🦩🤥「ウソップ」
静かに呼ばれる自分の名前、緊張して思わず唾を飲み込む。
いつもと変わらない笑みを浮かべているというのに、その声に温度は感じられなかった。
大きな手がゆっくりと伸びてきて、そっと頬に貼られたガーゼの上を撫ぜる。
慈しむような優しい手つきなのに、何故か震えが止まらない。
「ウソップ、」
「ぁ、な、に、ドフィ…?」
「フフ…またいつもの貧血か?
落ちついたか」
「っ、ん、ちょっと休んだから大丈夫」
「そうか、それなら良かった。
──ところで、」
あの男は誰だ?
ドフラミンゴの笑みが深くなる。
心臓が早鐘を打ち、息が詰まる。
視線を逸らしたいのに、サングラスから目が離せない。まるで蛇に睨まれた蛙のようだと、どこかで冷静な自分が言う。
「フッフッフッ…どうした、顔が真っ青だ」
「っあ、知ら、な…ッ」
「ん?」
「…ッ痛、ァ…ッ痛い…ッや、離して…ッ」
「あの男は、誰だ?ウソップ」
「ッ知らない…っほ、本当に知らない…っ」
掴まれた右腕が熱を持つ。
余りの痛さに悲鳴を上げたが、ドフラミンゴの腕は離れることは無い。せっかく巻いた包帯が外れて、どす黒い色をした腕が顕になる。彼の手がすっぽりと覆える程細くなったそこには、くっきりとドフラミンゴの手の形が浮いていた。
「フフフ…痛いか」
「…ッ…ァ…痛い…ッ、ヒ、ッ…」
「なら応えろ…
──お前は一体誰のものだ?」
ビキ、なんて腕から嫌な音が聞こえた。
痛みと恐怖でいっぱいになった頭では逃げることもできず、ただ、痛い、痛いと叫ぶしか出来なかった。
オレ、俺は、誰のもの?
俺は、ドフラミンゴの
違う
ドフラミンゴを愛して
本当に?
ほんとうに、こいつを、あいして、 ?
(好きだった、愛していた。また会えて、本当に嬉しかった。覚えていてくれた、名前を呼んでくれた、それがどれだけ嬉しかったかお前は知っているだろうか。
好き、好き、好きだよ。
死んでも変わらず、こんなにもお前の事を好きな気持ちが溢れ出てくるのに。
箱の中に閉じ込めてしまう俺をどうか許して、忘れて。愛してるよ、 )
「俺、は、ドフィのものだよ、」
「…それは、本心か?」
「本心に決まってるだろ?
…そんなに俺が信じられないなら証拠をこれから見せようか?」
「フ…フフッ…フッフッフッ
あぁ、見せてくれ
──ベットの上でな」
上機嫌になったドフラミンゴに抱えられゆっくりと寝室へと向かう。不思議とさっきまで感じていた恐怖は消えていて、頭はスッキリしていた。
ちゃんと、教えなきゃ。
どれだけドフィの事を俺が好きなのか。
どれだけお前を愛しているのか。
まずはキスをしよう。ヤキモチ妬きの可愛い恋人の耳元で囁きながら。
「俺はお前を愛してるよ」
胸の痛みなんて気にならないくらいの、とても熱いキスを送ろう。