Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    kikuzakura1226

    @kikuzakura1226

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    kikuzakura1226

    ☆quiet follow

    奴隷として生きるアルマシュが自由を求めて足掻く話最終話です。
    描き切りました。思い残すことは無さそう。いやあります。バッドエンドも用意してます。整ったら投稿しますね。これはハッピーエンドです。
    最後まで頑張る二人を見てあげてください。

    #ヘタリア
    hetalia
    #アルマシュ
    almash
    #マシュー・ウィリアムズ
    matthewWilliams
    #アルフレッド・F・ジョーンズ
    alfredF.Jones

    願い星⑥暖かい日差し、ふかふかのベッドの上で目が覚める。


    「おはよう、よく眠れたか?」


    ああ、おはよう。この焦げた匂いは君の仕業かい?


    「なっ…パンを焼いたんだよ、あとスコーンも…。早く顔を洗ってこい」


    スコーン?炭の間違いだろ。
    待って、スコーンってなんだい?


    「まだ寝ぼけてるのか」


    ここはどこだい?マシューは?マシューはどこにいる?というか君は……


    「さっさと目を覚ませ。お前の相棒はそこにいるだろ」


    「ーーーッは!?」

    はっと目を覚ますと川辺に打ち上げられていた。体が痛い…流木や石にぶつかったんだ…

    「マシュー…どこだい?」

    辺りを見渡すが暗くて何も見えない。手探りで地面に触れるとサラリとしたなにかに触れた。

    「マシュー!!ここにいたんだね…!」

    手探りでマシューを抱き起こす。が、反応はなくずっしりと鉛のように重たい。

    「マシュー…?しっかりして!マシュー!!」

    「ん……アル」

    小さな声が返ってきて安堵する。体が重いだけでなく体も冷たい。川の水で冷えたのだと思い、体を密着させる。

    「アル…よく顔を見せておくれ…」

    マシューの冷たい手が俺の頬に触れる。慈しむように、確かめるように丁寧に優しく撫でる。


    「ぼく、ね…うれしかったんだ。こんな途方もない夢を、いっしょに追いかけてくれるなんて思ってなかったから」


    「しゃべらないで、今は体力を回復させて…」


    「たのしかったよ、アルと街を歩き回れて、夢をみれて…いい人生だった…」


    「何言ってるんだ…!まだ、まだこれからじゃないか…っ
    ほら、行くよ!あいつらが追いかけてくるかもしれない」


    「たすけにきてくれたときも、なんてむぼうなんだって、おもったけど…ほんとうはうれしかった……ぼくのおとうさんとおかあさんは、むかえにきてくれなかったから…」


    「……ッもう、しゃべるな…」


    「ありがとう…アルとかぞくに…きょうだいになれたみたいでたのしかった……



    だい、すき」




    「…………………マシュー」


    背負ったマシューから返事がないことからマシューはもうこの世にはいないことを察した。

    涙がこぼれそうになるのを押し殺し、ひたすら暗い森の中を進む。


    俺たちのちっぽけな夢はここで終わってしまうのか?
    そんなのは認めない!
    他の何を犠牲にしてでも掴み取ろうとした自由だ、まだ何も成し遂げていないのに、こんな所で終わってたまるか…!

    どれくらい進んだだろう。辺りが明るくなり、朝日が登ったのだと気づく。
    前から光が指しているのに気づき、そこを目指し歩く。もう体はガタガタでいつ倒れてもおかしくない。冷たく重くなった相棒を背負い直し、一歩一歩進む。

    森を抜けるとーーー

    「あ………」

    一面の光、風に揺られて眩しく光る。一面の小麦畑がそこにあった。

    砂の大地も氷の大地も見つけられなかった…国なんて作れなかった。僕らのちっぽけな頭で考えた夢は簡単には叶わなかったんだ。
    でもーー


    「なんだ、こんな近くにあったんだ…」


    目の前に広がる一面の黄金の大地…。俺たちの自由の象徴。
    檻の中から切望し、手に入れたくて手を伸ばした自由は、すぐ近くにあったんだ。


    「ほら、見てごらんマシュー…絵で見た黄金の大地だよ」

    背中にいるマシューに囁くように声をかける。返事は帰ってこないことは分かっている。段々と冷えていく身体が語っていた。

    重い足を引きずり1歩1歩進む。

    上手く呼吸が出来ない。

    目が霞んできた。



    つかれた


    ドサッ

    その場に倒れ込んでしまった。上を向くと一面麦に囲まれていて不意に吹いた風が頬を優しく撫でる。
    隣には穏やかな表情で眠るマシュー。


    もしあの時君が手を差し伸べていなかったら俺はもっと長生き出来たかもしれない。痛く苦しい思いをしなかったかもしれない。

    でも、それでもーーー


    楽しかった。
    君と出会って俺は生きていることを実感できた。
    人を好きになることを知ることができた。
    最期の最期で夢を叶えることができた。

    逃げずに進んだことで沢山のものを掴むことができた。

    ありがとう。俺と生きてくれてありがとう。


    ギュッ︎


    マシューの手を握り願い事を唱える。



    「………もし、生まれ変われるなら、」


    君を守れるくらい強くなりたい。


    それからーーーー……



    .








    .










    「いたいた…こんな所で寝てたのか」


    一人の青年が二人の子どもの元に寄ってくる。木陰で眠るよく似た顔の金髪の子どもの近くには一面の小麦畑が広がり、子守唄を聞かせるように優しく風に揺られている。

    「何故かここが好きだよな。
    どうしたんだ眉間に皺を寄せて…怖い夢でも見てるのか?」

    お互いの手を握りしかめっ面をしながらうんうん唸る二人。その二人を宥めるようにそっと頭を撫でる。

    青年が腰を下ろし、無限に広がる麦畑を見ながらポツリと呟く。



    「この世界はこんな美しい景色ばかり見られるところじゃない。お前たちの思っているよりも残酷で、悲しいことばかり起こる…

    でも、それでもーーー

    この広い世界に生まれたこと、この世界を愛せるように

    めいっぱいの祝福を、お前たちに…」







    ーーもし、生まれ変われるなら

    その時はマシューと兄弟になれますようにーー
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏👏👏👏💴💴💴🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works