグリーンの瞳が嵌った眼窩を、つんと尖った鼻を、薄い唇を撫でていく。
    「この顔はね、作り物……いや、借り物と言った方がいいかな。だから、それを写した写真に価値はないと思っていたんだ」
     価値がない。思わぬ発言に、スレッタは目をぱちくりさせた。彼の口調には嫌だとか不快だとかそういった感情は見当たらない。ただ諦念だけがあるみたいだ。
    「君の写真ならソロチェキで事足りているし、わざわざ僕の顔を入れる必要はないでしょう」
     (あれ、エランさんは……私の写真、欲しかったんだ)
     スレッタはもう一度目をぱちくりさせた。てっきり、彼は応援の意味を込めて注文してくれているだけなのだと思い込んでいた。いつも“可愛いね”と言ってはくれるけど、落書きのタヌキのイラストが可愛い、かもしれないし。とにかく、カバンすら持たずに持ち物はいつも携帯端末と本だけ、お洋服だって同じデザインのものしか着ないエランが物質的なものを欲しがっているイメージがなかったのだ。
     でも、嫌じゃないなら。
    「そう、ですか……じゃあ、私が価値があるって言ったら、どうですか?」
    「僕の写真に?」
     今度はエランが目をぱちくりさせる番だった。
    「そうです!価値、いっぱいあります!私はエランさんの写真、欲しいです!」
     せっかく施したきらきらなメイクが涙でぐちゃぐちゃになっていることも忘れて、スレッタは前のめりになった。目は充血しているだろうし、ぐずぐずと音を鳴らす鼻の頭は真っ赤になっている気がするけど、頭の中はそれ以外でいっぱいだ。
    「顔が映ってなくてもいいので、一緒に撮れたら……うれしい、です」
     借り物、というのがどういうことなのかよくわからないけれど、とにかく、エランの写真であることに意義がある、ということを、うまく説明できたかはわからない。まくしたてるように言ってしまってから、もしかしたら逆効果だったかも、とスレッタは恐る恐る彼の顔を見上げた。静かな女の子の方が好きだと言われたりしたら、立ち直れない。
     
    「……そうなんだ」
     優しい響きにホッと胸を撫で下ろしたスレッタは、次の瞬間、思わず呼吸を忘れてしまった。
     エランが、笑っていたのだ。
     お支度部屋のなんとなく暗い白色灯の下でも、密やかに細められたライムグリーンの瞳はきらきらと光っていた。
     椅子から立ち上がらせるように、優しい手がすっとスレッタの目の前に差し出される。
    「注文の変更をしてもいいかな、スレッタ・マーキュリー」

      ◇ ◇ ◇

    「待って、まってください、えっと、そ、その、私……今、顔がぐちゃぐちゃで、だめなんです……今日じゃ、なくても……」
    「……その顔の君も、価値があると思うよ」
    「えっっ、ええええ!!」
    「僕も、端末のカバーに挟んでいつでも今日のことを思い出せるようにするね」
    「わ、私そんなことまで言っちゃったんですか⁉︎」
    「ふふ」

     写真撮影用の可愛らしい壁紙の前で、嬉しい、と恥ずかしいのないまぜになった百面相をしている女の子と、すっかり余裕綽々といった感じの男の子が向かい合っている。普通であれば何かポーズを決めて、二人でカメラを見るところだが、カメラ係を買ってでたリリッケは気にせず、撮りますよ〜と軽く声をかけ、パシャリとシャッターを切った。
    「えっ、撮ったんですか!?」
     エランに振り回されっぱなしで反応が遅れてしまったたぬきメイドさんは、ふわふわの尻尾を揺らして顔を真っ赤にしているところを切り取られてしまったようだ。
    「いきなりポーズをしてカメラを見るのは難しいですから!いいんですよぅ自然体で!」
    「確かに、練習しないと難しいかもしれないね」
    「そうなんですね……え、エランさんがそっちの方がいいなら……その、それでがんばります」
    「ありがとう、付き合ってくれて」
    「つつつ、付き合う!?」
    「は〜いじゃあもう一回撮りますよ〜」

     カメラを持ったリリッケの隣には、滅多にお屋敷には姿を見せないミオリネの姿があった。ニコニコのリリッケとは対照的に、こちらはぶすりとむくれた顔をしている。先ほどエランを追い払うために手に取った箒も、まだ握りしめたままだ。
    「丸く収まってよかったですね〜!」
    「どこがいいのよ。人に言われてコロコロ意見を変えるヤツってほんっっと最低!さっきは写真に何の価値がとかほざいちゃってたくせに、結局は一緒に撮りたいんじゃない」
    「大好きな人のまっすぐな意見だから、胸に刺さるんですよ〜!!」
     リリッケはニコニコとしながら、パシャ、と二人に向けてシャッターを切っていた。
    「リリッケ、アンタさっきから何枚撮ってるの⁉︎」
     セットメニューでの注文なら、一枚でいいはずだ。しかし写真機は低い唸り声をあげながら、健気に新しい写真を排出している。
    「あとでスレッタ先輩にもあげないとですし、店のアルバムにも貼っておこうかな〜って」
    「何の記念よ!」
     アンタの分のチェキ代は給料から天引きよ、とスレッタに向かって声を張り上げたミオリネだったが、返ってきたのはありがとうございま〜すという浮かれポンチなたぬきの声だけであった。
     
    (おしまい)



    おまけの二人
    えらん:正直メイドとかよくわかっていないが、彼女がお帰りなさいと言ってくれるので気に入っている。今まで買ったソロチェキはちゃんとアルバムにしまっているが、誰にも見せたことはないという。彼女がコーヒーの種類について一生懸命説明してくれるので、家でも淹れて飲むようになった。実はべね♡りっと姉妹店のオーナーだが替え玉なので、普段は書類仕事をやっている。
    すれった:トップご主人様であるエランがツーショットを撮らないので、他のご主人様が遠慮(萎縮)してしまい、実はツーショットチェキ自体撮ったことがなかった。もともとべね♡りっとで見習いメイドをしていたが、友人のミオリネが独立したためついていった。山から出てきたばかりの化けたぬき、という設定のメイド。
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