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    尻叩き

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    アンの記念日おめでとう~!!!!!
    あんま関係ない日常現パロでごめん!

    お魚のビスケット教会を出たころには、もう月があんなにも高いところに昇っていて私は思わずため息を吐いた。
    沢山の懺悔を聞くのは、あまり精神的にも良くないことは理解しているつもりだ。でも、それが自らの務めなのだからと奮い立たせてきたが人間だれしも限界が訪れる。今がその時だった。
    教会を訪れた子羊たちを余すことなく導くことは我々にしかできないことだと神父様はおっしゃった。けれど、両手にあふれるほどいる信者一人一人に平等に教えを説くことが不可能である事は、神父以外の人間はだれしも思っていた。
    それでも、誰一人として声を上げないのは、彼が怖いからではなく救いたい気持ちがあるからだ。そうして自分がボロボロになって十字架を握りしめて泣きじゃくる羽目になるのだが。
    愚痴ばかりも言っていられない。人より少し長い首をぐるりと回し、深く深呼吸電車に乗って車窓を眺める。都心駅から二駅も過ぎれば、家々の明かりもまばらな田舎町に様変わりした。
    都会は少し息苦しいと感じている私にとっては、この景色が見えてくるとようやくしがらみから解放されたように思えて肩の荷が下りるのだ。明かりが一つ、また一つと無くなっていき、しばしの闇があってから、強い光の束が見えてくる。そこが最寄り駅の目印だった。
    駅からはほど近いアパートを借りているので、なんだかもう家に着いた気分だった。

    「ただいま~」
    帰ってくるやいなや、愛猫が足にすり寄ってくる。その瞬間、外で起きた辛かった出来事なんて一瞬で消えてしまうから不思議だ。
    一匹はとびかかって来て、遅い! と怒られているような気持ちになり頭を撫でながら怒りを鎮める。
    「ごめんね」
    夕飯は、休日に作り置きしたものを少しずつよそってそれを食べる。
    本当は外食で済ませたいのだけれど帰るころに店はもう閉まっているし、コンビニは近くに無い。残された選択肢は自炊しかなかったというわけだ。
    でも、今日は少しだけいつもと違う食べ物があった。
    小袋にみっちりと詰められた小さなビスケットは、可愛らしい魚の形をしている。魚の気分でどうしても魚が食べたいが、前述したように滅多に魚を食べられない私にとってこれはれっきとした魚だったのだ。
    当たり前のように魚の味はしないし、豆乳が主成分で動物性の成分はほぼ見当たらない。でも、我が家でそれをとがめる人間は誰もいない。
    故に、これは魚なのだ。
    猫は私の膝に乗ってビスケットをじっと見つめてくる。この子もきっと手に持っているこれを魚だと認識しているのだろう。
    でも残念。この魚は私だけのもの。
    「あなたたちは私よりいい物食べてるでしょ」
    そういって見せつけるようにビスケットを口に放り込む。飲み込まれていく最後の一秒まで、猫たちの視線は魚を追いかけていた。一連の流れが本当に可愛くて思わず吹き出してしまう。
    「本当に可愛い私の猫たち」
    この子たちが居るから、明日も頑張ろうと思えるのだ。すっかりビスケットに興味を無くした猫たちを両手で抱きしめて席を立つ。
    明日も早いから寝る準備をしなければ。お気に入りのバスタオルを持って風呂場に向かうと猫たちもついてくる。
    「シャワーする気分になってくれた?」
    と風呂場の扉を開けると危機感を覚えたのか、今までチャカチャカと嬉しそうな足取りをしていた二匹がサッと散っていく。その姿も愛おしくてまた声を上げて笑う。
    ひとしきり笑ったあと、少しだけ涙が出た。顔を覆って大きく深呼吸をする。
    「もう、大丈夫だから」
    そう呟いて、何事もなかったかのように浴室に向かった。

    終わり。


    ***

    ちなみにタイトルと作中で出てきたおさかなのビスケットは無印で買えます。ワイが大好きなやつだからよかったらみんな食べてみてね
    https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/detail/%E8%B1%86%E4%B9%B3%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88/4550182146493
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    DOODLE
    🧲フールズゴールド食卓には、色とりどりの食事ではなく、宝石が積み重なっている。それらを一つずつ手に取って、これらの俺のものだと笑った。こんな簡単に手に入ってしまうなら、今までの人生がバカバカしく思うがそれでも良い。
    なぜかって?
    これだけの財があれば、今までの人生がどれだけクソだったとしても、それを取り返せるだけの金があるからだ。
    これはルビー、サファイア、そしてかつて採掘していた金塊に金貨まである。
    「これで俺も勝ちまくり、モテまくりってか」
    同僚と雑誌の回し読みをした時、裏表紙の広告にあった文句を呟いてみる。女の肩を抱いて札束風呂に入っている男の姿を思い出し、俺もようやくこちら側に来たのだなと実感した。
    荘園に来た時は周りの人間たちと自分の境遇があまりにも違いすぎて、一周回って自分より位が上の人間の事が嫌いになりかけた。けれど、俺もいずれ彼らと同じ地点に到達するのだと思ったらむしろ彼らから学ぶべきだと思ってからは、一つひとつの行動を観察するようになった。技術は見て盗めと教わってきたので、テーブルマナーも立ち振る舞いも全て周りの人間を見て勉強した。今までの行動は全てこのためだったのだろう。
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