楓可不『飴玉食べた、君が笑う』「楓ちゃんはさ、僕が死んでも僕のことを覚えていてくれる?」
可不可がそんなことを言い出したのは、両親の仕事について行った楓が、長期の海外旅行から帰国し、数ヶ月ぶりに可不可の病室を訪れた日だった。各地のお土産を渡しながらそこでの思い出が止まらない楓の話を可不可は相槌を打ち、時に質問も交えながら聞いてくれていた。
「食べて大丈夫か聞いてみなきゃ」
最後に立ち寄った国で見つけた瓶詰めの飴を渡すと、コロリと鳴らしながらそう言った。角度によって色が変わって見えるそれが可不可の瞳のようで、迷わず購入したものだった。
「それなら、さっき可不可の先生に会ったから聞いてみたよ。食べ過ぎなければ大丈夫だって」
「本当? 今食べてもいい?」
3109