赤と緑、合わせて茶色。苦く甘い恋の色。緑色が好き。
新葉の柔らかい緑色も好きだし、緑が深まった夏の山の緑も好き。
キャベツやレタスの爽やかな緑色も好きだし、スイカやライムの目の覚める緑色も好き。
私は緑色が好き。
学校の黒板、綺麗に掃除された深い深い緑色の時も好きだし、チョークで汚れて白く濁った緑色も好き。
でも一番好きなのは、歴史の時間。黄色の髪の毛先、あの真っ赤な赤が黒板にかかるとき…より一層緑色が映えるのだ。
その瞬間を目で追うのが好き。
真っ赤なネクタイを好む先生。あのネクタイが黒板に重なる時、緑色が締まって見えて好き。
先生の織り成す赤が、緑色を美しくさせる瞬間が好き。
だから私は緑色が好き。
そんなある日、先生の指に鈍く光る銀色の指輪があった。
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