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    shidarigawa

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    shidarigawa

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    花丸メンタルイチャ小話。表情豊かなウスイクンがもっと見たかったな〜〜

    花丸蝶々 ダークシンカリオンアブソリュートの動力車の前に座り込み、ノートPCで何やら難しそうなプログラムを組んでいるアブトをシンは後ろから眺めていた。アブトはあぐらをかいて、PCを床に置き、無言でキーボードを叩いている。
     三角座りをしたシンは膝に肘をつき、両手で頬杖をついて、アブトの後頭部を見つめる。少し俯いたアブトの白いうなじがしなやかだな…なんてシンはぼんやりと考える。
     アブトのことをすごいなぁ、とシンは単純に思う。シンには、シンカリオンが動く細かい仕組みの3割も理解できていない。でもこうやってアブトが大宮に来る時に都合が合えばシンカリオンの整備を見たり、システムについて教えてもらったりして、少しずつ分かってきたような気がしている。
    「あ〜…くそ、上手くいかん」
    キーボードから手を離したアブトがため息とともに項垂れる。
    「ダークシンカリオンはやっぱりちょっと違うの?」
    シンは何となく感じていたことを尋ねる。
    「ダークシンカリオンはユゴスピアで作られたからな…基本的な構造は同じでも細かい制御方法が違ったりする。」
    答えながら再びキーボードを叩き始めたアブトだったが、しばらくしてまた手が止まり、背中がちょっと丸まる。
    「お父さんに聞いてみたら…?」
    「………」
    シンの問いかけにしばらく静止していたアブトだったが、微かにチラリとシンの方を向くと、またPCに向き直って小さな声でボソボソと呟く。
    「俺1人でやってみたいんだ」
    そのごく小さな声を拾ったシンの心にむくむくと風船みたいに膨らんでいく気持ちがあった。
     世の中ではコレを何て言うんだろう。
     愛おしいって言うんだろうな。
     アブトは自分の夢に向かって努力してる。1人でやってやろうって、悩んでる背中がカッコ良くて愛おしい。
     シンはそんなアブトを見ていると、なんだか抱きしめたいようなくっつきたいような気持ちになるし、自分も何か頑張りたい、という気持ちになる。
     シンは立ち上がってアブトのすぐ後ろまで行くと、しゃがんでその背中に指でぐるぐる渦巻きを描く。
    「…っ!なっ?!」
    ピクリと背中を震わせてから、焦った顔のアブトが振り向く。
     シンは破顔して、ぐるぐると渦巻きを描いた回りにさらに花びらを描く。
    「花丸」
    「はぁ?!」
    少し顔を赤くしてシンを不審な顔で見つめてくる。
    「蝶々も」
    そう言って背中に指で蝶々を描く。
    「オレの担任さぁ、宿題とかノートとかよくできてると花丸に蝶々描いてくれるんだよ。しかも夏はカブトムシになるんだ。」
    そう言って、微笑んでアブトを見る。
    「な…んだよ…」
    恥ずかしそうにアブトがシンから視線を逸らす。
    「……別に…俺はちっともできてない…」
    何かぶつぶつと言いながらPCの方に向きなおる。
    「……オレにとってはさ、頑張ってるアブトは花丸なんだよ」
    ふふっと笑いながらシンが言えば、アブトの動きがぴたりと止まる。
     しばらくしてアブトは振り返ると、シンにぐいっと顔を寄せてきた。至近距離で視線が絡めば、2人とも時が一瞬止まったように感じる。
    「サ、ン、キュー…」
    ひとことひとこと区切るように言う。唇を少し突き出して鼻にちょっと皺を寄せながら言葉を発するアブトの顔が何だかこどもっぽくてかわいくて、シンの心臓はコトリと鳴った。
    「…変な顔」
    シンはそう言うが、思わずニヤけて笑ってしまう。
    「うるさい」
    そう言ってアブトはPCに向き直る。
    「オレなんか飲み物買ってくる。アブト何がいい?」
    シンは立ち上がると腰に手を当てて聞く。
    「炭酸」
    「おっけー」
    アブトはシンが跳ねるように歩いていくのをチラリと見送る。

     シンが背中に指で描いた花丸を反芻する。シンの意外とほっそりとした指が背中を辿った軌跡がなんだかまだくすぐったい気がして、思わず小さな笑い声が漏れる。
     制御システムの改良を何度も試して、でもずっと上手くいかなくて手詰まりな気持ちだった。それでも足掻いていたかった。
     ダークシンカリオンは俺を選んだんだ。俺もそれに何か答えたい。
     だからアブトは父親には最後の最後まで聞かずに自分で答えを見つけたい。そう思っていた。
     シンが頑張っている自分を見ていた。しかも花丸だと言った。それだけで気持ちがぶわっと昂るくらい嬉しかったのだ。
     その花丸蝶々がアブトのことを大事に見守っている気がすれば、心臓がムズムズとあったかくて浮かれてしまう。
    「子どもっぽ…」
     そんな自分が恥ずかしくなって小さく呟くが、口元はニヤニヤ笑いが止まらない。
     アブトはちょっと咳払いをしてからわざと眉間に皺をよせる。腕を組んで細く長い息をつく。シンが帰ってくるまでにいつもの真面目な顔にならなくてはならない。
    「…頑張るか…」
     そうして、アブトは意識を集中して作業に没頭していくのだった。
     







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