初詣に行く話(気が向いたら完成させるかもしれない) 年末年始の空気は騒がしくも静かだ。
そんなことを日渡ハルキは考えている。
冬の張り付くような冷たさは、この時だけは神聖な空気みたいだと思わされる。
身が引き締まる思い、と言ったらいいのだろうか。
「かすみちゃん、まだかな~」
十年来の付き合いの幼馴染の少女を思いながら、彼は待っていた。
待ち合わせ場所は幼馴染の家の前。
冷たい空気を鼻から取り込んで、口から吐き出してみたり暇を持て余す。
かわいくて愛おしい彼女を待つのは、まったく苦痛ではなくむしろ喜びに近い。
「お、おまたせ~……ハル君?」
「……アッ」
隣の家から出てきた振袖の少女。
ハルキは彼女に魅入られた。
赤メインの生地に黒袴に装飾された花の意匠は華やかな印象を与える。
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