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    くのと

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    くのと

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    病んでる1号こと病みちごが、箱の中に2号を探すお話。クリスマスネタです。博士のガンマへの依存度がやや低め。1号の愛は深い。ピッコロさんはサンタ。

    #ガンマ1号
    Gamma 1
    #ヘド博士
    dr.Hedo.
    #ドラゴンボール超スーパーヒーロー
    dragonBallSuperSuperHero

    1号の箱シュレーティンガーの猫
    量子力学のいち理論。観測者が箱を開けるまでは、猫の生死は決定していない。



    「子供部屋って、いつごろ欲しがるものなんでしょうか?」
    冬も深まりクリスマスが近付いた頃、ブルマへの研究相談を一区切りさせたヘドが、そんな質問を投げかけた。
    そうねぇ、と飲みかけのコーヒーを口にしながら、相変わらずべったりなんだなと、CCの女社長はこの新入社員の家族の一人を思い浮かべた。
    レッドリボン軍の科学力の結晶であるガンマ1号は、優秀なAIのもと成人男性のように振る舞っている。応対や現場判断は的確だし、ヒーローというコンセプトの通り正義感に篤く、現に今も警察と協力し治安維持に貢献している。活動を始めてから日は浅いものの、既に人々からの信頼や人気は非常に高い。
    その実まだ産み出されて数か月のため、不意にアンバランスさが覗くこともしばしば。こうしてヘドが雇い主の『男児の親視点』の意見を求める辺り、それが容易に窺い知れた。
    「トランクスと比較するのもどうかしらね。あの子パンちゃんくらいの頃から勝手に空き部屋占拠していたし」
    「やりそうです」
    「そうなのよ、もう秘密基地だーとか言って悟天君と一緒になってさ……」
    そこまで言って、ハッとブルマは口をつぐんだ。ヘドはちょっと困ったように笑って、クリーム多めのココアをすする。
    「ま、まあ、赤ちゃんみたいと思えば良いじゃない。ほら、ここに来た時だってあんなだったし」
    あんな、とはCCにヘドと1号がやってきた日の事だ。
    過日、レッドリボン軍壊滅に伴い籍をCCへ移したドクター・ヘドとガンマ1号は、監視の名目も含め会社の一画で新たな生活をスタートさせた。と言っても別に監獄めいたものではなくて、敷地内の所謂社宅だ。そのファミリー物件が彼らの現在の住まいである。
    何故ファミリー用になったかと言うと、1号がヘドとの別部屋を全力で嫌がったからだ。
    最初、近距離の一人用物件がそれぞれに宛がわれたのだが、それまでヘドの指示全てに従順だった1号が物凄いショックを受けて拒絶した。そもそも居室を与えられるという概念が彼には無かったようで、ヘドと離されそうだと理解した瞬間、生後数か月の人造人間はちょっと可哀相なくらいに狼狽えたのだ。
    聞けば軍では個人スペースなど皆無で、充電ポッドか、ヘドの近くでメンテやテストをするばかりであったと言う。
    急激な環境の変化だけでなく、ガンマ2号というバディを失った直後でもある。無理に引き離すのも良くないとの判断のもと、無難にファミリー物件に落ち着いている。
    「最新家電ばりにコンパクトさをアピールするとは思わなかったわ」
    「その節は……」
    いいのいいの、とひらひら手を振る社長にヘドは恐縮するしかない。温情に縋っていたあの局面で、まさか彼が我を通すとは思わなかったのだ。
    「あんまり、良い事とは思っていないんですよ」
    甘い飲み物を口にしながら、ヘドの言葉は少々苦い。
    彼自身、創造物であるガンマ達を所有物のように扱っていた自覚はある。ガンマ達も当然の様に受け入れていたし、喜んですらいたと認識している。しかし軍に居た頃は全く疑問視していなかった関係性が、本当に適切なものなのか、ここに来て揺らいでしまっていた。
    1号が示すヘドへの態度は、主従を超えた明らかな依存だ。
    「ボクは魅力的な超天才ですけど、1号にも他の選択肢があっていいのに」
    「……あんたらしい言い方だこと」
    自信に溢れる若い科学者に、しかしこう思わせているのは、セルマックスとの戦いで帰らぬ人となったスーパーヒーローの存在だ。
    そうあれと造られて、そうあらんと生きて、そうして彼は殉じてしまった。
    「あんな風に造らなければ、なんては思ってないんです。それは2号にも1号にも悪い。ただ……」
    選べるのであれば、選ばせてあげたいと思う。それは傲慢だろうか。
    俯いてしまった従業員を、雇い主は優しい眼差しで見詰める。経歴から問題児と覚悟していたが、実際の彼はこうして誰かを想って悩める青年だ。悩みの根底にあるのは創造主と被創造物の関係とは違い、きっと家族愛に他ならない。
    「……さっきも言ったけど、まだ赤ちゃんみたいなものなんじゃないかな。焦らなくてもいいと思うわ」
    子供なんて全く思い通りになどならなくて、拍子抜けするほどに気付けば大きくなっていく。ママ友と会話するような気分で、ブルマはそんな風に言葉を掛けた。
    「あら、でも確か机をあげるとか言っていたわよね?」
    「……言ってましたし、あげました」
    「その言い方だと、まだ?」
    「はい……」
    実は子供部屋云々の前段階として、冬が始まる前、ヘドは自宅に1号の机を用意していた。初めてのパーソナルスペースだ。好きにカスタムするようにと言ったのだが。
    「箱ばかり積んでるんです。空っぽの」
    まったく、本当に育児は想定した通りになんてなってくれない。



    ブルマと別れたヘドは借りている社宅まで戻って来た。玄関の扉に向かおうとして、そのそばの小窓から室内に彼の最高傑作の姿を認める。
    赤いマントを羽織ったヒーロー、ガンマ1号は、与えられた自分の机の前に立ち、ひとつの動作を繰り返していた。
    机の上には大小様々な大きさの箱。どれも空っぽである筈のそれを取り、慎重に開いて、じっと見て、また次の箱を手に取る。開く。横に置いて、また次を。
    空き箱の検分と言えるこの作業を行う1号は、しかし真剣そのものだ。別に何が入っている訳でもないのに。
    「1号」
    声を掛けながら玄関を開けると、1号がくるりと顔をこちらに向けた。人工筋肉の収縮による動きは滑らかだが、他の部分が動かないためにひどく作り物めいて見えて、ヘドは僅かに目を瞠る。
    「お帰りなさい、博士」
    ふ、とその表情が柔らかく緩んだ。途端、人形然とした印象はたちまち掻き消える。温かい室内に吐息を零し、ただいまと天才科学者は挨拶を返してマフラーを外した。
    「1号もお帰り。今日は随分早かったね、怪我はしていない?」
    「大丈夫です。クリリンさんが交代してくれました。最近出ずっぱりだから、人造人間でも少し休め、だそうで」
    コートをハンガーに掛けながら、1号が穏やかに今日の出来事を報告する。先程の妙な行動の時とは違い、ヘドの目に映る動作に違和感は無い。けれどあの、まるで儀式じみた行為は何だろう。
    一体何がこの人造人間をして、あんな無為を繰り返させるのか。
    「……箱、また増えた?」
    「はい、2つほど」
    なんでもないような声で答える1号の背中で、空箱は大きい物から小さい物まで、机に山と積まれている。
    「何か入っている?」
    「いいえ、空っぽです。まだ」
    ほら、とまだ開けていなかった箱の蓋を、手袋をした手がぱかり、ぱかりと開いて見せる。残りもあと少なかったため、すぐに全てが開け放たれた。当然どれにも何も入っていない。
    まだ、ということは何か入れる気ではあるらしかった。
    「……どれかに、何か入れて欲しいかい?」
    「―――博士が下さるのなら、どこでも」
    一瞬間を置いてそんな返事がされた。そう言う意味ではないんだけど、と言葉を濁して、まあいいかと追及を控えた。
    そもそも最初の箱は自分が渡している。赤のラインが入ったシンプルな物を、何か好きな物でも入れられる用にと。
    まさか容器ばかり集め始めるとは思わなかったが、収集癖はヘド自身も強い方だ。空き箱を集めるのが楽しいのかもしれないし、理解は難しいが蓋を開けることに何かしら魅力を感じているのかもしれない。創造物の自主性を育みたい作り手としては、変に邪魔するのも気が引けた。
    「時間ができたし夕食の後にメンテをしようか。クリリンさんが言ったように、確かに最近活動量がかなり多い」
    「お願いします。クリスマスが近いせいか、どうも犯罪が増えているようで」
    「無理のし過ぎは禁物だよ」
    街で人気のヒーローが、少しくすぐったそうな顔をする。夕食のシチューを温めにキッチンへと向かう彼を、ヘドは穏やかな心持ちで見送った。欠けてしまった感覚は消えないが、確かにかつて欲しかった安らぎがここにはある。
    ただ唯一、部屋の隅に置かれた机の上、積み上がった空き箱だけが妙に異質で、悩める科学者は首筋に微かな寒気を覚えた。



    「ではあの棚の箱をください」
    「……ぶれないね」
    クリスマス当日。前日にそんな会話をしたため、1号が貰った初のクリスマスプレゼントはマーケットで見つけた小箱となった。ヘドが最初に贈った小物入れによく似た、青いラインの入ったそれだ。創造物がしたその選択に、創造主は何も言わなかった。
    朝起きてすぐ、マトリョーシカのようにラッピングから出てきた直方体を、まるで宝箱にするかのように1号は厳かに開く。中には何も入れていないので、当然空だ。ラインと同色で塗られた底をじっと見て、1号は静かに机に置いた。
    続いて最早見慣れた光景である、空き箱の検分を開始した。後ろでヘドが見守る中、あれから更に個数を増やした箱の山を、ひとつひとつ手に取っては開いて、置いて、開いて、重ねて。そうして全ての中身を確認し終えてから、1号は真っ直ぐにヘドへと向き直った。
    「では予定通り、本日は警察のパトロールに協力します」
    「うん。気を付けてね」
    クリスマスだが祭日でも何でもないため、二人とも普段通りの生活だ。浮き立った雰囲気による事件も多いし、ヘドも培養シャーレの世話がある。
    「ねえ、1号」
    先に出かけようとしていた1号をヘドが引き留めた。贈ったばかりの青ラインの小箱を持って、不思議そうなヒーローへと差し出す。
    「役目の後でいいからさ、これに何か気に入った物を入れておいで」
    突然の指令に、明らかに1号は戸惑ったようだった。
    「ボクへ贈り物はいらないって言ったけど、1号が選んだ物を見せるのを、お前からのプレゼントにしてほしい」
    どうかな、と優しく問いかけると、従順な人造人間は暫くうろうろと視線を彷徨わせていたが、やがて了承と共に箱を取った。



    ピッコロがガンマ1号を見つけたのは偶然で、森の一部の開けた場所に鮮やかな赤色が見えたからだ。雪で白く染まった大地に、はためくマントはひどく目立つ。
    普段は街で色々と活動している癖に、珍しい場所にいるものだ。などと思いながら空から呼びかけつつ舞い降りると、かの人造人間は大層驚いた様子で目を見開いた。
    「どうしたんだ、こんな所で」
    「ピッコロ……いや、その……」
    この男にしては妙に歯切れ悪く、そわそわと言葉を探している。何故かまるで迷子の子供のように見えてしまい、ピッコロは彼に歩み寄った。
    「何か落としたのか?」
    ヒーローを模された人工物の青年は、手に小さな空き箱を持っていた。落し物ではなかったが、探し物はしていると言う。よくよく聞けば彼の大事な博士から中に何かを入れて来いと指示されたらしい。
    ああ、とかつて神であった異星人は合点が行った。そして同時に耳にしていた、目の前の男の奇妙な行動についても思い出した。
    「お前、箱を集めているらしいが、空いた容器が好きなのか?」
    「別に……空の箱は好きじゃない」
    意外な答えだ。途方に暮れているようだったから、てっきり中空状態を維持したいのかと思ったのだが。ではどうして空き箱ばかりを開くのだと更に問うと、少し視線を臥せて、ガンマ1号は口を開いた。

    「2号が入っているかもと思って」

    は? と間抜けな声が吐いて出た。だから、と顔を上げた赤いマントの人造人間は少し早口になって訴える。
    曰く、シュレーティンガーの猫。蓋を開けるまで、つまり観測がされるまで箱の中身は確定しない。ならば空の箱に次の瞬間、2号の欠片が出現している可能性もゼロではないのではなかろうかと。
    そんなことを、彼は語った。
    大真面目に持論を述べたきった顔にある、真っ黒なカメラアイは見慣れたそれ。しかしその色合いあまりの深さに、ピッコロは思わず一歩後ずさる。
    どこかで雪が枝から落ちた。小さくつばを飲み込んで、知恵者はどう返そうか言葉に悩む。
    脳裏を青いマントのもう一人の姿が過った。くるくる変わる表情が印象的なあの青年と、目の前の存在はほぼ同じ造詣の筈だ。しかしどうしてこいつの眼は、こうもドロリと粘性の高い、底の無い色に見えるのか。
    理論立っている振りをして、おおよそ正常ではない。これはどうにも
    「病的だとは、思う」
    唐突に勢いを失って、1号は再び視線を伏せた。小さな箱の青いラインを指でなぞるようにして弄ぶ。
    「でも宇宙人だって本当に居たんだ。こんな馬鹿げた考えだって、もしかしたら実現するかもしれない。奇跡と呼ばれるような確率を願ってみたって。だって良いだろう」
    口調が崩れる。俯いたまま再生される人工音声が、堰をきったように夢物語を吐いて止まらない。
    「今日なら叶うかもしれないなんて、思っても」
    ああ、とピッコロは知らず知らず入っていた体の力を抜いた。
    こいつは、あれか。
    サンタクロースを信じているのか。
    「……組み立てるつもりだったと?」
    「パーツさえ揃えば、それくらいはできる」
    その発想はなんとも突飛と言うか、人造人間らしいと言うか。
    いや、とそこで思い直す。こいつなりに真剣に、どれだけ年月を要しても組み直す気でいたのだろう。
    「でもダメだな。“良い奴”にはなれなかった」
    クリリンが心配するくらいに熱心に、この青年は連日『良い行い』を続けていた。馬鹿げていると自覚する妄想に縋るほど、それほどに彼は思い詰めた。
    『良い奴』とも『悪い奴』とも、その両方でないと評したのは紛れも無いピッコロ自身だ。まさかこんな形で縛るとは想像してもみなかった。
    「1号。そんなに2号に会いたいか?」
    「会いたい。博士に……」
    ギリ、と歯を食いしばる音がする。
    「博士に2号を返したい」
    「―――!」
    「オレがっ……」
    その先は1号からは聞こえなかった。黙り込んでしまった子供を前に、ピッコロはじっと考える。
    彼は悔いているのだろうか、戦いを始めてしまったことを。例えば一時撤退して体制を整えるなりしていれば、なんて思っていたりするのだろうか。それは“たられば”であり、状況的にあの場では選択できなかった道だ。
    けれどそれを告げたとて、彼はきっと納得しない。
    「1号」
    そしてかつて神であった自分は、奇跡を願うことを許している。
    「箱に入れる物を、探していると言ったな」
    「……?」
    ようやく1号が顔を上げた。人形のような整った造詣。涙は出ないんだな、なんて思考の隅で呟いて、元大魔王はニヤリと嗤う。
    「お前にイイモノをくれてやろう」
    図体がでかいばかりの、良い子になりたがりのガキに、クリスマスのプレゼントを。
    手のひらに乗せて差し出したのは、真ん丸な灰色の石ころだった。1号の頭上にホログラムで『?』が浮かぶ。その様が何ともまぬけで、悪戯が成功した気分でピッコロは口の端を釣り上げた。
    「ドラゴンボールだ」
    「なっ 1年経つまで感知できないと……」
    「だから多分と言う注釈が付くがな、まあ状況から見て本物だろう。今朝見つけた」
    自然発生するには不自然な真球で、妙に頑丈で……など鑑別した点はいくつか。答えが出るのは数か月後だが、渡すつもりでいたので丁度いい。
    まだ演算処理が追いついていない1号を待たず、持ったままの箱に希望の欠片を入れてやる。
    「わ……っ」
    「ほう、洒落てるじゃないか」
    中身を得た小箱から突如、軽快な音楽が流れ出た
    重さを感知して鳴る仕組みであったらしい。電子音のオルゴール曲が、冬の森に優しく溶ける。
    リン、リン、ロン。リン、ロン、ロン。
    じっとメロディに聞き入って、1号は青い模様をゆっくりと撫でた。そう長くない曲は最初に戻り、箱は明るい旋律で歌を続ける。二巡目が終わるまで待って、ガンマの片割れは静かに蓋を閉じた。
    「泣き止んだな」
    「私に涙腺の搭載は無いが」
    相変わらず妙な所で噛み合わなさを発揮する。怪訝そうな面がおかしくて、ピッコロは堪え切れずに吹き出した。笑われた理由がわからない生真面目な人造人間は、数拍戸惑った様子でいたが、やがてマントを払って胸を張る。
    「礼を言う」
    やっといつものヒーローが戻った。



    中身のある箱を手にして以来、1号は奇妙な儀式をぱたりとやめた。
    そしてヒーロー活動は続けながらも、以前よりはペースを落として、代わりに未だ石であるドラゴンボールを探す時間に充てるようになった。
    あの日観測された光の軌跡のデータをもとに、優秀なAIはなかなかの精度でそれらしい球体を探し出していた。冬が終わる頃に推測の三つ目を持ち帰り、この調子なら期日までに七個揃えかねない勢いだ。
    「ほら、勝手に作るでしょ? 子供部屋」
    「トランクス君は参考にならないと聞きましたがね」
    からかうブルマに応じるヘドは、以前より肩の力が抜けている。山積みだった箱はどれも容器としての役目を果たし、貝殻や民族工芸の織物、未加工の宝石、珍しい種などなど、世界各地で1号が興味を惹かれたアイテムの数々を収めていた。それらはいつしか机を飛び出して、隣の部屋を浸食している。
    案の定と言うか天才科学者の創作物らしく、その収集癖は主人に似た。意外なことに積み方がちょっと乱雑なので、ヘドは密かに面白い。
    「願いが余ったら、ですか?」
    ある夜、帰宅した1号はおもむろにそんな質問を受けた。ドラゴンボールで叶えられる願いは三個。前例のない機械ベースの人造人間の復活のため、枠としては三つ分全てを貰っている。しかし超天才がただ指をくわえている訳も無く、出来る範囲で2号復活の確率を上げるべく備えていた。
    「2号のボディ再建、目途が立ちましたか」
    「そういうこと。余っても恐らくブルマ社長に渡すんだけどさ、もし願えるならどうしたいかって話。ボクにあげるは無しね」
    びしりと指先を向けて先手が打たれた。そうですね、と苦笑してから、赤いマントのヒーローは室内に視線を巡らせる。空振りだった捜索の度に増える細々とした蒐集品が、箱から少し溢れそうだ。
    「箱を出してもらいます」
    「欲が無いなぁ。あとお前やっぱり容器好きだな?」
    「そう言う訳ではないのですが……」
    2号なら何を欲しがるかな。なんて機嫌よく続けて、ヘドは計画書を見せようと部屋の奥へと入って行く。後を追いかけた歩みを、しかし1号は机の前で止めた。
    「大事なモノは、仕舞うべきだと学習したんだ」
    クリスマスに贈られた例の小箱の、青いラインをそっと撫でる。
    「絶対に壊れない、他の誰にも開けられない。そんな箱があったなら、とても素敵だと思わないか?」
    歌う箱の中には希望が詰まる。1号はもう空虚を覗くような真似をしない。
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